紙とスマホを融合するデジタルペン「Livescribe 3」の魅力アナログとデジタルのマリアージュ(3/3 ページ)

» 2014年04月17日 12時17分 公開
[林信行,ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

デジタルとアナログの接点、「Feed」モードが面白い

「Feed」はノートの書き込んだ行だけが抜粋表示されるモードだ。好きな行を選んで(複数でもOK)PDF書き出しをしたり、削除してデジタル記録をなくしたりといったことができる

 「Feed」モードは、紹介が後回しになったことからも想像がつくように、非常に奥が深いモードになっている。この「Feed」は、(見た目上は)ノートに手書きした内容を行単位で抜き出して表示するモードだ。

 例えば、何も書き込まなかった空行は、Feedでは自動的に無視され、書き込んだ内容だけが詰まった状態で表示される。この状態で任意の1行を選んで右向きにスワイプをすると、その行を文字認識した結果が活字で表示される。

 後で検索することになりそうな単語が、正しく認識されていなかった場合は、その行をタップして文字認識後の単語を修正することもできる(それによって手書きのクセを学習することはない)。

 一方、紙のノートには書き忘れたが、後から参照したいメモなどがあれば、テキスト情報として追加することも可能だ。また、ホワイトボードの文字やインタビューをした相手の顔など、ノートに写真を追加したければ、それも追加できる。ただし、こうして追加したテキストや写真は、「Feed」モードの時だけ表示される。そのほかの2つのモードの画面は、あくまでも紙に書いた内容そのままだ。

 追加だけではない。Feedモードでは、特定の行を選択して削除することもできる。これはちょっとおもしろい。さすがに紙のノートから自動的に消えることはないが、アプリ上の「ページ」や「ペンキャスト」の画面からは、そんな書き込みの記録がなかったかのように消え去る。後は紙のノートさえ燃やしてしまえば、そんなノートを取ったという記録は抹消できるのだ。これ以外に行を複数同時選択して、途中の秘密事項だけ飛ばして必要部分だけを抜粋してPDFファイルとして送ったり、TwitterやFacebookに手書き文字のまま投稿したり、リマインダーを作成する、といったことにも使える。

 「会議などをしていると、議事録に加えてノートの余った行に『本件に関してスミスさんに電話』といった、自分宛の覚え書きをしている人も多いはずだ。そうやって書き込んだ内容を、リマインダーアプリを起動してタイプし直すのはバカバカしい。だから、文字認識した内容をそのままリマインダーに登録する機能をつけたんだ」とブシャール氏は話す。

任意の行を選んで右方向にスワイプすると、文字認識した結果が表示される。後で検索しそうな単語をご認識している場合は長押し>編集でタイプして直しておこう。Feedモードを使って任意の行を削除すると、その行は「ページ」や「ペンキャスト」の表示からも消える

「Feed」モードではノート中に、紙のノートにはない写真やテキストといった情報を追加できる。テキスト情報は検索できるが、Feedモード以外では見ることができない(画面=左)。Feedモード任意の行を選び、画面下の「^」のマークをタッチし「送信」を選ぶ。この状態でTwitterを選べばツイッターに手書きツイートを送信できる(Facebookに送信も可能)。なお、行を右スワイプで認識した文字表示に切り替えてから同じ操作をするとテキストとしてツイートできる(画面=右)

 かつてのLivescribeスマートペンを知る人の中には、紙のノートに手書きした鍵盤でピアノを演奏したり、外国語の単語を英語に翻訳して読み上げたりといった派手なアプリ機能が好きだったという人も多いかもしれない。

 しかし、その機能のインパクトがあまりにも大きすぎたため、筆者が所有している昔のLivescribeのノートは、どのページを開いてもピアノの絵だらけになってしまっている(人に「ピアノを見せて」とねだられるため)。

 Livescribe 3は、そうした遊びの要素は減ったかもしれない。しかし、テクノロジー業界以外の人たちの前で使っても、決して違和感のないエレガントな本体デザインと、シンプルながらも、だからこそ機能の全体像を把握してフルに活用できる大人の魅力を備えたスマートペンに生まれ変わっている。

 ちなみにブシャール氏によれば、Livescribe 3は、過去2世代の製品を置き換えるモデルではない。日本では学研などが販売している初代ペン、「Echo」は引き続き販売が行なわれている。また、日本ではソースネクストらが扱っているEvernote連携に焦点を絞った自立型スマートペン、Livescribe Wi-Fiスマートペンも今後とも販売を継続する。これら旧世代製品のソフトは今後ともアップデートを継続するようだ(なお、初代製品のPulseペンについては、筆者のブログを参照してほしい)。

 そして、それらの製品と並行して、より大勢の人にアピールできるように新規開発されたLivescribe 3が新たにラインアップに加わり、ソフトバンクセレクションや楽天市場などから発売されることになった。


 初対面の人との打ち合わせで、いきなり机の上にノートPCを出してカチャカチャとキーボード叩き始めるのは、IT業界では許されても、その他の業界では、なんだか上品な感じがしないし、所作としても美しくない。平置きしたタブレットなら「異様さ」がかなり緩和されるが、それでもまだ少し違和感は残る。

 だが、スマートペンで違和感を覚える人は、そうそういないはずだ。なぜなら21世紀の今日でも、地球上の3分の2の人は手書きでメモを取っているのだから。

 自然に手書きした内容が一切むだにならずデジタルで保存されるLivescribe 3。まさにこれは、アナログとデジタルの魅力を融合する、最高のマリアージュだといえよう。

 さて、初代Livescribe Pulseペンから使い続けている筆者がLivescribe 3を使ってみて感じたことを簡単に記しておく。

 まず、PulseやEchoの初代製品は、基本機能に加えてピアノアプリなどをインストールして楽しめるのが魅力だったが、ノートPCを利用するために専用のクレードルを通して1度、PCに接続する必要があった。常時ノートPCを利用している人には今でも十分魅力的な製品だが、スマートフォンの時代になり、あまりPCを持ち歩かなくなった人には魅力が薄れてしまったかもしれない。

 2代目製品のWi-Fiペンは、PCを携帯しなくてもオープンなWi-Fiさえあれば自動的にノートをEvernoteにアップロードし始め、PCもスマートフォンも一切不要で、独立して活用できるのが魅力だった。しかし、音声録音付きのノートなどは転送に時間がかかり、それをスマートフォンで参照するには、さらにスマートフォンのEvernoteがクラウドと同期し終わるのを待たねばならず、もどかしい面もあった。

 これに対して最新のLivescribe 3は、常にスマートフォンやタブレットを持ち歩いている人であれば、アプリを起動するだけで書いたそばからすぐに次々と書き留めたノートが転送されていく。しかも、容量がかさばる音声は、ペンの側ではなくスマートフォン/タブレット側で録音するようになったため、インターネット経由での転送の待ち時間がなくなり、より鮮明な音質で録音できるようになった。さらに、新たに加わったfeedモードで、同じノートの中にキー入力したテキスト情報や写真も盛り込めるようになっている。おまけにペンの外観が、よりスッキリとエレガントなものになったので、あまり変な形で人目を引かない、というのも魅力の1つだろう。

 インタビューの中でジル・ブシャールCEOが言っている通り、歴代のLivescribeシリーズの中でも、Livescribe 3はスマートフォン世代のユーザーに最適な製品だ。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー