「Inspiron 17 5000」――“外部GPU+アドビソフト”のお手ごろ大画面クリエイティブノートを試す最新PC速攻レビュー(2/2 ページ)

» 2014年05月20日 18時30分 公開
[鈴木雅暢,ITmedia]
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注目ポイント:グラフィックス性能重視の基本スペック

 デルのGraphics Proシリーズは、動画や写真の編集などを行なうクリエイティブ用途に適したスペックのPCを法人だけでなく個人ユーザーにも提供するというコンセプトの製品群だ。グラフィックス優先のスペック構成、アドビのクリエイティブソフト、そして求めやすい価格が特徴となる。

 Inspiron 17 5000もそのコンセプトは踏襲しており、外部GPUにNVIDIA GeForce 840M(専用メモリ2Gバイト)を搭載している。3Dゲームもできる高い3D描画性能を備えるほか、アドビ製クリエイティブツールのアクセラレーション(パン、ズーム、回転、特殊効果のプレビューなど)にも対応し、画像の加工がスムーズに行なえる。

 CPUはHaswell Refreshになってわずかにクロックが上がった第4世代CoreのCore i7-4510U(2コア/4スレッド対応、2.0GHz/最大3.1GHz)を採用。末尾の「U」が示すようにUltrabookでおなじみの超低電圧版で、TDP(熱設計電力)は15ワットに抑えられている。同じCore i7でも4コアの通常電圧版に比べて性能面では劣るが、そのぶん発熱、消費電力とも低く、ボディ設計の自由度が高い。静音性も有利というメリットがある。

 これほど大柄なボディの製品で第4世代Core Uシリーズを採用する例は少ないが、最近では大画面ノート+省電力なモバイルCPUという組み合わせも徐々に増えつつある。コストパフォーマンスや上記のメリットを考慮したうえでの選択なのだろう。

NVIDIA GeForce 840MとIntel HD Graphics 4400は、実行するアプリケーションによって自動で切り替わる仕組みだ。NVIDIAコントロールパネルから、どちらを使うかカスタマイズすることもできる

 Core i7-4510UはグラフィックスコアのIntel HD Graphics 4400を内蔵しており、外部GPUのGeForce 840Mとアプリケーションごとに自動で使い分けられる。3DゲームやクリエイティブアプリケーションではGeForce 840Mを使って高速な処理が行なえる一方、Webブラウザや動画再生ソフトではIntel HD Graphics 4400を使うことで電力消費を抑えるというわけだ。インテルCPU内蔵グラフィックスに備わったハードウェアエンコーダー(QSV=Intel Quick Sync Video)対応ソフトもまたこちらが使われる。

 この使い分けの判断は、手動でカスタマイズすることも可能だ。グローバルなアプリケーションでは手動で変更する必要はまずないが、国内ローカル展開のカジュアルゲームなどではNVIDIAのGPUが使われないこともあるので、パフォーマンスを上げたい場合は手動で変更するとよいだろう。

CPU-Zの情報表示。CPUには超低電圧版のCore i7-4510Uを採用している(画像=左)。同じCore i7でも通常電圧版に比べると性能面では見劣るが、そのぶん発熱、消費電力とも低く、ボディ設計の自由度が高い。静音性にも有利というメリットがある。TDP(熱設計電力)は15ワットだ。メモリは8Gバイト×1(PC3L-12800)のシングルチャンネル構成となる(画像=右)
GPU-Zの情報表示。外部GPUとしてNVIDIAのGeForce 840M(専用メモリ2Gバイト)を搭載している(画像=左)。開発コード名「Maxwell」と呼ばれる最新世代のGPUだ。スペック的には、メモリバス幅などが狭く、ミドルレンジの下位クラスのパフォーマンスと推測される。CPU内蔵グラフィックスのIntel HD Graphics 4400も利用する(画像=右)。NVIDIAによれば、GeForce 840MはIntel HD Graphics 4400比で5倍のパフォーマンスを持つという

実力テスト:HDD搭載機としてはCPU処理性能、3D描画性能とも上々

 それではベンチマークテストの結果を見ていこう。評価機のスペックをおさらいすると、Core i7-4510U(2コア/4スレッド対応、2.0GHz/最大3.1GHz)、GeForce 840M、Intel HD Graphics 4400、8Gバイトメモリ(PC3L-12800/シングルチャンネル)、1TバイトHDD(5400rpm)、64ビット版Windows 8.1という内容だ。

 テスト結果のグラフには、参考までに同社の14型ノートPC「Inspiron 14 7000」(Core i5-4200U、Intel HD Graphics 4400、4Gバイトメモリ、500GバイトHDD、64ビット版Windows 8)のスコアも併記した。

 CPUは超低電圧版の最新モデルであるCore i7-4510Uだが、その性能を計測するCINEBENCHでは従来のCore i7-4500UやCore i5-4200U搭載機よりも順当によいスコアが出ており、CPUのポテンシャルが最大限に発揮できているようだ。

 一方で、ディスク性能を測定するCrystalDiskMarkの結果は2.5インチHDDとしてごく一般的なスコアだ。当然ながらSSDには遠く及ばず、ストレージ性能の影響が大きいPCMark 7のスコアも振るわない。購入時にはSSDやハイブリッドHDDの構成を選べないため、この点は割り切りが必要になる。

 GeForce 840Mの3D描画性能が注目されるが、3DMarkのスコアは標準的なIntel HD Graphics 4400搭載ノートPCに比べて、Cloud Gateで1.3〜1.4倍、FireStrikeで2.2〜2.3倍といったところ。FINAL FANTASY XIV:新生エオルゼアベンチマーク キャラクター編でも2倍前後だった。外部GPUのメリットは確かだが、今回のテストではNVIDIAが「Intel HD Graphics 4400比で5倍のパフォーマンス」とアピールするほどの差は得られなかった。

左から、CINEBENCH R15、CINEBENCH R11.5、CrystalDiskMark 3.0.3のスコア
左から、PCMark 7 1.4.0、3DMark 1.2.362、FINAL FANTASY XIV:新生エオルゼアベンチマーク キャラクター編のスコア

 BBench 1.01で計測したバッテリー駆動時間は5時間25分だった(満充電から残り5%で休止状態に入るまで)。据え置き型前提のモデルだが、万一の停電が発生した場合などを考えると心強い結果だ。

 静音性にも優れている。低負荷時は意識すればわずかにファンの回転音が聞こえるかというレベルで、高負荷時の静かさは最近レビューしたノートPCの中ではNo.1といえるほどだ。大柄なボディに超低電圧版CPUを搭載した熱設計の余裕が現れている。動作中の発熱については排気口が左側面にあるため、底面の左端付近を中心に、ボディ左側の温度がやや高い傾向にあるが、不快に感じるレベルではない。

左から、動作音テスト、発熱テストの結果

ベンチマークテストの概要

  • パフォーマンステスト
    • Windowsエクスペリエンスインデックス(PC総合評価)
    • CINEBENCH R15(CPU性能評価)
    • CINEBENCH R11.5(CPU性能評価)
    • Crystal Disk Mark 3.0.2(ストレージ性能評価)
    • PCMark 7 1.4.0(PC総合評価)
    • 3DMark 1.2.362(3D性能評価)
    • FINAL FANTASY XIV:新生エオルゼアベンチマーク キャラクター編(3D性能評価)

※Windows 8.1の電源プランは「バランス」に設定

  • バッテリー駆動時間テスト
    • BBench 1.01

※電源プラン「バランス」+輝度40%固定+無線LAN接続+Bluetoothオン。BBench 1.01(海人氏・作)にて「60秒間隔でのWeb巡回(10サイト)」と「10秒間隔でのキーストローク」、WebブラウザはInternet Explorer 11を指定し、タブブラウズはオフ。満充電の状態からバッテリー残量が残量5%で自動的に休止状態へ移行するまでの時間を計測

  • 騒音テスト
    • 騒音計で実測(本体から手前5センチ、暗騒音32デシベル、室温28度)
  • 発熱テスト
    • 放射温度計でボディ表面温度を実測(室温28度)

まとめ:高コストパフォーマンスの個人向けクリエイティブマシン

 デルの直販価格はWindows 8.1モデルで10万9980円、Windows 7 Professionalモデルで11万4980円からだ(いずれも税込)。Windows 7が選択できる点に魅力を感じる向きもあるだろう。

 17.3型ワイドの大画面液晶ディスプレイとGeForce 840Mを中心としたグラフィックス優先の基本スペック、光学ドライブも内蔵するフルスペックのノートPCであり、さらにPhotoshop Elements 12とPremiere Elements 12も付属してこの価格なのだから、個人の写真/動画編集マシンとして買い得感は高い。

 昨今のノートPCトレンドと見比べると、液晶ディスプレイの解像度や視野角、HDDしか選べないストレージ構成など、物足りなさも感じるところだが、「個人でも求めやすいクリエイティブユースのPC」をテーマにした製品だけに、外部GPUの搭載を優先したスペック構成は理解できる。価格を考えると文句はない仕様だ。

 趣味でクリエイティブツールを使う機会が多い方、予算に限りがあるクリエイター予備軍の学生の方などは、検討する価値が大いにあるだろう。


デル株式会社 デル株式会社

スペック詳細:Inspiron 17 5000

Inspiron 17 5000のデバイスマネージャ画面。1TバイトHDDはSeagate「ST1000LM024 HN-M101MBB」、DVDスーパーマルチドライブはHL-DT-ST「DVD+RW GU90N」を搭載していた
Inspiron 17 5000の主な仕様
製品名 Inspiron 17 5000
メーカー デル
OS 64ビット版Windows 8.1
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) 約414.3×285.7×28.4ミリ
重量(実測値) 約3キロ(2.904キロ)
画面サイズ(液晶方式) 17.3型ワイド
アスペクト比 16:9
タッチパネル
デジタイザ
ディスプレイ解像度 1600×900ピクセル(約106ppi)
CPU(コア数/スレッド数) Core i7-4510U(2/4)
動作周波数 2.0GHz/最大3.1GHz
チップセット CPU内蔵
vPro
GPU NVIDIA GeForce 840M(2GバイトDDR3L)、CPU統合(Intel HD Graphics 4400)
メモリ 8Gバイト(DDR3L/1600MHz)
メモリスロット(空きスロット数) 1(0)、シングルチャンネル
ストレージ(評価機実装) 1TバイトHDD(Seagate 「ST1000LM024 HN-M101MBB」)
ストレージフォームファクタ 2.5インチ/9.5ミリ厚
ストレージ接続インタフェース Serial ATA 6Gbps
光学ドライブ DVDスーパーマルチドライブ(HL-DT-ST「DVD+RW GU90N」)
無線LAN IEEE802.11b/g/n(Dell Wireless 1705)
Bluetooth Bluetooth 4.0+HS
NFC
センサー
有線LAN 1000BASE-T準拠(Realtek)
ワイヤレスWAN
キーボード 日本語JIS 105キー
キートップ仕様・形状 アイソレーション
キーピッチ 約19(横)×18(縦)ミリ ※実測値
キーストローク 非公開
キーボードバックライト
ポインティングデバイス クリックパッド
主なインタフェース USB 3.0×1、USB 2.0×3(1基は電源オフチャージ対応)、HDMI 1.4a出力、ヘッドフォン/マイクコンボ(3.5ミリ)、DC入力(丸形)、Webカメラ(イン約92万画素)
メモリカードスロット SDメモリーカード(SDXC対応)
SIMカードスロット
その他カードスロット
スピーカー(音質補正ソフトウェア) ステレオ(Waves Maxx Audio Pro)
マイク 搭載
指紋センサー
セキュリティデバイス
セキュリティロックポート 搭載
バッテリー動作時間 非公開
バッテリー仕様 40ワットアワー
ACアダプタ実測サイズ(幅×奥行き×高さ) ※プラグ含まず 46×105×29ミリ
ACアダプタ実測重量(本体のみ/ケーブル込み) 245グラム/349グラム
ACアダプタ出力仕様 19.5ボルト/3.34アンペア
ACアダプタ対応電圧 100〜240ボルト(50/60Hz)
DC端子形状 丸形
プラグケーブル端子形状(ACアダプタ側) 3ピン
防水/防滴
カラーバリエーション ブラック&シルバー
オフィススイート BTOで対応
価格(税込) オープン価格
発売日 2014年5月13日
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