「Surface Pro 3」の完成度と、Surface Mini?へ高まる期待本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/3 ページ)

» 2014年06月27日 16時30分 公開
[本田雅一,ITmedia]

“Windowsタブレットの標準”となる操作性

 過去にSurface Pro、Surface Pro 2ともに評価してきたが、それこそ“評価のために”使った以外に、ほとんどペンを使うことはなかった。

 絵は描かないし、メモを取るために……といっても、専用のペンを持ち歩く必要があるうえ、わざわざSurface Proを開いてメモを取るためのアプリを開いて……とやるぐらいなら、紙に何か書き留めたほうがいい。ちょっとしたことなら、手のひらに書いておいて、後からスマートフォンに転記してもいいかもしれない。

ブライアン・ホール氏(米Microsoftジェネラルマネージャー Surface & Windows Harware セールス&マーケティング担当)

 Surface Pro 3の紹介で来日していた米Microsoft本社ジェネラルマネージャーでSurfaceのマーケティング部門を統括するブライアン・ホール氏と話したときも、その部分が話題になった。同氏はSurface Pro 3のペンには2つの要素があるという。

 1つはアドビシステムズと協力しながら開発したクリエイティビティの向上だ。「タブレット上で指とペンの両方で適切なユーザーインタフェースのもと、PhotoshopやIllustratorといったクリエイティブでパワフルなアプリケーションを扱える。もちろん、デスクトップ画面でキーボード+マウスの使い勝手も維持されている。マイクロソフトは今後も、粘り強くペン、タッチ、デスクトップのすべてで使いやすいアプリケーションが増えるよう、新インタフェースへの対応をドライブしていく予定だ」と同氏は語る。

 もう1つは紙の代替という要素だ。「タブレットとして使う場合には、クリエイティビティの向上とは別の使い方も出てくる。せっかく軽量で大画面なんだから、それを使って“よりよい紙”としてSurfaceを活用できるようにすることだよ」と同氏は続ける。

 この“よりよい紙”のための機能はペンに収められており、ユーザーはペンに配置されたボタンを押すだけで、Surface Pro 3のOneNoteが素早く起動する。このとき、本体のロックを外すことなく直ちにメモパッドが起動して、手描きメモを書き込めるのだ。最近のスマートフォンは、本体のロックを外さなくともカメラ撮影だけは可能……なんて製品が多いが、それのメモ帳版と言えば分かりやすいだろうか。

 “タブレット”といっても、Webサービスのフロントエンドとしての性格が強いiPadとは、まったく異なる方向だが、Surface Pro 3のこうしたペン操作のやりやすさ、よりよいメモパッドとしてのタブレット活用という機能実装は、今後のWindowsタブレットの標準的な機能となっていくだろう。

 マイクロソフトストアの店員によると、こうしたペン機能を知らない人も多いようで、来店する客に教えるとみんな喜んで使うようだ。“メモはキーボードや音声派”の筆者も、実際に操作してみると「これはスタイラスを持ち歩く価値アリでは?」と思うようになった。もちろん、従来からペン入力を重視してきた人にはなおさらだろう。

専用ペンの「Surface Pen」はアルミニウム製で質感が向上(写真=左)。国内発表会では、WordなどOfficeアプリでペンを近づけると、自動的にインクモードになり、手のタッチ操作と区別されるなどのデモが行われた(写真=右)。ペンを1回ノックするとOneNoteが起動するなど、デジタルノートとしての使い勝手にも配慮している
タイプカバーのヒンジは、2段階に可動する新構造を採用。カバー奥の面をSurface Pro 3の画面下フレームに吸着させることで、不安定な場所でもぐらつきにくい。キーボードに緩やかにチルトするのも特徴だ

 一方、まだ他に追随例があまりないキーボードカバー(タイプカバー)。筆者のこれまでの一番の不満は、マイクロソフト以外が設計したキーボードカバーがないことだった。マグネットで装着できる画面カバー兼用のキーボードというアイデアはいいが、キーとキーの間隔が詰まっているうえ、キーエッジ部の形状が(指を置きやすいように)傾斜していないため、ややミスタイプしやすい。

 浅めのキーストロークの割にタッチは悪くないため、キー間に隙間を空けるか、あるいはキーを傾斜させるかだが、薄型のため傾斜をつけるのは難しいだろう。となれば、「MacBook」のような隙間を空けるタイプ(いわゆるアイソレーションキーボード)になれば……なんて思っていたが、残念ながらその点は変化がない。

 前回、Surface 2/Surface Pro 2と同時発売された新型のキーボードカバーからは、ほんの少しだけフィーリングがよくなったように感じられたものの、大きな違いはない。これはSurface Pro 3でも同じだ。しかし、2段階に固定するヒンジ機構によりキーボードが斜めになったことで、タイプのしやすさは向上している。

 注目は膝の上での使いやすさだが、こればかりは個人差がある。筆者の場合、かなり大柄なため、膝の上に載せるといっても少々窮屈。もっとも、これは他の小型モバイルPCでも同じことだ。Surface Pro 3の幅で窮屈にならずに膝の上に載せられる人ならば、特別にノートPCとの差を感じることなく、使いこなすことができると思う。キックスタンドが無段階の角度調整に対応したことも大きい。

 マグネットによる固定はなかなか強力で、片方の膝の上に載せてキーボードカバーを通じて支える形にしても、不安定さはあまり感じなかった。個人差はあるが、タブレット端末であることを考えれば、上々の使い勝手と言えるだろう。

 しかしキーボードカバー最大の改良点は、何といってもタッチパッドではないかと思う。マルチタッチ対応のタッチパッドは、これまでの応答性の悪いものとは異なり、普通のノートPC用タッチパッドとフィーリング面で大きな差は感じない。

本体と2面で接続できるようになったタイプカバーと、可動域が広がったキックスタンドによって、膝の上でも従来機より安定する

 そしてもう1つ。画面の縦横比が3:2であることも、使い勝手の面で大きなプラスになっていることを報告したい。この縦横比はメモパッドとして使う場合も、ノートPCライクに使う場合でも、従来の16:9よりずっと使いやすい。

 実は16:9という画面は、Windows 8の設計を行う際にマイクロソフトが指定したアスペクト比なのだが、Surface Pro 3を3:2で出したということは、この制限が撤廃されたのだろう(Windows 8.1でスナップ画面の比率を変えられるようになったからかもしれない)。

 前出のホール氏は「PCとして使う場合、画面サイズの縦方向の情報量はとても重要だ。Word、Excelはもちろん、ブラウザを使うときも、Photoshopを使う際にも、縦のサイズが欲しい。だから3:2を選んだ」と話す。

 これまで16:9画面に付き合わされてきた身としては、一言文句を言いたくなるところだが、部門違いでクレームを出しても仕方がない。結論から言えば、3:2の画面に変更したのは大正解と言える。

画面の縦横比は従来の16:9から3:2に変更され、縦方向に少し伸びた。縦位置にした場合、紙のノートの感覚に近いことからも、12型で3:2の液晶ディスプレイを新たに採用したという

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