今回の滞在ではSaturnでPost Telecomのプリペイドスマートフォンも購入してみた。郵便局でもいくつか製品を見かけたのだが、SIMフリーのスマートフォンに同社のプリペイドSIMをセットした専用パッケージが売られている。SIMフリースマートフォンを持っていない人には便利な製品だ。
ところが、Post Telecomのデータ通信料金体系は、前述したようにスマートフォンには適さないWAP時代の数Mバイト利用を前提としたもの。そのため、スマートフォンで使うとあっという間に残高がなくなってしまうだろう。また、購入したスマートフォンにはすでにプリペイドSIMがセットされており、APNも設定済みだったが、そのままではデータ通信ができなかった。何かの設定がいるのかもしれないが、Post Telecomのプリペイドスマートフォンは音声通話用と割り切って使うべきかもしれない。
ルクセンブルグの前に立ち寄ったフランスのパリ。ここでのプリペイドSIM購入体験は2012年3月に「フランス・パリ編」としてまとめたが、事業者によってはプリペイドSIMの購入が実質できないなど、旅行者には優しくない状況だった。しかし約2年半後に再訪したところ、各社ともスマートフォン向けプリペイドSIMは格段に買いやすくなっていたので、簡単にまとめておこう。
各社ともにプリペイドSIMを購入してから、データ通信の利用量に応じた残高追加カードを購入して追加利用できる方法に変わっていた。もちろんプリペイドSIM購入時に各社の店舗で希望するデータ通信量をその場で追加してもらうのもよいだろう。SMSでコマンドを送ったり、複数のプランから選んだりといった面倒な手続きが(しかもフランス語)不要になっていたのだ。また、前回はフランスの銀行口座が必要だったBouygues(ブイグ)も今回は不要になり、誰もがプリペイドSIMの購入が可能になった。
フランスでも各社がLTEを開始しているが、プリペイドで利用できるのはBouyguesとMVNOのJoe Mobileのみ。Joe MobileはSIMの入手がオンラインであり料金も月額制なので、LTEを使いたい人はBouyguesを選ぶことになる。OrangeやSFRもいずれLTEが利用できるようになるだろうから、こちらも渡航時には事業者の店舗やWebで最新状況を確認してほしい。
ということで、今回はBouyguesのプリペイドSIMを購入してみた。BouyguesのSIMにはプランが3種類あるが、このうち「Formule24/24」がスマートフォン向き。テザリングにも対応しているということで、こちらを購入した。料金の追加に応じて無料データ分が300Mバイト、500Mバイト、2Gバイト、3Gバイトと分かれているので、SIM購入時に希望の料金を伝え、同時に追加してもらった。なお、SIMはパスポート提示による本人登録が必要だ。APN設定は以下の通り。
パリでは、各社日数限定のデータプリペイドSIMも販売している。Bouyguesは2日間定額で9.9ユーロという、短期滞在にも便利な製品を提供している。またSFRにも同様の製品があると店舗で確認したが、数店舗回ってどの店でも品切れだった。Orangeにもタブレットに特化したプリペイドSIMがあるようだ。
数年前に比べて格段に買いやすく使いやすくなったパリのプリペイドSIM環境。各店舗でも店員は英語を話す人が増えたようで、購入もスムースだった。この夏、パリに行く人はぜひ現地でプリペイドSIMを購入してほしい。
山根康宏 :香港在住の携帯電話研究家。一企業の香港駐在員時代に海外携帯電話に興味を持ち、2003年に独立。アジアを中心とした海外の携帯電話市場の状況や海外から見た日本の携帯電話市場についてなど、海外の視点からコラムや記事を日本のメディアに執筆するほか、コンサルティング活動も行う。携帯/SIMカードコレクターとしても知られ、所有する海外端末数は1100台以上(2013年5月時点)。
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