こうした状況に穏やかでいられないのはMicrosoftだろう。やり過ごしたはずのNetbookに近い潮流が再びやってきたからだ。
現在のChromebookの価格レンジは200〜250ドル程度だが、前述のように参入メーカーが増えつつあり、競争の結果、もう一段価格レンジが下がることが予想される。主力の価格帯は150〜200ドル程度になり、製品によっては100ドルに手が届くものが出てくる可能性もある。
アプリケーション次第だが、Chromebookはそれほどスペックを要求しない事情もあり(特にストレージ)、本体価格を下げやすい。今後のアップデートでChrome OS上でAndroidアプリが利用可能になる仕組みが導入され、使い勝手の大幅な向上が見込まれる点も大きなポイントだ。
さらに「Chrome OS Tablet」登場のウワサもあり、ここでタッチ操作によるソフトウェアキーボードに対応することで、Chromebook改め、Chrometabletがさらに安い値段で市場投入される可能性もある。「100ドルタブレット」のようなものも夢ではないかもしれない。おそらく2014年末から2015年にかけて、こうした動きがさらに加速するものと考えられる。
詳細は省略するが、現在のMicrosoftのビジネスコアは「エンタープライズ」側にシフトしており、以前ほど一般ユーザーを対象としたWindowsのライセンスビジネスを重視していない。これは年々OEMへのOSライセンス単価が減少して、事業としてこの部分から大きな収益を上げるよりも、「まき餌」としてユーザーを広く取り込む方針に転換しつつあることが理由と考えられる。
ゆえに、最近ではOSライセンス価格を積極的に値下げし続けており、今年4月にはついに、9型未満のタブレットについて無料でWindowsをライセンスする施策を打ち出している。これが「Windows 8.1 with Bing」と呼ばれるものだ。
Windows 8.1 with Bingは付帯条件が不明な部分もあるが、「デフォルトの検索エンジンがBing」という以外はWindows 8.1 Updateそのもので、Netbookのときのような極端な制限はない。本当に使えるレベルのスペックで、Windows PCが利用できる。
そしてMicrosoftは7月14日、米ワシントンDCで開催された「Worldwide Partner Conference 2014(WPC 2014)」において、HP製の199ドルノートPCと99ドルタブレットを紹介した。
「Stream」と名付けられたこれらのPC新製品は今年2014年末以降に順次登場し、製品を紹介した米Microsoftのケビン・ターナーCOO(最高執行責任者)によれば「Windowsがそのまま使える」点が最大の特徴だという。
Windows 8.1 with Bingにみられるように、Microsoftが最近になりWindowsのライセンス価格を立て続けに引き下げた結果、誕生した製品だが、その矛先は明らかにChromebookと、それに続くChrometabletを意識している。
もともとは「9型未満のディスプレイサイズのデバイス」のみを対象としたWindows 8.1のライセンス価格無料プログラムは、Netbookのときと同様にコアビジネスを破壊しないための施策の1つだったとみられる。
しかし、Acerや東芝のノートPC新製品はこの枠に当てはまらないにもかかわらず、249ドルの本体価格を実現している。これはMicrosoftがWindowsのライセンス価格を大幅に引き下げた(あるいは一定条件と引き替えに無料化した)結果とみられ、MicrosoftがChromebookなどの対抗勢力と真正面から戦うことを決意したともとれる。
さらに同社は、これだけでもよしとせず、前述のStreamを投入して、来年以降さらに値下げが進むと目されるChromebook/Chrometabletに本格追従しようというのだ。
「2014年末から015年にかけて、100〜200ドルPCの激しい攻防がスタートする」と頭の片隅に控えつつ、今年後半のPC業界ニュースを眺めていると、いろいろと面白いものが見えてくるかもしれない。
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