米Microsoftの前CEOであるスティーブ・バルマー氏が発表した「One Microsoft」戦略において、同社はOSの開発を1つのチームへと再編成している。もともとはバラバラに動いていたものを1つにするため、少し時間はかかったが、統一コアに向けた動きはすでに走り出しているとみてよいだろう。
そしてMicrosoftが、その最初の成果を見せる機会が「Windows 9」の仮称でも呼ばれる次期Windows OS「Threshold(スレッショルド)」(開発コード名)だ。現状はWindows 8.1を含め「Blue」と呼ばれるコアをベースとしており、この切り替えが進んでいく2015年以降がOne Microsoft戦略が本当に生き始めるタイミングではないかと考えている。
もちろん統一コアといっても、1つのバリナリを使い回すわけではない。現在WindowsではARMとx86(含むx64)の大きく分けて2種類のプラットフォームをカバーしているが、それぞれに対してOSコアを用意する点に変わりはないだろう。このOSコアをベースにスマートフォン向けのWindows、PC向けのWindows、ゲーム機向けのWindows、組み込み機器向けのWindows……という形で市場を切り分けていく。
Windows RTは本来であれば、Windowsストアアプリ以外が許容されず、デバイスの管理が比較的容易なため、エンタープライズや教育、特定業務向け用途に向いていたと考えられる。しかし、MicrosoftはWindows RTのエンタープライズ機能(Active Directoryドメインへの参加機能など)を割愛し、そのターゲットをむしろ「コンシューマー向け」としてiPadやAndroidタブレットの対抗に位置付けたのだった。
その意味でのWindows RTは役割を終えつつあり、本来の意味での「ARM版Windows」が見直される時期が近付いている。
以前のMicrosoftは、OSのカバー領域をスクリーンサイズで区別していた。典型的なものがタブレットで、7型以上がWindows、6型以下がWindows Phoneといった具合だ。
Windows Phone 8はUpdate 3(GDR3)において、最大6型までのスクリーンサイズをサポートするようになり、これをきっかけに6型の「スマートフォン(ファブレット)」である「Nokia Lumia 1520」がリリースされている。一方で、これを超えるサイズの「タブレット」として10.1型の「Nokia Lumia 2520」がリリースされているが、こちらはWindows RTを搭載している。
つまり、Microsoftはタブレットとスマートフォン(ファブレット)の境界を6型と7型の間に置いており、ここを境にWindows/RTとWindows Phoneという2つのOSを使い分けているわけだ。
だが前述のように、単一のOSコアに統一して用途(市場)ごとにOSを提供していくとした場合、このサイズによる境は意味をなさなくなる。筆者の予想としては、今後は「かつてWindows(RT)と呼ばれていたOS」と「かつてWindows Phoneと呼ばれていたOS」のカバー領域がオーバーラップし、特にWindows PhoneのようなOSをベースにした6型以上のサイズの「Windowsタブレット」が登場する可能性もあるとみている。
ただしそれは、ARM版Windowsでありながら、Windows RTではないかもしれない。ユニバーサルアプリの記事でも解説したように、Windows RTが基本的にModern UIアプリしか動作しないのに対し(スクリプトを除く)、Windows Phone 8.1では従来のWindows PhoneアプリとModern UIアプリの両方が動作する。デスクトップ画面はないものの、コンテンツの消費や簡単な作業に特化するなら、Windows Phoneベースのタブレットのほうが向いているのかもしれない。
筆者の推測ではあるが、米国で「Surface Pro 3」が発表された5月下旬のイベントで前々からウワサされていた「Surface Mini」が発表されなかったのも、この辺りのタブレットに関するOS戦略的な議論があったためと考えている。
Surface Miniは、8型前後の画面サイズでARMベースのプロセッサを搭載して登場すると言われていた。従来のルールに従えば、OSはWindows RTが選択されていたはずだ。しかし結局Surface Miniは発表されず、含みを持たせるにとどまっている。
おそらくは、通常版のWindowsと、Windows Phoneのいずれかを採用するかも含めて、Threshold正式発表のタイミングで、何らかの動きがあるとみている。
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