発表会でもう1つの目玉となったのが、ビジネス向けインクジェットプリンタの新ブランド「MAXIFY(マキシファイ)」だ。高速、高画質、高生産性といったビジネスシーンで求められる価値を最大化する「MAX」に、動詞化する接尾辞の「IFY」を付加し、「ダイナミックに進化を続けていく」(川崎氏)という意味を込めた。
キヤノンMJの調査結果では、国内のビジネスプリンタ市場はレーザー機が85万台、インクジェット機が53万台、そして家庭向けプリンタのビジネス利用が42万台あると想定し、合計では180万台規模に及ぶ。中でもビジネスインクジェットは伸長しており、今後は60〜70万台になる見込みだ。
国内ビジネスプリンタ市場において、これまでキヤノンは22年連続シェア1位(ベンダー別出荷台数/ガートナー調べ)を誇るレーザー機の「Satera」シリーズを中心に、一部でビジネス寄りのインクジェット機である「PIXUS MX」シリーズも含めて対応してきたが、昨今は競合他社がビジネスインクジェットのラインアップを大幅拡充し、導入コストの低さや写真画質、省スペース、省電力などを武器にSOHO/中小企業へ拡販しつつある。
こうした市場動向の変化に対応し、ビジネスインクジェットに注力する競合に対抗するため、特にスモールオフィスを主要ターゲットに投入する戦略製品がMAXIFYというわけだ。すでに実績があるSateraは、レーザーならではの高品質、高耐久、充実したアフターサービスといった優位性を生かし、大企業から中小企業、SOHOまで幅広くカバーする。MAXIFYはSateraでカバーしきれないニーズを補完する役割を担う。
発表会で示されたIDC Japanの調査結果では、ビジネスシーンにおいてインクジェットプリンタは、印刷品質の満足度が高い一方、スピードやランニングコストでは不満があること、文字のみ印刷するユーザーが多いことからモノクロテキストの印刷品位が最重要なことが挙げられた。
こうした「ビジネスインクジェットに求められるスピード、画質、ランニングコストの3大ニーズ」(大塚氏)に応えるべく、MAXIFYは家庭向けのPIXUSとは異なる設計としている。
スピードについては、新開発のブラックインク用長尺プリントヘッドに加えて、印刷前の準備動作を一部平行させることでファーストプリント時間を最速約7秒に短縮し、余白の利用により1枚目の印刷中に2枚目を重ねて搬送する「重ね連送」でモノクロ最速約23ipm/カラー最速約15ipmを実現した。また、最上位の「MB5330」のみCISセンサーを2つ内蔵し、1パスで両面原稿を同時に読み取れるADFも搭載する。
画質面では、黒濃度が高く、くっきりと見やすい文字を表現でき、ビジネス文書に適した色設計を施したうえ、耐マーカー性、耐水性、耐擦過性も備えた新開発の顔料4色インクを採用した。合わせてビジネス向けの純正普通紙(FB-101)も販売する。
ランニングコストに関しては、専用インクタンクでPIXUSより低コストを達成。インクコスト(税別)は、大容量インクタンク使用時でモノクロ約1.8円/カラー約6.1円、標準インクタンク使用時でモノクロ約2.2円/カラー約7.6円だ(MB5330/MB5030/iB4030の場合)。従来のビジネス向けインクジェット複合機「PIXUS MX923」に比べて、モノクロで28%、カラーで25%のインクコスト減となる(大容量インク使用時)。
大容量インクタンクの採用に、最大500枚給紙に対応した2段カセット、最大50枚セットできるADFも組み合わせて、用紙やインク交換の手間を減らしたほか、電源のオン/オフタイマー機能で電力コストと管理負荷を低減、スマートデバイスからのプリント、「MAXIFYクラウドリンク」によるクラウド連携機能にも対応する。
販売戦略としては、MAXIFYとSateraを横断する新しいキャッチコピー「Biz Printer is(あらゆるビジネスに、キヤノンの解答)」を用意し、適材適所で2つのブランドを提案していく。
川崎氏は「オフィスのあらゆるプリントニーズに対応できる盤石な体制が整った。ホーム向け、ビジネス向けの両方における国内シェア1位の獲得に加えて、プリンティング市場全体でもトップブランドの地位を確立していく」と意気込み、今回の新製品に対する強い自信を見せた。
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