新たな歴史が始まった“特別な日”――iPhone 6/6 PlusとApple Watchから見えた未来神尾寿のMobile+Views(2/3 ページ)

» 2014年09月11日 20時16分 公開
[神尾寿ITmedia]

実利用環境を重視した基本性能の向上

 基本性能の向上も、iPhone 6とiPhone 6 Plusの重要なトピックスだ。両機はAppleが新開発した「A8」を搭載。これは先代同様の64ビット化がされており、20億ものトランジスタを実装。他方で、20ナノスケールが採用されて、高性能化しながらもチップサイズは13%の小型化がされたのが特徴だ。iPhone 5sと比較して、処理能力が25%、グラフィクス性能も50%高速化したという。

photophoto iPhone 6/6 Plusは新たに「A8」チップを搭載し、パフォーマンスが向上した

 しかし、ここでもスペックの数字を追い求め、強調するのではないことが、Appleらしいところだ。

 「瞬発的な処理速度の高さではなく、パフォーマンスが落ちないことを重要だ。A8はその点でほかのプロセッサよりも優れている」(シラー氏)

 スマートフォンやタブレット向けのCPUは、高性能化とともに発熱量や消費電力の制御が課題になっており、シラー氏が語るとおり、スペック上の高性能を長時間維持できない場面が増えている。A8ではむしろトップ性能よりも、高性能を長時間維持できることを重視して開発し、実際にユーザーが利用する上でのメリット向上に努めているのだ。

 またiPhone 5sから実装されたモーションコプロセッサも「M8」に進化し、歩数計や新搭載の気圧センサーを用いて高度の測定にも対応した。これはiOS 8から実装されるヘルスキットを下支えするほか、ほかのアプリからもM8の機能を利用できる。実際に試していないので精度が不分明であるが、M8の機能を活用すれば、屋内での歩行者ナビゲーションなども実現できそうだ。

photophoto 「M8」モーションコプロセッサは高度の計測も可能になった

 iPhone 6/6 Plusでは通信部分も強化された。

 LTEは下り最大150Mbpsまで対応し、キャリアアグリケーション(CA)にも対応。LTE上で音声通話を実現するVoLTEにも対応した。iPhoneは地域ごとの仕向け仕様をあまり作らない方針のため、各国向けにしっかりとローカライズされたAndroidスマートフォンに比較すると、LTE対応については“最新機能をキャッチアップ”という形になる。

 日本市場においては、ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの各社が、どれだけiPhone 6/6 Plusの通信機能に合わせてサービス展開するかが注目になる。とりわけVoLTEとキャリアアグリケーションについては、今後のキャリア間競争の争点になりそうだ。国内スマートフォン市場ではiPhoneが最も売れる端末であるだけに、各キャリアの動向に注目といえるだろう。

photophoto LTEは下り最大150Mbpsに拡張され、20バンドを利用できるようになった

 LTE以外では、Wi-Fiが「802.11ac」に対応した。また、これに合わせてWi-Fi環境下でも電話番号を用いた通話を行う「Wi-Fi Calling」という機能も実装。これはまずアメリカのT-Mobileなどから始まる。Wi-Fi Callingは電話サービスであるため、通信キャリアのビジネス領域を浸食するものだが、ドコモの「カケホーダイ」など完全音声定額サービスが前提になれば、LTE帯域を使わない分、キャリア側のメリットが出てくる。今後、日本の通信キャリアがWi-Fi Callingに対応する可能性もありそうだ。

photophotophoto VoLTE、Wi-Fi Callingが使えるほか、Wi-FiはIEEE802.11acをサポートする

NFC+決済サービスの「Apple Pay」の可能性

 IPhone 6/6 Plusにおけるサービス面での注目は、NFCの実装と、その上で動く決済サービス「Apple Pay」の投入だろう。これはiPhoneの上部に内蔵されたNFCと、指紋認証システムのTouch ID、そして情報を安全に格納するセキュア・エレメントとPassbookを組み合わせて使うもの。日本のユーザーであれば、“ドコモのおサイフケータイと決済サービスiDの組み合わせ”をイメージすると、Apple Payのサービス形態に近くなる。

photophoto 新しい決済サービス「Apple Pay」

 今回Appleは、Apple Payの実現にあたって、セキュリティとプライバシーの保護に最大限注力しており、決済時には登録したクレジットカード番号ではなく、ワンタイムの決済番号と決済用認証番号を用いる仕組みになっている。これにより、決済時に情報漏えいが起こったとしても、クレジットカード番号や個人情報まで被害が及ばないようになっている。このあたりの考え方は、マスターカードの提供する「マスターパス」に近い。なおAppleでは、Apple Payの実現にあたり、ユーザーの利用履歴を収集してビジネスに活用するといったことは一切しない、という。

photophotophoto NFC、Touch ID、そして内部のセキュア・エレメントを利用して決済を行う

 少し乱暴な言い方をすれば、Apple Payは最新の決済ソリューションのいいところ取りをし、それをAppleが得意とする“使いやすくて洗練されたユーザー体験”として再構築したものだ。だが、それゆえに、新たな決済サービスとして普及する可能性がある。

 Apple Payはまず北米地域ではじまり、アメリカンエクスプレス、マスターカード、VISAという3大ブランドが対応する。決済サービスの導入にあたっては、各国市場内の金融当局・金融機関との調整や加盟店網の整備などが必要になるため展開に時間がかかるが、Appleとしては、いずれは北米地域以外にもApple Payを広げたいという。

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