NASキット導入で気をつけたいHDD選びのポイント「NAS専用」はダテじゃない(1/2 ページ)

家庭内でマルチデバイス化が進み、ますます活躍の場が広がったNASキット。しかし、NASを導入する際には注意しておくべきことがある。それがHDD選びだ。

» 2014年09月30日 10時00分 公開
[ITmedia]
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 企業やデータウェアハウスでの利用シーンから始まったNAS――Network Attached Storage、ネットワーク接続ストレージ。数年前であれば一般ユーザーにとっては触れる機会もなく、その名称を耳にすることもほとんどなかったNASも、今ではSOHOや家庭にまでその活躍の場を広げている。

 ファイルサーバとしての用途のみにフォーカスされ、業務一辺倒だった機能も、個人での利用が増えるにつれてエンターテインメント機能の拡充やモバイル連携など、便利で楽しめるデジタルライフのハブとなりうる多機能型に変化してきた。

 その中でも今、特に注目を集めているのはNASキットだ。Linuxをベースとし、2台〜6台程度のホットスワップベイを搭載したNASキットは費用対効果が高く、台湾を始めとする海外メーカーの参入が著しい分野だ。

台湾の新興メーカー、ASUSTORのNASキット「AS-202TE」

 こうしたNASキットは、アプリをインストールして機能拡張できるものが多く、スマホのように好みや目的に応じて我が家だけのデジタルデータハブとして成長させていくことができる。「ファイルサーバがほしいけれども、もう少し応用力がないと家庭用としてはもったいない気がする、でも、具体的な用途はまだ未定」といった状況でも、とりあえず導入できるのが魅力の1つだ。

 そんなNASキットだが、導入にあたって最初に考えなければいけないのが別売のHDDのこと。分かりやすいところだと容量や価格を考慮して選定することになる。

キットと言ってもPC自作のような手間はかからない。HDDを購入してベイにネジ止め、本体に挿入すれば完成だ(写真=左)。家庭用NASキットは、2ベイから8ベイまで幅広いモデルがラインアップされているが、HDD1台あたりの容量が最大6Tバイトにまで達した今では2ベイモデルでも十分な容量になる。「故障しても復旧できるディスクの台数:1」でありながら5.41Tバイトが利用可能であることに注目!!

 だが、選定基準はそれだけでいいのだろうか。本稿では、これからNASキットの導入を検討している人に向けて、特に気をつけたいHDD選びのポイントを紹介していく。

デスクトップPCとは異なるNASの環境

 NASは前述したとおり、その出自はデータウェアハウスなどの業務用である。業務に直結する貴重なデータを保存するのだから、故障しない信頼性が大きく物を言う。一方、家庭で扱うデータに人生を左右するほどの重要性はない、と思うかもしれない。だが、日々成長する子どもの写真や動画、思い出の記録が詰まった大切なデータに価値の高低をつけられるはずもない。大容量のデータを一カ所に集めるからこそ、その信頼性は高いものが求められる。

 そのためにほとんどのNASキットではRAIDというHDDの冗長化構成ができるようになっている。RAID構成をとっていれば構成次第ではHDDが1台〜2台故障してもデータを失うことはない。

 しかし、それでも万全とはいえない。なぜなら同時期に導入し、同じ条件で動かしていたHDDのうち1台が壊れたのならば、ほかのHDDもいつ壊れてもおかしくない状態である可能性が高いからだ。データ保全、可用性においては多段的な対策、つまり、RAIDを組んで万が一に備えつつ、単体でも故障しにくい、NASの利用環境に最適化されたHDDを選択することが望ましい。

 それでは、NASの利用環境に最適化されたHDDとはどういったものなのだろうか。まずはデスクトップPCとNASの利用環境の違いを見てみよう。

連続稼働時間

 デスクトップPCの稼働状況は勤務時間や人の活動時間に準ずることが多い。基本的に人が操作するものだからだ。一方、NASはサービスを提供する機器のため、24時間365日の無停止稼働が前提だ。長時間の連続稼働は以下の点で過酷な環境となる。

温度

 24時間稼働だと状況によっては高温が長く続くことも多い。デスクトップPCのようにシャットダウンしてクールダウンさせれば済む、というものではない。またサーバルームであれば大きな音を立ててファンをぶん回してもよいが、家庭内での利用であれば静音性も求められる。NAS自体の効率のよいエアフローや低発熱性とともに、HDD自身の高い耐久温度、長い耐久時間が求められる。

電力

 NASが企業での利用に限られていたときには、そこまで電力効率に言及されることはなかった。せいぜい、ラックの電力をオーバーしてしまわないか、というくらいの心配だったはずだ。しかし、従量課金制である家庭用電力では、24時間稼働の機器の導入によって大きな影響を受ける可能性もある。もちろん、電力を大量消費する機器は発熱も大きくなる。

振動

 家庭用NASキットがサポートしているRAID構成はRAID 1/5/6/10などであり、RAID 2〜4は事実上生き残れなかった過去の仕様となっている。これらの構成では原理上ディスクアクセス時に偏りが生じ、壊れやすいHDDが出てきてしまう。故障を減らすためにはまんべんなく、すべてのディスクを均等に使用することが重要だ。

 だが、その結果もう1つの問題が出てくる。それが振動だ。NASキットでは省スペース化のために同一ボリュームを構成するHDDをすぐ隣に並べる。そして同じタイミングで隣接したディスクが動作すると、増幅した振動を長時間に渡って受け続けることになる。

 これはHDDを1台のみ、あるいはSSDとの組み合わせで利用するなど、自身以外の振動の影響が限定的なデスクトップPCとは大きく異なる点だ。

ハードウェアRAIDのエラーリカバリ制御

 RAIDはソフトウェアで実現する場合と、ハードウェアで実現する場合がある。ハードウェアで実装されている場合、HDDよりも上のレイヤ――つまり、RAIDコントローラ側で障害を回避することを前提とした設計となっている。

 一方、デスクトップPCでは価格と性能、信頼性のバランスが重視された設計だ。デスクトップPC全体の信頼性向上のために、エラーが発生した場合にセクタのリマップを自動的に行うHDDが多い。

 しかし、そのようなエラーリカバリ機能は場合によってはNASのRAID機能とバッティングしてしまうこともある。HDDがリカバリをがんばってしまった結果、無応答の時間が続いてしまい、RAIDコントローラ側がもはや信頼できないディスクとなってしまったと誤認してしまう。

互換性

 購入者がHDDを用意するNASキットの場合、NAS本体とHDDの組み合わせは多岐にわたる。インタフェース自体は互換性があるものの、それより上のレイヤーでうまく動作しない場合――いわゆる相性問題が発生することもある。このような問題はデスクトップPCの場合だとOSに依存することが多いが、OSがファームウェアとして組み込まれているNASの場合はよりシビアな問題となる。

 整理すると、NAS用ストレージ用HDDは次のようなものが望ましいということになる。

1、24時間365日の連続稼働を前提として設計・検証が行われていること

  • 動作可能温度の上限が高い
  • 省電力であり、動作温度が低い

2、振動に対する対策がなされていること

  • 発生する振動・ノイズが小さい
  • 外部からの振動に強い

3、RAID用の設計がされていること

  • RAIDコントローラのエラーリカバリ制御を考慮している
  • NASとの互換性が保証されていること

 そしてこれらの条件を満たすNAS専用モデルとして、人気・実績ともに高い製品がウェスタンデジタルのNAS専用モデルシリーズ「WD Red」だ。WD Redは上記の要件をすべて満たしている。

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