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» 2014年10月08日 08時30分 公開

タブレットに“超高性能”という新提案:「VAIO Prototype Tablet PC」を濃密にチェックする (2/5)

[前橋豪,ITmedia]

高パフォーマンスをモバイルに落とし込む発想は「VAIO Z」譲り

 VAIO Prototype Tablet PCに話を戻すと、最大の特徴はやはりパフォーマンスだ。ひとくちに高性能と言うには、タブレットとしてハイスペック過ぎる。何しろCPUは、通常ハイパフォーマンス志向の大画面ノートPCだけに使われるTDP(熱設計電力) 47ワットの第4世代Core Hプロセッサ(4コア/8スレッド)を搭載してきたのだ。

 試作機で実際に動作していたのは、Haswell Refresh世代のCore i7-4760HQ(2.1GHz/最大3.3GHz)だった。CPU内蔵グラフィックスは、標準的なHD Graphics 4000シリーズと描画性能で差が付くIris Pro Graphics 5200だ。これはクリエイター御用達の「15インチMacBook Pro Retinaディスプレイモデル」と同種(ちょっとCPUクロックは低いが)の高性能CPU/GPUをタブレットに内蔵していることを意味する。

 また、仕様が公開されていない部分だが、16Gバイトとタブレットでは大容量のメモリ、PCI Express接続の高速SSDも搭載できるという。

内部構造は明らかにされていないが、TDP 47ワットの4コアCPUを放熱するため、上面には排気口として多数のスリットが開けられている。通常のタブレットより放熱機構がかなり強化されているのが一目瞭然だ。背面の右側にも通風口を設けている

 さて、このCPUがどれくらい異例なのか? 現在Ultrabookを含むノートPCや2in1で主流のCPUは、TDP 15ワットの第4世代Core Uプロセッサだ。より省電力や薄型軽量を狙った2in1およびタブレットでは、TDP 11.5ワット/SPD(利用シナリオに即した電力設計) 4.5〜6ワットの第4世代Core Yプロセッサが使われている。新世代CPUとして登場したばかりのCore M(Broadwell-Y)はTDPを4.5ワットまで抑えており、薄型軽量タブレット向けのAtom(Bay Trail-T)に至ってはSDP 2〜2.2ワットという値だ。

 つまり第4世代Core Uプロセッサは、第4世代Core Uプロセッサの3倍以上、Core Mとの比較では10倍以上もTDPが高い。

 ノートPCやタブレットの熱設計では、TDPやSDPが低いほどCPUクーラーなどの放熱機構を小型化でき、Core MやAtomくらいになれば、ファンレス設計による薄型軽量化も可能になる。

 しかし、TDPやSDPが低いCPUはパフォーマンスも低くなりがちなので、高生産性を重視したノートPCや2in1、タブレットでは、放熱機構が大型化し、ボディサイズが膨らむのも覚悟して、パフォーマンス志向で第4世代Core U/Yプロセッサを選ぶわけだ。それでもTDP 15ワットをタブレットのボディで放熱するのに苦労している製品は少なくない。

 そんな中、いくら高性能だからといって、TDP 45ワットものCPUをタブレットに内蔵しようというのは無謀なのではないか? そう思われても仕方はないが、VAIOはこれまで他社が取り組まなかったような高性能を薄型軽量ボディに収めるという挑戦を何度も行っており、しっかり製品化して成功させてきた実績がある。

かつてのVAIOフラッグシップモデル。13.1型モバイルノートPC「VAIO Z(Z2)」は、通常電圧版の第2世代Coreを16.65ミリ厚/約1.15キロの薄型軽量ボディに搭載していた

 ソニー時代の2011年7月に発売した13.1型モバイルノートPC「VAIO Z(Z2)」は、その代表格と言えるだろう。

 第2世代Core(Sandy Bridge)の通常電圧版(TDP 35ワット)を搭載しながら、超低電圧版(TDP 17ワット)を採用した多くのUltrabookに勝る16.65ミリ厚/約1.15キロの薄型軽量と十分なスタミナを実現し、性能と携帯性を高いレベルで両立できていた。

 しかし、第4世代Core(Haswell)では、UプロセッサとHプロセッサで省電力設計に大きな差があるため、VAIOであっても、携帯性に配慮した製品でHプロセッサをあえて選択する例は見られなくなった。

 また、インテルがUltrabook、2in1、タブレットと、薄型軽量デバイスの普及を促すCPUの省電力化を推進してきた結果、少々語弊はあるが、技術やノウハウがないPCベンダーでも携帯性の高いモバイルPCやタブレットを製品化しやすくなり、VAIO Zほどの強みを持たせるのが難しくなった面は否めない。

 こうした中、新生VAIOがその輝きを取り戻すための策として、かつての名機であるVAIO Zと同じ、突出した性能(だが熱いCPU)を薄型軽量に収めてまとめ上げるという差異化に挑戦し、しかも新会社で初めて公開する新設計モデルに選んできたというのは、VAIOファンと、ソニーからの切り離しでVAIOから去って行ったユーザーへ訴えるのに、なかなかよい一手に思える。

液晶ディスプレイにも並々ならぬこだわり

 CPU以上に注目したいのが、初採用の高品位な液晶ディスプレイだ。Surface Pro 3において、縦位置でも横位置でも使いやすいと評判になったアスペクト比が3:2になる液晶パネルを搭載。しかし画面サイズは12.3型、解像度は2560×1704ピクセルと、いずれもSurface Pro 3(12型/2160×1440ピクセル)を上回る。

 その画素密度は約250ppi(pixels per inch:1インチあたりのピクセル数)を確保し、Surface Pro 3(約216ppi)はもちろん、MacBook ProのRetinaディスプレイモデル(13インチで約227ppi、15インチで約220ppi)より高精細だ。これなら視聴距離がノートPCより近いタブレットでも画素の粒や表示のジャギーが気になることはない。

2560×1704ピクセル表示の12.3型液晶ディスプレイを搭載。画素密度は約250ppiと高精細な表示だ
アスペクト比が3:2の液晶パネルは、16:9や16:10の液晶パネルと比べて縦方向の解像度に余裕があり、画面を90度回転させた縦位置でも使いやすい。Windows 8.1 Updateのスタート画面も余裕を持ってタイルが並べられる

 単に高解像度なだけでなく、画質も優れている。Windowsやネットコンテンツで標準的なsRGBの色域を大きく上回り、プロフォトや印刷業界で使われるAdobe RGBの色域を表現でき、Adobe RGBカバー率95%以上(実際は95〜97%程度だが、公称値としては95%)の広色域を誇っているのだ。

 実際のガンマやガモットといった発色傾向は分からないが、キャリブレーションして運用すれば、プロのカメラマンやデザイナーが携帯し、カラープロファイル付きの画像データを正しく表示できるモバイルPCとしても役立ちそうだ。

 従来のVAIO Z(Z2)などもAdobe RGBの広色域をサポートしていたが、TN方式の液晶パネルだったため、高彩度な発色が視野角の狭さをかえって強調してしまう嫌いがあった。その点、今回の試作機は広視野角のIPSパネルを採用し、色域の広さを存分に生かせる。

 表面ガラスと液晶パネルの間にある空気層を透明な樹脂で埋めることで、外光の反射を抑えつつ、タッチやペン操作の視差を減らすオプティコントラストパネルも採用した。

Adobe RGBカバー率95%以上の広色域、IPSパネルによる広視野角、外光の反射を抑えるオプティコントラストパネルも高画質に貢献している。とはいえ、表面は光沢なので、外光の映り込みは発生する

 実際にSurface Pro 3と並べて見比べてみると、緑や赤の鮮やかさがまるで違うことが一目で分かる。Surface Pro 3の液晶ディスプレイも高画質で知られるが、今回の試作機はそれを超えており、Adobe RGB対応ならではの豊かな発色が堪能できた。この液晶ディスプレイだけでも、VAIO Prototype Tablet PCを選ぶ理由になるだろう。

左がSurface Pro 3、右がVAIOの試作機。画面のアスペクト比はどちらも3:2だが、VAIOの試作機のほうが少し大きく、高解像度、かつ色域が広い。見比べると、原色の色鮮やかさが大きく違うのが分かる

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