液晶ディスプレイの美しさもXperia Z3 Tablet Compactの大きなストロングポイントだ。10型クラスの先代機、Xperia Z2 Tablet同様に、専用のカラーフィルターの開発により色域を広げた「トリルミナスディスプレイ for mobile」に、バックライトシステム「Live Colour LED」を組み合わせ、さらに赤と緑の色域を広げて色再現性を高めている。
表示解像度は10型クラスのXperia Z2 Tabletと同じ1920×1200ピクセル(WUXGA)で、そのぶん画素密度は283ppi(pixels per inch:1インチあたりのピクセル数)まで向上した。もちろん、使用中に画素の粗さが気になるようなことはなく、高精細で滑らかな表示だ。
表面ガラスと液晶パネルの間にクリアな樹脂を流し込み、空気層をなくした「OptiContrast Panel」も引き続き採用。センサー層を一体化した「Direct Touch」も合わせて導入している。外光の反射を抑え、暗いシーンでの白ぼやけを防ぎ、深く美しい黒色を表現できるほか、表面ガラスからタッチセンサー、ディスプレイ表示面までの距離が短くなるために視差が低減し、タッチ操作の精度を高める効果もある。表面のガラスの奥に画面があるのではなく、ガラスの表面に直接表示されているような、そんな感覚だ。
ボディの薄さや額縁の左右が狭いデザインもあいまって、液晶ディスプレイのインパクトは非常に強い。Androidのホーム画面からして、クッキリと色鮮やかな表示で、高画質が一目で分かる。赤やピンクの花、青い海や空、緑の森など、風景の写真や動画はとりわけ美しい。iPad mini 3の液晶ディスプレイも高精細でキレイだが、このXperia Z3 Tablet Compactと比べてしまうと、表面のガラスが気になるし、表示自体も色域の狭さから色あせて見えるほどだ。
また、ソニー独自の超解像技術により映像を鮮明にする高画質エンジン「X-Reality for mobile」も持ち込んでいる。映像のシーンに応じて要素を分析し、模様、輪郭、色成分を調整することで、本来の質感やディテール感を再現する機能を持つ。また、ネット動画のような低ビットレート映像を超解像技術できれいに再生することもできる。
試しにエックスライトのカラーキャリブレーションセンサー「i1Pro」を使って、ディスプレイの表示を検証してみた。Windows PCの外部ディスプレイとして利用できるアプリを導入し、PC用ソフトウェア「i1Profiler」からi1Proをコントロールすることで、タブレットの内蔵ディスプレイを計測している。
計測結果は、最大輝度が500カンデラ/平方メートル強と非常に明るい一方、色温度は約8300K程度と、標準的な6500Kよりかなり高かった。実際に見ても、白がすっきりとした寒色系の表示傾向だ。独自の高画質化技術も合わせて、sRGBやAdobe RGBといった業界標準色域の再現性よりも、写真や動画、ゲームといったコンテンツをとにかく明るく色鮮やかに表示することを重視した画作りと言える。
ガンマ補正カーブを見ると、明部で少しRGBの線が上に引き上げられている(実際は入力信号に対して、少し暗めに出力することを意味する)が、黒からグレーの中間階調まではRGBの線がほぼそろって直線を描いており、階調の再現性も及第点だろう。
続いて、i1Proで作成したタブレットのICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで開き、色域を確認した。予想通りXperia Z2 Tablet同様、タブレットでは非常に広色域という結果だ。
通常PC USERのレビューでタブレットやPCの色域を示す場合、sRGB規格の色域を薄いグレーで表示し、その上にカラーで測定対象の色域を重ねるのだが、Xperia Z3 Tablet Compactで同じようにすると、グレーの表示がまったく見えなくなってしまう。つまり、sRGBの色域を完全に超えているのだ。逆にXperia Z3 Tablet Compactの色域をグレーで敷いて、sRGBをカラーで表示すると、色域の広さがよく分かる。
同様に、sRGBより色域が広いAdobe RGBの規格とも発色を比較してみた。青や黄色の色域はXperia Z3 Tablet Compactのほうが広い一方、緑やシアンではAdobe RGBに及ばない。しかし、タブレットやノートPCではsRGBを完全にカバーできる色域がある液晶ディスプレイ自体が珍しいため、この広色域はアドバンテージだ。10型クラスのXperia Z2 Tabletとほぼ同レベルの色域と言える。
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