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「攻め」に転じたMicrosoftは何を目指すのか?――無料Officeアプリ強化、容量無制限OneDrive、Dropbox連携鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/3 ページ)

» 2014年11月18日 09時45分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]
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.NETオープンソース化と開発ツール無料化の狙い

 Microsoftが掲げるインターネット戦略の中核だった「.NETのオープンソース化」、ほぼフル機能版に相当する開発ツールである「Visual Studio Communityの無料提供」も、新しい同社を象徴する大胆な発表だ。

 同社がインターネット経由であらゆるデバイスを結びつける「Microsoft .NET」という名称の戦略を発表したのが2000年。その後の2002年にそれを実現するアプリケーション実行環境「.NET Framework 1.0」が登場した。

 当時の.NETにおける大きな目標は2つあり、1つが「(インターネット時代に適した)モダンなアーキテクチャやユーザーインタフェース(UI)を実現すること」、2つめが「PC以外のデバイス(携帯電話や組み込み機器など)でも利用できる共通のフレームワーク実現」にあったと考えられる。

 翻って、過去12年の間にインターネット事情も変化しつつあり、.NET以外のプラットフォーム共通の実行環境として「HTML+JavaScript」の利用が広がった一方で、近年フロントエンドデバイスの主軸となりつつあるスマートフォンやタブレットでは、プラットフォームごとに独自の実行環境を持つ「アプリ」が主役になったりと、必ずしも当初Microsoftが描いていた世界に進んでいるようには見えない。その意味で、今回の発表は12年の節目での方向転換だと言えるかもしれない。

 .NETは組み込みからPC、サーバ向けまで、現在もWindows開発における中核であり、Windows Phone 8.1の世代になるまでは携帯アプリ開発も完全に.NETをベースにしていた。

 一方で.NETには別の潮流があり、それがオープンソースを主体に開発が進んでいた「Mono」プロジェクトだ。Monoは.NETをLinuxなどオープン環境で動作させることを目標にしており、後にMac OS Xや携帯プラットフォーム向けにも移植されることで「クロスプラットフォーム開発ツール」の性格を帯びてきた。

 これを利用して「iOS、Android、Windowsの3つのプラットフォームでアプリを同時に開発可能であること」をセールスポイントにした「Xamarin」が2011年に登場している。この辺りの事情は過去の連載でも解説した通りだ。

 今回発表されたのは、このクロスプラットフォームとしての.NETに注目し、.NETの関連ツールから実行環境までをオープンソース化、広く利用を促していくのが狙いだ。これらはGitHub上で参照可能で、ライセンス形態はMIT Licenseとなっている。

GitHub上でソースコードが公開されたサーバーサイド向け技術「.NET Core」

 主力製品をオープンソースとして公開する理由はいくつかあるが、今回のケースで言えば「開発者人口の多いフレームワークをクロスプラットフォーム環境として開放することで、(ライバルらによる)ベンダーロックインを防ぎ、主力の開発環境とすること」が狙いとみられる。このターゲットの1つは、クライアントデバイスの世界で勢力を増しているApple対抗があると考えられる。

 従来のExpress版と異なり、Professional版相当の機能を持つ「Visual Studio Community 2013」を無償提供し始めたのはこれと連動しており、「.NETアプリを開発できるツールが必要」という部分にある。少なくともVisual Studioの実行にはWindows OSが必要なわけで、Microsoftのデメリットにはならないだろう。

独立系開発者や学生に向けて「Visual Studio 2013」の無償版に相当する「Visual Studio Communiti 2013」の提供も開始した

 これは同時に、「Windowsというプラットフォームに必ずしもこだわらなくなったMicrosoft」ということも意味している。.NETが当初思い描いた世界とは現在では状況が異なっているように、デバイスやソフトウェアまわりの事情も変化した。一般ユーザーのフロントエンドとしては、スマートデバイス+クラウドという形態が主流になりつつあり、Windowsは以前ほどの寡占状態にはない。

 むしろ周辺サービスとの共存を目指すことで、Microsoftの確固たるポジションを堅持するのが重要で、それが前述した矢継ぎ早の提携劇に現れている。「Office for Android/iOS」の例を見ても、需要のあるサービスやアプリは積極的に他のプラットフォームにも展開し、サービス主体はクラウド側に移管するなど、WindowsとOfficeをセットにした囲い込みから脱却する方向性が明確だ。

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