“Excavator”採用のAMD新世代APU「Carrizo」を掘り下げる2020年には電力効率を25倍に(2/3 ページ)

» 2014年11月25日 16時00分 公開
[本間文,ITmedia]

CarrizoでHSAの本格利用もまもなく

 AMDは、このCarrizoを28ナノメートルプロセスルールで製造するとしているが、マクリ副社長は「Carrizoでは、現行のKaveriとは異なるプロセスルールを採用し、省電力化に対する最適化やトランジスタの高密度化を図っている」と説明した。また、サウスブリッジ機能をAPUに統合したSoC(System on Chip)化を果たすことで、システム全体のさらなる省電力化も実現すると述べている。

Carrizoの概要。HSAのフルスペックを実装した初のAPUとなるほか、サウスブリッジ機能の統合によるSoC化や、新CPUアーキテクチャの採用、そして大幅な省電力化を実現する見通しだ

 AMDにとって、CarrizoはHSAのフルスペックとなるHSA 1.0対応APUという重要な役割も果たす。HSA 1.0では、CPUとGPUの緊密な連携を実現すべく、現行のKaveriでは、メモリコントローラやメモリ階層の改良により、次の技術を実現してきた。

  • CPUとGPUでメモリアドレスを共用するユニファイド・メモリ
  • CPUとGPUでキャッシュの整合性を図るメモリコヒーレンシ


 さらに、HSA 1.0対応を果たすCarrizoでは、これに、「プリエンプティブなコンテキスト・スイッチング」を実現する。

 プリエンプティブなコンテキスト・スイッチングとは、優先度の高い命令を実行するために、実行中のタスクを一時的に中断することを可能にすることだ。これにより、効率的なCPU-GPU連係が可能になる。

CPUとGPUの緊密な連携を実現する次世代のコンピューティング環境HSAもいよいよ実用段階に差しかかった

 マクリ氏は、Carrizoには、APUパッケージタイプを共有する省電力デバイス向けの“Carrizo-L”も用意することを明らかにした。このAPUは“Beema”の進化版という位置付けで、統合するCPUコアも“Puma+”となる。

 なお、Carrizo-LではHSA 1.0に対応しないが、「PCベンダーはシステム設計を共用できるため、トップ・トゥー・ボトムのラインアップ展開が容易になる」(マリク氏)と、CPUアーキテクチャや機能が大きく異なる2つのAPUを、Carrizoシリーズとして投入する意義を説明する。

 現在AMDが公開してているCarrizoシリーズに関する概要は以下の通りだ・

Carrizo

  • “Excavator”CPUアーキテクチャ
  • 最大4基のx86 CPUコア
  • 次世代GCNグラフィックスアーキテクチャの採用
  • フルHSA機能を実現するHSA 1.0のサポート
  • サウスブリッジ機能の統合によるSoC化
  • AMD Secureプロセッサの実装
  • TDP 15〜35ワット
  • FP4 BGAパッケージ
  • 28ナノメートルプロセスルールの採用

Carrizo-L

  • “Puma+”CPUアーキテクチャ
  • GCNグラフィックスアーキテクチャ
  • AMD Secureプロセッサの実装
  • TDP 10〜20ワット
  • FP4 BGAパッケージ
  • 28ナノメートルプロセスルールの採用


AMDがFuture of ComputeにあわせてアップデートしたモバイルAPUロードマップ

 AMDがFuture of Computeにあわせてアップデートしたロードマップでは、Carrizoの市場投入時期が2015年前半となっているものの、具体的なスケジュールは明らかにしていない。マクリ氏によれば、CarrizoのCPUコアとなるExcavetorのアーキテクチャ詳細は、2015年2月の国際半導体技術会議「ISSCC 2015」で明らかにする予定としているので、搭載する製品の投入は第2四半期になると考えるのが現実的だ。

 AMDが同じタイミングで公開した省電力技術ロードマップでは、CarrizoがKaveriに比べて電力効率を2倍に向上する見通しであることや、2020年には電力効率を25倍引き上げるための技術開発を進めていることも明らかにしている。

AMDの省電力技術ロードマップでは(写真=左)。2020年には、電力効率を25倍に高める計画だ(写真=右)

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