海外プリペイドSIM導入マニュアル――「ミャンマー・ヤンゴン2014年」編屋台で買うのが最も手軽(2/2 ページ)

» 2014年11月27日 13時14分 公開
[山根康宏,ITmedia]
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MPTのお店では瞬殺で売り切れ!

 Ooredooの回線を入手してひと安心したが、やはり国営でエリアも広いと言われているMPTのSIMも入手しておきたいもの。ヤンゴン中央郵便局にあるMPTの店へ行けば他にも何か情報が得られるかもしれない。開店は朝9時で、若干寝坊してしまったが午前中に到着すればなんとかなるだろうと考え、徒歩で郵便局へと向かった。

 郵便局に到着したのは午前10時。建物内に入ると左側にたくさんの人が集まっており、その向うにはMPTの掲示も見える。なるほどここがMPTの店舗なのか。ところが近づいてみると、スタッフらしき人たちが何かを大声で叫んでいる。そして手前にはそのスタッフに詰め寄ったり質問をする客が集まっているではないか。これは何事なのだろうかと思い、客をすり抜けカウンターの前へ行ってみるとショーケースの中には何も入っていない。そう、プリペイドSIMの当日販売分が売り切れていたのだ。

 ミャンマーでは以前から回線容量が足りないこともあり、プリペイドSIMは枚数制限で売られていた。それが今でも続いており、朝イチで行ったところで行列ができており購入できないことも多いようなのだ。しかも転売目的で購入する客もいるようで、外国人渡航客がここでプリペイドSIMを買うことはかなり難しそうだ。

 なおミャンマーの平均月収は日本円でだいたい5000円から1万円。外国語ができ、外資系に務める場合で2万円から4万円、海外留学やMBA取得のエリートでも10万円程度。多くの市民が1万円以下の月収であることを考えると、約150円で売られるプリペイドSIMの価格も日本の感覚でいえば数千円。街中の屋台ではこれが約3倍の値段で売られているわけで、屋台商人も結構な利益を得ていることになる。

photo ヤンゴン中央郵便局。中にMPTの店舗が入っている
photo 午前10時にも関わらず人の入りは多い
photo SIMカードの販売を行っている表示もある
photo だがショーケースは空。毎朝一瞬で売り切れてしまうらしい

屋台でプリペイドSIMを買うのが最も手軽

 MPTの店舗で買えなかったのはショックであるが、実はヤンゴン市内中心部ではあちこちに事業者の代理店やSIM屋台があり、プリペイドSIMの購入は簡単だ。特に屋台では身分証明書の提示もいらず、その場ですぐに購入して使うことができる。なおSIMには通話料金もデータ料金も入っていないため、別途残高追加カードを買う必要があるが、屋台の大半はSIMそのものしか販売してない。残高追加カードは事業者の看板を掲げた街中の雑貨店や携帯電話販売店で売っているので、SIM購入時はすぐに残高追加カードも買っておこう。

 今回、屋台ではMPTに加え空港で買えなかったTelenorのプリペイドSIMも買ってみた。まずMPTはエリアの広さに定評があることからか、購入価格は6500チャット(約720円)。買った屋台ではSIMのみだったため近くの雑貨店で1万チャットの残高追加カードを購入。

 次にデータ通信の利用申請を行う。これはSMSで、電話番号1331に本文「Orderdata service」と書いたものを送信する。送信後、すぐにSMSで申請が開通した知らせが来る。SMSによるとここで端末をリスタートしろとのことなので、いったんリスタートを行った。なおデータ通信設定は以下の通り。

  • APN mptnet
  • ユーザ名 mptnet
  • パスワード 0000(ゼロが4つ)

 さて続けて残高をもっと追加してデータ通信を行うべきだろうが、ボーナスで300チャットほどが入っている。MPTのデータ通信料金は3G通信利用時に4チャット/1分、2G通信利用時に2チャット/1分となる。つまりこれ以上残高を入れなくても、3G利用で約75分使える計算となる。すでにOoredooも入手、この後Telenorも買う予定だったことから、ここはセコくお金を入れずに使うことにした。

 だが残高が200チャットを切ったところで残高を追加しろとのSMSが届き、その後150チャットくらいになったところでデータ通信が不能になってしまった。ボーナス分が全てデータに使えなかったのかもしれないが、やはりデータ通信を行うためにはある程度の残高が必要だろう。また残高確認は*124♯に発信で画面表示されるはずがうまくいかず、123に電話をかけてアナウンスに従い、2(英語)を押し、続けて2(残高確認)を押して音声で確認する方法で行った。

photo 屋台では各社のプリペイドSIMを購入できる。MPTは6500チャットと一番高い
photo 購入したMPTのSIMと、売店で購入した1万チャットのバウチャー

 次にTelenorのSIMも屋台で購入してみた。その屋台ではSIMだけだと4500チャット、5000チャットのバウチャーセットだと9000チャットと少し割安。5000を追加し、SIMと1万チャット分の料金を購入してみた。

 TelenorのSIMは開通作業が必要なようで、SIMを端末に差し電波を拾ってからすぐに残高を追加しようと思ったところ、登録されていないとのエラーが出てしまった。そのため自動音声案内のヘルプデスク、電話番号979に一瞬だけ通話を行うとすぐにSMSで回線開通のお知らせが届いた。ここで改めて5000チャットのバウチャーを2枚追加。

 Telenorは開通後30日、Facebookアプリでのネット接続が無料とのこと。Facebookしか使わない場合は一番お得かもしれない。またデータ料金は速度が300kbpsとなるものの6チャット/1MバイトとOoredooより安い。通信速度を2Mbpsに上げるには、SMSで電話番号500に本文「smart」と書いて送信する。またデータパッケージも用意されている。

  • 100Mバイト:500チャット/週(速度300kbps)
  • 500Mバイト:1900チャット/月(速度300kbps)
  • 1Gバイト:6600チャット/月(速度2Mbps)

 申請は、それぞれ上から「myweek」「mymonth」「smartmonth」と本文に書いたSMSを、電話番号500に発信する。またデータ通信設定は以下の通り。

  • APN internet
  • ユーザ名 なし
  • パスワード なし
photo TelenorのSIMとバウチャー
photo 余談だがバウチャーの番号は2+4+4+4=18ケタ。丁寧に削らないと数字まで削ってしまうので注意

3社の比較はOoredooが一番か

 3事業者を購入してヤンゴン市内を動き回ってみたところ、三者三様の使い勝手となった。まずMPTはエリアが一番広いと言われたものの、中心部から離れると2Gに落ちることも多く、また建物内でもエレベーター内などで通信速度がGPRSやEDGEに落ちることも見られた。そしてTelenorは市内でも電波が切れることが多く、建物内でも一番弱い感じ。トイレに入ると電波が切れて無電波状態になることもあった。これに対しOoredooは比較的電波が切れにくく、一番安定していたように感じられる。

 一方通信速度は各社似たり寄ったりで、最大で下りが3Mbps程度。一方上りは各社とも弱く、ソーシャルサービスへの写真アップに失敗することもあった。3社並べて速度テストを何カ所かで行ってみたのだが、どれか1社の上りが遅くて計測不能という状況で、回線品質はまだまだ不安定なようである。速度はエリアにもよるが各社とも平均で下りが3Mbps、上りが2Mbps前後といったところだった。

 アジアの中でもプリペイドSIMの買いにくかったミャンマーも、今や他国と同様にここまで簡単に買えるようになっている。個人的には購入してすぐに使え、データパッケージも使いやすいOoredooが一番使い勝手が良いように感じた。市内ではスマートフォンユーザーが非常に多く、また日本のKDDIも事業運営に参入したことから、通信環境は今後劇的に改善されていくだろう。今後が楽しみな国である。

photo 市内では通信系企業の広告を付けたタクシーやバスも多く見かける
photo スマートフォン利用者が非常に多いのも特徴だ
photo

山根康宏 :香港在住の携帯電話研究家。一企業の香港駐在員時代に海外携帯電話に興味を持ち、2003年に独立。アジアを中心とした海外の携帯電話市場の状況や海外から見た日本の携帯電話市場についてなど、海外の視点からコラムや記事を日本のメディアに執筆するほか、コンサルティング活動も行う。携帯/SIMカードコレクターとしても知られ、所有する海外端末数は1100台以上(2013年5月時点)。


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