ゴールド、シルバー、ブロンズの受賞は逃したものの、製品選定時に候補として挙がった注目度の高いディスプレイもまとめて見ていこう。
先ほど紹介した5KディスプレイのUP2715Kと同時発表され、話題を集めたのがデルの23.8型4Kディスプレイ「P2415Q」だ。
同社は今年3月に7万円を切る28型の4Kディスプレイ「P2815Q」を発売し、「4Kの価格破壊」を率先して行ってきたが、P2815Qは上下の視野角が狭いTNパネルを採用しており、最大リフレッシュレートが30Hzに制限された低コスト重視の仕様だった。
しかし、P2415QはIPSパネル搭載、60Hz対応で5万円台半ばという圧倒的なコストパフォーマンスを実現している。1年足らずで恐るべき進化だ。23.8型なので、4Kの高解像度を作業スペース拡大ではなく、高精細表示に向けて使うことになるが、Retinaディスプレイのような滑らかな表現を外付けディスプレイでも得たいユーザー、写真や4K動画を拡大せず高精細で映したいユーザーには、手ごろで満足度が高い選択肢となる。
すでに2モデルを受賞製品として挙げたEIZOだが、スタンダードディスプレイの24.1型モデル「FlexScan EV2455」も完成度の高い製品だ。
1920×1200ピクセル(WUXGA)表示の24.1型ワイドIPSパネルを搭載し、左右と上部のベゼル幅を約1ミリまで削り、液晶パネルの非表示エリアを足したフレーム全体の厚さでも約6.2ミリと、FORIS FS2434に近い超狭額デザインを採用した。これにより、すっきり設置でき、マルチディスプレイ環境も構築しやすい。前面のボタン部に静電スイッチを採用し、凹凸をなくしたノイズレスデザインも相まって洗練された印象を受ける。
従来比でさらにバックライトのちらつきを抑制した改良型のEyeCare調光をはじめ、疲れ目対策や省電力に配慮した機能およびスタンド機構を有し、中長期で安心してオフィス業務で使える1台と言える。EIZO直販限定色のホワイトは、ブラックやグレーのディスプレイが外観的にピンとこないユーザーにおすすめしたい。
昨年末、多くのユーザーに惜しまれつつも、国内ディスプレイ市場から撤退することとなった三菱電機。特に同社の「Diamondcrysta WIDE」シリーズは、EIZOのFORISとともに国内のエンターテインメントディスプレイ市場を盛り上げてきた名機であり、今も現役で使い続けているユーザーが少なからずいることだろう。
事業撤退とともに三菱独自のディスプレイ技術が失われる懸念もあったが、意外にもDiamondcrystaの技術を継承したモデルが、かつてのライバルであるアイ・オー・データ機器から現れた。それが新しい「GigaCrysta」シリーズだ。
Diamondcrystaで好評を博していた超解像技術をもたらす映像エンジン「ギガクリア・エンジンII」を採用し、高速応答のIPSパネルを搭載することで、ゲームをはじめとするエンターテインメントユースに最適化している。主力の23.8型モデル「LCD-RDT241XPB」は、時代のニーズに合わせて三菱時代にはなかった約6.4ミリの極薄フレームを採用し、タッチ式の操作キーも搭載した。
それでいて全体的なボディデザインはDiamondcrystaのイメージを受け継いでおり、旧三菱ディスプレイのユーザーにとって、有力な買い替え候補が加わったことは朗報だ。
今年はNVIDIAの「G-SYNC」を搭載したディスプレイが登場したことも、ゲーミングディスプレイ業界の大きなトピックだ。G-SYNCはGPUの描画に合わせてディスプレイのリフレッシュレートを動的に変更させる技術であり、ゲームプレイ時に問題となる入力遅延、ティアリング(1画面に複数フレームが表示されて、画像が崩れたり、ちらつく現象)、描画のカクつきを抑える効果がある。
このG-SYNC搭載ディスプレイの展開に積極的なメーカーの1つがAcerだ。特に日本エイサーが10月に国内で発売した28型モデル「XB280HKbprz」は、G-SYNCを装備しながら、3840×2160ピクセルの4K液晶パネル(ただしTNパネル)も盛り込んでおり、プレミアムなゲーミングディスプレイとなっている。
そもそも4K解像度でPCゲームを楽しむということ自体マシンスペックのハードルが高いため、G-SYNC搭載で4Kのゲーミングディスプレイというのはやや時期尚早な感もあるが、実売価格は8万円台と安く収まっており、今後のトレンドを先取りした手ごろな高性能ディスプレイとして注目できる存在だ。
なお、今回は単体ディスプレイ製品のアワードなので本来は対象外となるのだが、アップルの「iMac Retina 5Kディスプレイモデル」も高品位な表示環境を備えているという点で見逃せない。
まだ5Kの60Hz表示に対応したPC環境が整っていないとはいえ、5Kディスプレイを内蔵して最適化した液晶一体型デスクトップPCの形で販売してしまえば、他機器との接続に配慮する必要がないため、互換性問題は回避でき、製品としての完成度は高まる(映像入力端子がないのは惜しいが)。
液晶一体型デスクトップPCで製品化したこともあって、先に紹介したデルのUP2715Kより早く発売できており、このタイミングで世界初の5Kディスプレイ搭載PCをワールドワイドで展開している状況なのだから、さすがはアップルと言ったところだ。
これを受けて、2015年からはWindowsの液晶一体型PCでも、高画素密度化のトレンドが加速すると予想される。
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