―― 液晶テレビから始まり、最近はゲーム色を強めているFORISシリーズですが、現在におけるシリーズ全体のコンセプトを聞かせてください。
小林氏 マルチユースのコンシューマーディスプレイ、このコンセプトが根底にあり、最近ではゲーミングディスプレイとしての利用に主眼を置きつつあります。FORISではほかのEIZOディスプレイと異なる考え方で、映像の表現力に注力してきました。その中心にあるのが、FORIS FS2434にも搭載している「Smart」機能です。
―― 現状の製品ラインアップは、FORIS FG2421とFORIS FS2434の2モデル展開ですが、それぞれの位置付けはどう違いますか?
小林氏 FORIS FG2421はFPS(First Person Shooter:一人称視点のシューティングゲーム)をメイン用途にしており、プロゲーマーの方に安心してそのスキルを存分に発揮していただける240Hz駆動対応などの作り込みをしています。
一方、今回の受賞製品となるFORIS FS2434は、そこまでプロゲーマー仕様に特化した設計ではなく、一般的なゲーム用途をはじめ、幅広いユーザーニーズを考えて商品企画をしました。
―― FORIS FS2434の大きな特徴となるSmart機能は、競合機種に対してどのようなアドバンテージがあるのでしょうか?
小林氏 まず大前提として、EIZOディスプレイは工場出荷時に液晶パネルの個体差を吸収すべく1台ずつ個別調整を行っています。つまり、忠実な再現性を備えるというベースがあります。そこに加えて、FORISとして重視しているのは、ゲームにおいては「勝つこと」です。そして、臨場感や没入感というエッセンスも大事にしています。
FORIS FS2434の前モデルとなるFORIS FS2333では、初めて「Smart Insight」という機能を開発して盛り込みました。これは人間の視覚特性に基づき、自動的に暗部を明るく見やすく表示するようにした機能です。
自然界は0ルクスから数万ルクスと非常に明暗差が激しい環境ですが、その広大なダイナミックレンジを最大輝度250カンデラ/平方メートル程度のディスプレイに表示しようとすると、どうしても暗いところが黒くつぶれて、実際に肉眼で世界を見た場合と違った見え方になってしまいます。それをディスプレイ側で自然な見た目で補う仕組みとして、Smart Insightという提案をしたわけです。
その次に新モデルのFORIS FS2434で何を目指したかですが、我々は色味に注目しました。自然界における実際の見え方をディスプレイで表現するという段階から、明るさだけでなく、色味というエッセンスを加えて、ゲーム世界での視認性をより高め、より臨場感ある新しい表現を狙っています。これが「Smart Insight 2」です。ゲーム世界は自然界と違うため、EIZOなりの着色を加えて「勝ちやすくする」ための表現するという1歩進んだ提案になります。
ただ、Smart Insight 2でどれくらい着色し、どのように演出すればいいのか、その案配は開発で非常に苦労しました。技術的には、色相のズレや色飽和を防ぎながら色を濃く表現できることが優位性となりますが、その加減については、さまざまな映像コンテンツを表示して目視で確認しながら決めていきました。結果として、他機種では表現できない独自のゲーム映像が体験できるように仕上がっています。
―― 特定のゲームタイトルとしては「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」(FF14)の推奨認定を取得しています。どういった点が評価されたのでしょうか?
小林氏 これはSmart Insight 2とは逆の考え方です。FORIS FS2434は忠実な色再現をベースとしたEIZOディスプレイの一員なので、標準的な色空間であるsRGBのカラーモードを備えています。この忠実な色再現がスクウェア・エニックス様独自の検証基準を満たし、FF14の高精彩なグラフィックス表現に適しているということで、推奨認定を受けています。
クリエイターやユーザーによっては当然、自然な表現を望むニーズもあるので、FORIS FS2434ではSmart Insight 2のゲームモードによる「勝つためのゲーム映像表現」とsRGBモードによる「忠実なゲーム世界の再現」、どちらにも対応できるよう作り込んでいます。Smart Insight 2の強度は段階的に調整できるので、ほかの設定も含め、いろいろアレンジしてお使いいただくのがおすすめです。
また、FORIS FS2434は多目的に使えるエンターテインメントディスプレイなので、ゲームモードとそれ以外のカラーモードではSmart Insight 2の挙動を変えました。ゲームモードではより演出性を高め、視認性アップを図れます。ゲームモード以外のカラーモードではその演出が不自然に見えることもありますので、カラーモードごとに調整を変えました。
―― FORIS FG2421はゲームに特化した画作りとして、プロゲーマーチームと共同開発していますが、FORIS FS2434についてはいかがでしょうか?
小林氏 画作りについては、ゲーム向けの階調表現や特殊なガンマといった部分でプロゲーマーチームの意見を参考にしています。それに加えてFORIS FS2434では、プレイするゲームやユーザーの好みに応じて、さまざまなニーズに対応できるよう調整幅を持たせているのが特徴です。
こうした調整の柔軟性を生かした機能がWindows専用ソフトウェアの「G-Ignition」です。ユーザーがゲームをプレイしながらキーボードとマウスでディスプレイの各種設定を素早く行えることに加えて、設定した内容を独自の「調整ファイル」として、インポート、エクスポートできるようにした点がこれまでにない特徴になります。
一方、画質の調整幅が広いことは大きなメリットではあるのですが、どのように触っていいのかが分からないという方も少なからずいらっしゃいます。そこで設定の見本となるように、プロゲーマーが実際に使っているG-Ignitionの調整ファイルを専用サイト「jp.gaming.eizo.com」にて無料でダウンロードできるようにしました。
FORIS FS2434の購入後に調整ファイルをダウンロードしてインポートすれば、直ちにプロゲーマーと同じ画面設定でゲームをプレイできますし、そこからの調整カスタマイズもしやすくなります。現在、日本と海外でスポンサードしている合計4チームの調整ファイルを公開中です。チームメンバーそれぞれが調整ファイルを公開していますので、相当な数になります。
荒井氏 G-Ignitionは基本的にScreenManager Proがベースのソフトウェアですが、調整ファイルのインポートとエクスポートは独自の機能です。FlexScanは個人ユースを想定していたため、こうした機能は不要でしたが、ゲームの世界ではチームを組んで大会などでプレイする場合もあるため、チーム内でカラー設定を統一でき、プロと同じカラー設定で戦えるよう、インポートとエクスポートの機能を追加しました。
また、G-Ignitionはゲームプレイ中に素早くキーボードショートカットでディスプレイのカラー設定を切り替えるような使い方も想定しています。個人ユーザー向けの製品ではDDC/CIでディスプレイ制御を行う製品が増えていましたが、DDC/CIは通信速度が遅いことから、キー入力から画面の設定反映までのタイムラグが生じてしまう問題がありました。そこで、FORIS FS2434ではUSB接続を採用しています。USB接続ならば、ユーザーの操作と画面反映のレスポンスが違和感なく高速に行えます。ここも隠れたこだわりポイントです。
―― 一般ユーザーが作った調整ファイルを共有できるような仕組みは検討されていますか?
小林氏 そういったニーズがあることは認識しているので検討中です。今後もColorEdgeとは違った、ゲームのカラーマネジメントという考え方を広めていければと考えています。
―― FORIS FS2434はフレームレスの新デザインも目を引きますね。
小林氏 ゲームを主眼としたディスプレイとして、よりスタイリッシュに見せられることからフレームレスデザインを採用しました。
実用面ではこのデザインによって、画面を大きくしながら設置のしやすさも向上しています。画面サイズはFORIS FS2333の23型から23.8型に大きくなりましたが、横幅はFORIS FS2333より5.6ミリ短く仕上げることができました(FORIS FS2434の幅は539.4ミリ)。
また、マルチディスプレイでユーザーを覆うようなゲームプレイ環境の提供も想定しており、その際にノイズとなる額縁を極力省くことで、FORISが目指す臨場感や没入感の向上を狙っています。ボディの背面にはハンドルも設けているので、片手で持ち上げて簡単に移動することも可能です。スピーカーのデザインについても、横にマルチディスプレイで並べた場合に違和感がないようデザインを工夫しました。
―― これだけフレームが薄いと、機構設計も苦労されたのではないでしょうか?
小林氏 確かにフレームレスデザインでは額縁の幅が非常に細くなりますので、これまでと同じように作ると強度に問題が生じます。厚みがないと強度が下がり、筐体にゆがみが発生し、部分的に隙間ができてしまうため、隙間なく高精度に組み上げるよう機構設計の担当は苦労しました。
結果としてFORISとして品質基準を満たしつつ、ゆがみや隙間などがないフレームレスデザインのボディを実現できています。
―― ゲーム以外の用途はどれくらい想定されていますか?
小林氏 FORIS FS2434はゲーム用途を主眼としつつ、マルチに使えるのも特徴です。実際、プロゲーマーの方でも、ゲーミングディスプレイをWeb閲覧や映画鑑賞に活用されているという話を聞きます。FORIS FS2434は、エイターテインメントディスプレイを標ぼうしているので、当然マルチユースで満足いただけるものを目指しました。
例えば、シネマモードはユーザーの方が手動調整しても同じ画質にならないような手を加えており、シネマ独自の色表現にこだわりつつ、コンテンツの遠近感を出すような高画質化処理も入れています。これらは過去のFORIS TVで培った技術も生かされている部分です。
それ以外の画質面ではブルーライト低減モードによる疲れ目対策といったFlexScan譲りのトレンドも盛り込んでいます。
―― 今後のFORISはどのように進化していくのでしょうか?
小林氏 今後も視認性にはこだわっていきたいです。FORISはマルチユースのディスプレイなので幅広くご利用いただきたいのですが、新しい視認性向上技術が使いづらかったり、難しかったりすると、無駄になってしまいます。そこで、使いやすさも伴った視認性向上技術を一層深めて、オリジナリティをうまく出していきたいです。
以上、FlexScan EV3237とFORIS FS2434の開発者インタビューをお届けした。いずれも方向性が違うモデルながら、工場での個別調整による色再現性の高さをベースとして、対象ユーザーに合わせて独自のアレンジを加えることで、他に類を見ない高品位なディスプレイ製品を実現していることが改めて印象に強く残った。
国内のディスプレイメーカーが激しい価格競争に見舞われる中で苦戦し、市場から撤退する企業も見られる中、EIZOがその強みを発揮し続けられるのは、約30年もの間に培ってきた差異化技術と、エンジニアによる実直な製品開発への取り組みが発揮されている証左と言える。
こうした一朝一夕ではマネできない優位性の先に、EIZOディスプレイが何を目指すのか。今後の同社製品にも大いに期待したい。
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提供:EIZO株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2014年12月25日
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