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» 2015年01月15日 11時00分 UPDATE

SOHO/中小企業に効く「ビジネスインクジェット」の選び方(第1回):「ビジネスインクジェット」は家庭向けプリンタと何が違うのか? (1/2)

ページプリンタに比べて低価格で省電力などの利点が評価され、近年法人でのシェアを伸ばしつつあるのがビジネスインクジェットプリンタだ。その選び方を紹介する本連載の第1回目は、製品選びの基本ポイントをチェックしていく。

[山口真弘,ITmedia]

仕事で使うプリンタとしても存在感が増してきた「インクジェット」

 インクジェットプリンタと言えば、写真や年賀状などの印刷に使われる家庭用製品のイメージが強いだろう。同様にオフィスで使われるビジネス用プリンタと言えば、レーザー/LED方式を採用したページプリンタの印象が強く、「インクジェットプリンタは家庭向け、ページプリンタはオフィス向け」といった区分が、知らず知らずのうちに頭の中にできてしまっている人も多いのではないだろうか。

 しかし昨今は、オフィスでもカラー複合機を中心にインクジェット方式が選択されるケースが増えつつある。特にSOHOレベルでは、スキャナ/コピー/プリンタ(製品によってはFAXも)が一体になったコンパクトなインクジェット複合機を導入している例が多い。同時に、個人宅にも設置しやすい安価で小型のページプリンタが増えており、印刷方式のメリットとデメリットを見つつ、垣根を越えて導入が進みつつある状況だ。冒頭で述べたような区分は、もはや過去のものと言える。

tm_1501_IJP1_01.jpg エプソンのA3ノビ対応ビジネスインクジェット複合機「PX-M7050F」。インクジェット方式の利点を生かしつつ、ページプリンタ(レーザー/LED方式)のよさも採り入れており、オフィスで即戦力となる製品だ。こうしたビジネスに最適化したインクジェットプリンタ/複合機が増えつつある

 その牽引役を果たしているのが、今回紹介する「ビジネスインクジェットプリンタ」なるカテゴリだ。

 ビジネスインクジェットプリンタ(ビジネスインクジェット)という呼称は、それらを販売しているメーカーによるもので、必須仕様が定義付けられているわけではないが、ともあれ家庭向けインクジェットプリンタとは異なるカテゴリであるという点では、おおむね認識が一致している(もっとも、価格比較サイトなどでは家庭向け製品とまとめて扱われているケースもあり、製品を探すにはやや難があるのが現状だ)。

 このビジネスインクジェット、ページプリンタに比べて大量部数の印刷速度では不利だが、本体価格が安く、消費電力が低いなどの特徴から、コスト削減に悩む中小企業/SOHOにとってはまさに福音といえる存在だ。もっとも、ページプリンタとは特性が異なることから、向き不向きをきちんと把握しておかないと、かえって使いづらくなったり、ビジネスの効率を落としてしまう可能性もあり得る。

 今回は、こうしたビジネスインクジェットの特徴について、まずは家庭用インクジェットプリンタとの違いを中心に見ていくことにしよう。

同じインクジェットでも印字特性は家庭用とまったく異なる

 自宅のインクジェットプリンタで印刷するにあたっては、普段はコピー用紙などの普通紙を使い、写真だけ専用光沢紙を使っている、という人は多いのではないだろうか。専用紙を使えば紙焼き写真と見まがう高いクオリティで印刷できるが、どうしてもコストがかかってしまう。では普通紙はどうかというと、コスト的には有利な半面、専用紙と比較すると発色がいまいちで、また紙がインクを吸って波打ってしまったり、裏写りしてしまいがちだ。

 一方、ビジネスインクジェットでは、家庭用インクジェットのこうした「常識」は、いったん捨て去る必要がある。というのも、ビジネスインクジェットで用いられているインクは、その多くが「顔料インク」を採用しており、「染料インク」を主に用いる家庭用のインクジェットとは、その印字特性が大きく異なるからだ。

 ビジネスインクジェットで主に使われる顔料インクは、染料インクと比較して、普通紙でも紙にあまり染み込まず、表面近くで定着する特性がある。これにより、染料インクで普通紙に印刷した場合と違い、インクの黒が濃く出力され、用紙がふやけるように波打つこともほとんどない。マーカーで線を引いた場合はもちろん、万一の水ぬれの際もにじむことがほとんどないので、ビジネス用途にはうってつけだ。

 また染料インクと普通紙の組み合わせは裏写りしやすいため、両面印刷では注意が必要だが、顔料インクを用いたビジネスインクジェットは裏写りが抑えられ、実用的なレベルで両面印刷が利用できる。結果として、コスト削減に有利に働くというわけだ。

tm_1501_IJP1_a.jpg 用紙上における顔料インクと染料インクの違い。画像はキヤノンの製品サポートページより ※画像のクリックでキヤノンの製品サポートページが開きます
tm_1501_IJP1_b.jpg ビジネスインクジェットで使われる顔料インクは、強い耐水性で水性マーカーにもにじみにくい。画像はエプソン「PX-M7050」シリーズの例。 ※画像のクリックでPX-M7050の製品紹介ページが開きます

 もちろん、よい点ばかりではない。家庭向けインクジェットの染料インクは専用紙での色表現や光沢感に優れ、6色インクやグレーインクなどを採用して中間階調の表現を強化するなど、高画質な写真印刷が可能だが、通常4色構成(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の顔料インクはこうした専用紙での発色や細かい階調の表現があまり得意ではない(フォト向けには広色域の顔料インクを多数搭載し、色再現性や階調性に秀でたインクジェットプリンタも存在する)。

 ただし、顔料インクは紙の表面近くで定着するため、普通紙印刷での発色や黒文字のシャープさでは、染料インクより優位に立ち、多少品質のよくないコピー用紙でも安定した印刷品質が得られる。つまり、プレゼン資料で多用される着色グラフや、背景に敷かれた薄い色やパターンなど、オフィス文書にありがちな普通紙へのベタ塗り中心の表現はむしろ得意である。そうした特性上も、ビジネスユースに向いているというわけだ。

 ちなみにビジネスインクジェットと言えば、大半が顔料のインクを採用しているが、ブラックのみ顔料で、カラーの3色は染料といったモデルも存在する。同様に家庭向けインクジェットプリンタも染料インクのモデルと顔料インクのモデルが混在していたりと、100パーセントが「ビジネス=顔料、家庭用=染料」というわけではない。

 しかし、ビジネスインクジェットでは家庭向けインクジェットと異なる画作りをすることで、普通紙の印字や図版を見やすく出力するといった工夫も行われている(家庭向けは写真重視の画作りが多い)。

tm_1501_IJP1_c.jpg ビジネスインクジェットでは単に顔料インクを採用するだけでなく、普通紙で見栄えのするカラー文書が出力できるよう、画像処理を工夫した製品も見られる。例えば、エプソンのPX-M7050シリーズなどでは、カラーマッピングの刷新により発色を高めている ※画像のクリックでPX-M7050の製品紹介ページが開きます

 このように、顔料インクを使っていなければビジネスインクジェットを名乗れないわけではなく、単に今多くの製品がそうした傾向にあるというだけなので、そこは誤解のないようにしていただきたい。製品選びの際にはWebページやカタログを見て、そのインクジェットプリンタがビジネス向けか、家庭向けなのかを確認することが必要だ。

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