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今さら聞けない「ビジネスインクジェット」とページプリンタの違いSOHO/中小企業に効く「ビジネスインクジェット」の選び方(第2回)(1/2 ページ)

» 2015年02月10日 11時30分 公開
[山口真弘,ITmedia]

←・SOHO/中小企業に効く「ビジネスインクジェット」の選び方(第1回):「ビジネスインクジェット」は家庭向けプリンタと何が違うのか?

ページプリンタとは何が違うの?

 SOHOや中小企業を中心に導入が進んでいる「ビジネスインクジェットプリンタ」。前回は家庭用インクジェットプリンタとの違いを見てきたが、それでは従来のオフィス用プリンタで主役だったレーザー/LEDプリンタなどのページプリンタ(複合機も含む)とは、どのような特性の違いがあり、オフィスでどう使い分けるべきなのか。今回はこうした現場レベルでの使い分けのコツを見て行くことにしよう。

 なお、本稿で述べるビジネスインクジェットとページプリンタの違いは一般的な傾向であり、メーカーや製品によって異なる場合もある。実際の製品選定では、個別の製品仕様をよく比較して検討することをおすすめしたい。

印刷速度は?

 まずはビジネスプリンタで重視すべき印刷速度だが、一般に大量部数の印刷を行う場合は、ページプリンタのほうが有利だ。ページプリンタはいったん出力が開始されてからの高速印刷が得意であり、例えば会議資料で同じ書類を何十〜何百部も刷るといった用途では安定した高速出力が望める。特に30ページ/分を超えるような高速印刷を求めるならば、ページプリンタが最適だ。

 もっとも、1枚目が印刷されるまでの時間、つまりファーストプリントの速さでは、ビジネスインクジェットのほうが優位に立つ。ページプリンタは待機時から復帰して印刷を開始するまでに、定着器が一定温度に加熱されるのを待つ必要があるからだ。そのため、印刷に要する時間はほんの数秒だが、準備が整うまで30秒近く待たされるといったケースが起こりうる(この加熱にかかる時間はメーカー/製品によって異なる)。

 その点、ビジネスインクジェットではこのウォームアップ時間が必要なく、待機時から素早く印刷を開始できる(印刷前にプリントヘッドが本体内にインクを吐出し、準備を行うなどの時間がかかる場合もある)。それゆえ、カタログスペック上の印刷速度だけを比較するとページプリンタのほうが高速もしくは同格に見えても、少ない枚数を刷る場合はビジネスインクジェットが高速、ということが起りがちなのだ。

 したがって、オフィスでの使い分けとしては、ページ数が少ない文書はビジネスインクジェットで印刷し、連続して大量印刷を行う場合のみページプリンタを用いるようにすると、業務効率の改善が図れる。もし、業務スタイルそのものが大量部数印刷を必要としないのであれば、ページプリンタをすべてビジネスインクジェットに置き換えるというのもありだろう。

 ちなみにビジネスインクジェットでは、印刷速度そのものも、プリントヘッドの進化や用紙搬送技術の工夫によって高速化を図っている製品も見られる。製品のグレードによってかなりの差があり、ローエンドの製品になるとさすがに遅さを感じるケースもあるが、今後製品が進化していくにつれて、印刷速度もページプリンタとの差を詰めていくことが期待される。

エプソンのA3ノビ対応ビジネスインクジェット複合機「PX-M7050F」(左)とA3ノビ対応ビジネスインクジェットプリンタ「PX-S7050」(右)。いずれもカラー/モノクロのファーストプリントが7秒と高速だ。新開発のPrecisionCoreプリントヘッドにより、連続印刷もカラー/モノクロとも24ページ/分と、こちらもページプリンタ並に高速化されている

印刷品質は?

 印刷品質については、どこまで許容できるか個人差も大きいだろう。主にビジネスシーンで求められるのは、普通紙に対する文字や画像の印刷品質だ。その点、ページプリンタは普通紙や再生紙でもシャープでにじみのない印刷ができる。

 一方のビジネスインクジェットは、ページプリンタに比べると製品によって普通紙印刷の品質にばらつきがある。前回紹介した通り、ビジネスインクジェットでは顔料インクの採用や画像処理技術の向上が進んでおり、こうした製品では業務利用でも十分な印刷品質が得られるが、染料インクの製品はにじみや裏写りが発生しやすい。

ビジネスインクジェットでは単に顔料インクを採用するだけでなく、普通紙で見栄えのするカラー文書が出力できるよう、画像処理を工夫した製品も見られる。例えば、エプソンのPX-M7050シリーズなどでは、カラーマッピングの刷新により発色を高めている ※画像のクリックでPX-M7050の製品紹介ページが開きます

1枚あたりの印刷コストは?

 印刷速度とともに重要な印刷コストは、特にカラー印刷ではビジネスインクジェットが優位に立つ。ビジネスインクジェットを推進するエプソンでは、「プリントコスト1/2」をいうキーワードで、そのメリットを強調しているほどだ。

 例えば、同社のA3ノビ対応カラービジネスインクジェット複合機「PX-1700F」はA4カラーが約7円/モノクロが約2.4円で印刷できるが、同社のA3カラーページ複合機「LP-M5300」はA4カラーが約15.5円/モノクロが約3円となっている。

 つまり、少部数でしかもカラーの印刷を行う場合、ビジネスインクジェットは高速かつ低コストで出力できると言える(後述する消費電力も低い)。

消費電力は?

 消費電力の低さは、ビジネスインクジェットが圧倒的に有利だ。ページプリンタは数あるOA機器の中でも電気代を食う存在であり、ビジネスインクジェットと比較すると数倍以上といったことも珍しくない。

 オフィス環境での1週間の消費電力量の目安にあたるTEC値でいうと、ページプリンタの現行製品はおおむね2〜5kWh(キロワットアワー)というのが一般的な数値だ(キヤノン「Satera」シリーズのように、独自のオンデマンド定着技術で複合機でも1kWhを切るようなページプリンタもある)。

 これに対してビジネスインクジェットのTEC値は、ほとんどの製品が0.3〜0.4kWhであり、消費電力量が比較的多い複合機タイプでも、0.5kWhを超える製品は多くない。同等機能を持つページプリンタと比較すると数分の一以下で済む。そのため、現在設置されているページプリンタの一部をビジネスインクジェットに入れ替えるだけでも、相当な節電効果が得られる。入れ替える台数が多ければ、それこそ電気代が半額、というのも不可能ではない。

プリンタにおけるTEC値の算出方法

  • 概念的1週間の消費電力量(kWh)

※概念的1週間は、稼働とスリープ/オフが繰り返される5日間+スリープ/オフの2日間で構成

※基準値は、製品速度(印刷または複写の速度)に基づき算出


キヤノンのA4カラーページ複合機「Satera MF8570Cdw」は、レーザー方式ながらTEC値が約0.81kWhと低い(左)。キヤノンのA4インクジェット複合機「MAXIFY MB5330」は、TEC値が約0.3kWhとさらに低い(右)
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