高画素・高画質で視差の小さい液晶と、使いやすく仕上げられたペン──ここまで、液晶ペンタブレットとしての性能を左右する基本的な部分を見てきた。しかし、VAIO Z Canvasの魅力はそれだけではない。“とがったPC”を出し続けてきたPCメーカーならではの工夫が随所に見受けられる。
まず圧倒的なのはタブレットPCとしては考えられないマシンスペックだ。筆者が使わせてもらった試作機は、4コア/8スレッド対応の第4世代Core i7 Hシリーズを搭載していた。通常ハイパフォーマンスの大画面ノートPCに使われるTDP(熱設計電力) 47ワットのCPUをこの小さなボディに詰め込めたのは、VAIOが誇る「高密度実装基板」と「放熱設計技術」を融合させたコア技術「Z ENGINE」のおかげという。
さらに、同社が「第2世代High speed SSD」と呼ぶPCI Express x4接続の非常に高速なSSD(しかも最大1Tバイトまで選べる)、最大16Gバイト搭載可能なメモリも採用し、中途半端なデスクトップPCよりもハイパフォーマンスな構成となっている。ちなみに今回試用した試作機は8Gバイトメモリ、512GバイトSSDの構成だった。
タブレット本体のインタフェース類も充実しており、フルサイズのUSB 3.0×2、HDMI出力、Mini DisplayPort出力、ヘッドフォン出力、SDXC対応SDメモリーカードスロット(UHS-II)、1000BASE-Tの有線LAN(開閉式コネクタ)などを搭載する。試作機にはIEEE802.11acの無線LAN、Bluetoothも内蔵していた。OSは64ビット版Windows 8.1 Pro Updateだ。
筆者は普段セルシスの漫画作成ソフト「CLIP STUDIO PAINT EX」を使って作業をしており、今回も試作機に同ソフトの体験版を入れて絵を描いたため、中村さんが指摘していた「Corel Painter」での多少のもたつきなどは確認できなかった。
CLIP STUDIO PAINTを使っている範囲では、ペンのもたつきといったストレスを感じることはまったくない。同モデルをメインマシンとして考えたときにネックになりそうなのは、グラフィックスがCPU内蔵タイプであるということだが、試作機の場合では統合グラフィックスの上位版であるIris Pro Graphicsが搭載されており、ある程度の3D描画性能も期待できる。
そして、筆者がマシンパワー以上に驚かされたのは、パワフルなプロセッサを採用しているにもかかわらず静粛性が高いことだ。試作機が採用するCPUはTDPが47ワットで、一般的なUltrabook向けCPU(TDP 15ワット)より放熱がはるかに難しいはずだが、ファンは非常に静かだ。これがZ ENGINEによるハイパワーと静粛性の両立という恩恵なのかもしれない。
仮に製品版でCPUなどの構成が多少変更されるとして、この辺りのバランスがどう変わるかは分からないが、試作機の完成度からすると放熱対策は期待していいと思われる。
数値では語れないボディの工夫にも好感が持てる。同機が採用したスタンドは、画面を立てたときにヒンジが底側にくるという珍しいスタイルのスタンドで、角度をリニアに変えられるだけでなく、絶妙な“硬さ”を備えている。執筆のために手を置くといった程度の力では角度が変わらず、好きな角度で絵の執筆ができる。
ボディ上面に搭載した2つの物理ボタンも、クリエイターを意識したものだ。例えば右側のボタンは、タッチパネル機能のオン/オフを切り替えられるようになっている。パームリジェクション機能が用意されているとはいえ、タッチの誤作動を気にしながら作業をするのは絵描きにとってストレスになりがち。そういうときにタッチ機能をすぐさまオフにできる同ボタンが活躍する。
一方、左側のボタンを押すと、各種のショートカットキーが画面上に現れ、キーボードを使わずにある程度の操作ができるようになっている。
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