現在のところ、Spartanに関して分かっている機能は、1月のデモで紹介されたものがほぼすべてだ。Windows 10 TPでSpartanが提供されていないことが大きな理由だが、Microsoftでは今後Spartanの情報を主要イベントで何回かに分けて提供していくとしている。
まずは4月29日〜5月1日に米カリフォルニア州サンフランシスコで開催される「Build 2015」、次に5月4〜8日に米イリノイ州シカゴで開催される初のイベント「Microsoft Ignite」、そして米カリフォルニア州にあるMicrosoft Silicon Valley Campusで5月5〜6日に開催される「Windows 10 Web Platform Summit」というイベントの3つだ。
位置付け的には、BuildはSpartanの概要全般とWebアプリケーション開発、Igniteは企業向け、Web Platform SummitはWeb標準とWeb開発に的を絞ったイベントになると予測する。今後発表された内容は、本連載で順次フォローしていく予定だ。
この辺りの予告は3月24日に開催された「Project Spartan Developer Workshop」を紹介するIEBlogの中で行われているが、ここでは同時にSpartanとIEに関する重要な方針変更が発表されている。
冒頭でも説明した通り、当初Windows 10では2種類のレンダリングエンジン(EdgeHTMLとMSHTML)が搭載され、搭載された2つのWebブラウザ(SpartanとIE11)がともに好きなレンダリングエンジンを呼び出せる方式となっていた。
だが新方針では「EdgeHTMLはSpartanのみ」「MSHTMLはIE11のみ」という形でレンダリングエンジンとWebブラウザの対応が分けられ、Spartanは新しい標準ブラウザ、IE11はレガシーサポート専用ブラウザという役割が明確になった。
これはWindows Insider Programや開発者からのフィードバックを得ての決定とMicrosoftは説明するが、「Project Spartan is our future.(Project Spartanは我々の未来だ)」と明言するように、今後の開発リソースはSpartanとEdgeHTMLに集中することになり、「Windows 10におけるデフォルトブラウザ」として機能するようになる。
ただし、基本的な動作メカニズムは以前のリポートの内容と大差ない。以前の方針では1つのブラウザにEdgeHTMLとMSHTMLの2種類のレンダリングエンジンが搭載されており、アクセスしたWebサイトによって両者を切り替える方針が採られていた。
基本的にはEdgeHTMLがデフォルトとなり、Document Mode(Webサイト側でIEバージョンを指定するメタタグをあらかじめ埋め込んでおくことで、最新のIEでも過去のバージョンの動作に則ったレンダリング方式に切り替えてWebページを再現するモード)での後方互換性を維持する必要がある場合にMSHTMLが(自動もしくは明示的に)選択されるといった具合だ。
これが新方針では両者が完全に分けられたため、基本的にはSpartanをデフォルトのWebブラウザとして使用し、必要に応じてIE11を起動して旧バージョンに準拠したWebサイトへとアクセスする形になる。
実際にはほとんどのサイトがSpartanの利用で済み、IE11が必要とされるのはごく一部のレガシーアプリケーションが動作する企業のWeb環境に限定されるだろう。このサイトに応じたブラウザの切り替えは「グループポリシー」で行われ、企業システムの管理者があらかじめ設定した特定サイトへのアクセスが発生した場合に、SpartanではなくIE11が呼び出される方式となる。
IEは今後IE11で打ち止めになるとみられ、Windows 10における実装も「Windows 7/8.1におけるIE11の動作を忠実に再現すること」を主眼としている。Spartanの正式名称が何になるかは不明だが、1995年のWindows 95デビュー以来、Microsoftのインターネット戦略とともに歩んできたIEの歴史は、いよいよ20年のときを経て終わることになるのかもしれない。
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