以上の結果から、新しいMacBookが搭載する12型Retinaディスプレイは、13インチMacBook Pro Retinaの13.3型Retinaディスプレイとほぼ同じsRGB相当の色再現性が得られることが分かった。プロセッサの処理性能ではMacBook Airに劣る新しいMacBookだが、画面の表示品質は圧倒的に勝っており、やはりRetinaディスプレイの採用は大きい。
昨今のアップルは一部の例外を除いて、Retinaディスプレイの色域をsRGBにターゲットしているようで、色温度など多少のバラツキはあるものの、今回参考として計測結果を掲載したタブレットのiPad Air 2に加えて、実はスマートフォンのiPhone 6 PlusとiPhone 6もsRGB相当の発色に設計されている(ちなみにiMac Retina 5Kディスプレイモデルは、sRGBをベースとしながら、それを上回る色域を確保している)。
つまりこれは、MacBookとiPad、iPhoneを所有してシーンに応じて使い分ける場合、どのデバイスのRetinaディスプレイで見ても同じコンテンツが高精細かつほとんど同じ色で見られるということだ。これは簡単なようでいて、実は相当に難しい。OSとハードウェアの両方を手がけ、古くからColorSyncによるOSレベルでのカラーマネジメント機能に注力してきたアップルだからこそ、こうしたラインアップを整えることができたと言える。
実際のところ、PC、タブレット、スマートフォンをすべて展開しているメーカーはアップル以外にもあるが、「Retinaディスプレイ」など同一のブランド名を内蔵ディスプレイに付与し、PCでもスマートデバイスでも、ほとんど同じ業界標準の正確な色で画像データを映し出せるような製品ラインアップを構築できている例はほかにない。
大抵のメーカーは高画質なディスプレイを上位シリーズに採用することがあっても、ラインアップ全体で色再現性をそろえようという思想はなく、同一メーカーのPCとタブレットで色味が大きく異なることも普通だ。これではユーザーがせっかく同じメーカーでPCとスマートデバイスをそろえて連携させて使おうにも、体験レベルが下がってしまう。また、同じメーカーでPCを買い替えたら、発色傾向がまるで違うといったことも少なくない。
現状のアップル製品についても、iPad mini 3とiPad mini 2はRetinaディスプレイながら色域がsRGBよりかなり狭いという例外がある。ほかのモデルでも、液晶パネルの供給元の違いによって、発色傾向の差異が見られる場合もあるが、それでも他メーカーと比べれば配慮がなされており、一環した色再現ポリシーが貫かれているのは確かだ。
今回はディスプレイにフォーカスした検証を行ったが、こうした製品ラインアップ全体で共通のユーザー体験をもたらし、自然に連携して快適に使えるような仕組み作りはさすがの一言。アップルのこだわりとその強みを改めて実感させられた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.