新しいMacBookで話題の「USB 3.1 Type-C」はWindows PCをどう変えるか?鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/4 ページ)

» 2015年04月24日 14時00分 公開
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Type-Cは裏表だけでなく「向き」もない

 「(アップルの)USB-Cが、(USB規格としての)Type-Cと完全に同一か」という点は今後のさらなる検証が必要だが、「充電から周辺機器の接続までポート1つに集約」という豪気な設計思想を持った初のマシンとしてMacBookが登場したこともあり、これをベースにUSB 3.1時代のPCについて少し考えてみたい。

 MacBookにおけるUSB-Cは、「USB-C Digital AV Multiport アダプタ」と「USB-C VGA Multiport アダプタ」を介した場合に給電専用ポートになってしまうという制限があるが、本来であればこれ1つで給電から周辺機器接続まですべてを賄えることが特徴だ。

 いくつかのパターンが考えられるが、USB PDの給電機能を持ったUSBハブを中心に据え、ここにPC本体や周辺機器を接続するパターンが基本だと思われる。USBハブは単体で独立したもののほか、ディスプレイに内蔵したり、あるいは「ドック」のような装置でもいいだろう。タブレットPCであれば、「キーボードドック」を介して複数の周辺機器と接続するというシナリオも考えられる。「PC本体にはUSB Type-Cポートが1つしかなくても、ドックやハブを介して複数の周辺機器とシンプルに接続できる」というのがType-Cのメリットだと言える。

 ケーブルでつながってさえいれば相互通信が行えて給電もできるというのは、非常に便利でシンプルな仕組みだが、実はUSB本来の仕様では実現が難しかったものだ。USBではマスター/スレーブ(もしくは「Host/Peripheral」)型のアーキテクチャを採用しており、ホスト(Host)となるPCのようなマスターデバイスに周辺機器(Peripheral)となる複数のスレーブデバイスがぶら下がるツリー型の構造を取るようになっている。

 そのため、デバイスの序列に「向き」のようなものが存在し、ホストコントローラを持たないデバイスは上流に存在できない。例えばホストコントローラを持たないスマートフォンやタブレットにUSB経由でプリンタのようなデバイスを接続しても、その役割を果たすことはない。

 さらに言えば、USB経由で給電が可能な「USBバスパワー」の仕様では5ボルト×500ミリアンペア=2.5ワットの通電が可能だが、これは「ホスト→周辺機器」への給電を主眼としたものであり、逆向きは通常行えない。たとえ大容量バッテリーを持つタブレットがあったとして、これがホストコントローラを持ってマスター側のデバイスにならない限り、他の周辺機器の充電は行えない。

 このようにUSBに「向き」が存在することは、コネクタ規格にも現れている。現在USBには「Standard」と呼ばれる標準型、「Mini」「Micro」と呼ばれる小型の計3つのサイズがあり、さらに「Type-A」と「Type-B」という規格が用意されている。「Type-C」については、1種類しかサイズがない。信号線が追加されたUSB 3.0では、コネクタの金属端子の配置や数が若干変化しているが、それを除けば現状で7種類のコネクタ規格が存在する。

 Type-AとType-Bが存在している理由の1つは「デバイスの向き」に由来しており、ホスト側はType-A、周辺機器側はType-Bのようになっている。そのため、PCにスマートフォンやタブレット、プリンタなどを含む周辺機器を接続する場合、PCとは逆側のコネクタはStandard Type-BやMini Type-B、Micro Type-Bとなっているはずだ。

標準的なPCに接続するためのUSB Standard Type-A
プリンタなどの周辺機器に接続するのはUSB Standard Type-Bだ

 一方で、本来は周辺機器として利用していたスマートフォンやタブレットのようなデバイスに周辺機器を接続したいというニーズもある。

 典型的なものが「マス・ストレージ」などと呼ばれるUSBメモリやデジタルカメラ(のデータ吸い上げ)用途で、スマートフォンやタブレットの高機能化とともにマウスやキーボードを接続したいというケースが増えてきた。そこでデバイスがマスターにもスレーブにも、用途に応じて役割を変化させることが可能な「USB On-The-Go(OTG)」という仕様がUSB 2.0以降に盛り込まれるようになった。

 OTG対応デバイスはスマートフォンやタブレットに増えているが、マスターとスレーブのどちらになるかは「接続するUSBケーブル」によって決定されることが多い。例えば、ポートにMicro Type-A(Micro-A)のケーブルを挿した場合はマスターとなり、Micro Type-B(Micro-B)のケーブルを挿した場合はスレーブになるといった具合だ。

 プラグの受け側を「Receptacle」と呼ぶが、このようにType-AとType-Bの両方いずれかのプラグを同じポートに挿入可能な規格を「Mini-AB」「Micro-AB」などと呼び、OTG対応デバイスであることを示している。

タブレットに搭載されたUSB Micro-ABポートの例
Micro Type-BからUSB Standard Type-A(メス)に変換するUSB OTGケーブルは、スマートフォンやタブレットに周辺機器をつなぐ場合に用いることが多い

 その意味で、Type-CというのはこれまでのUSBを考えれば異質な規格だ。コネクタに裏表がないだけでなく、そもそも「マスター/スレーブ」のような「向き」が存在しない双方向通信が可能な規格となっている。

 向きが存在しないことはMacBookの仕様からも分かる。例えば、「29ワットのUSB-C電源アダプタ」と「USB-C充電ケーブル」をMacBookに接続した場合には「電源アダプタからMacBookに電気が流れる」ようになり、「USB-C - USB アダプタ」「USB-C Digital AV Multiport アダプタ」「USB-C VGA Multiport アダプタ」を使って周辺機器を接続した場合には「MacBookから外部デバイスに電気が流れる」ようになる。

 つまり、中心となるデバイス(この場合はMacBook)が存在せずとも、それぞれが相互通信できるようにするのがType-Cというわけだ。

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