さて、ずいぶん製品紹介の前に誌面を使ってしまったが、製品そのものは事前に予想したよりもずっと印象のよいものだった。
米Microsoft本社でSurface & Windows Hardwareセールス&マーケティング担当のジェネラルマネージャを務めるブライアン・ホール氏に筆者が質問したように、Surface 3で最大の懸念材料はパフォーマンスだ。
その点については前述したように、Surface Pro 3のCore i3モデルに対して、80%の能力を引き出せているというのがMicrosoftの主張だ。ベンチマークテストの具体的な結果は、別途編集部で計測してまとめる予定なのでここでは触れないが、Atomプロセッサの絶対評価における処理能力はともかく、体感的な速度が速い。
ホール氏はこれをMicrosoftによるWindowsの最適化が効いていると話していた。Atom x7に最適化しているか否かは別として、Windows 8以降のWindows OSは応答性を高める方向でチューニングされている。以前は処理能力をスループットとして向上させるアプローチだったが、操作に対して応答性を高めて処理能力が低いプロセッサでも体感速度を上げる努力をしているのだ。
またGPUへの依存度も高くなっており、ユーザーインタフェースのサクサクした感触はGPU速度に依存する割合が高い。この辺りもPowerVR系から第8世代のIntel HD GraphicsへとGPUが大幅強化されたAtom x7が効いているところだろう。
もっとも、使い続けていると体感速度が速い理由は「Turboモードで動く時間が長いことではないか?」と考えるようになってきた。というのも、実際に利用を開始した後、Outlookをセットアップし、メールの検索インデックスが作成されている間は、80%前後のCPU負荷が続く。このとき、Surface 3に搭載されているAtom x7は通常時の最大1.6GHzでほとんど動いておらず、Turboモード時の2.4GHzに近いクロック周波数で動き続けていたからだ。
熱設計の余剰分を短時間使って処理速度を上げるTurboモードだが、高負荷時でTurboモード動作をしているときのSurface 3は、確かに部分的に温かくはなっているものの、特別に熱さを感じるほどではない。Windowsそのものの応答性を優先した作り方、GPU強化、それにTurboモードの積極活用といったところが、Surface 3の使用感を高めている理由ではないかと思う。
ただし、使用感がよいからといって、絶対的な処理能力の高さを求めてはならない。Surface 3は従来の(Proではない)Surfaceシリーズとは異なり、フル機能のWindowsが動作し、個人向けモデルはOffice Home & Business Premium プラス Office 365 サービス(1年間)が標準添付される。
AdobeのCreative Cloudシリーズをインストールしてクリエイティブな作業を行うこともできれば、業務に必要なセキュリティソフトウェアやフロントエンドのツールをインストールして会社のシステムにも接続できる。またRAW現像を大量に行うといったことをしないのであれば、写真データを扱ううえでも不足はしない。
しかし、パワフルな作業をするのであれば、Surface Pro 3などを使うべきだ。Surface 3の価値は、このサイズ、薄さ、軽さで、あらゆるWindows用ソフトウェアが動作し、Type Coverを使えばPC的にも使える点にある。「タブレット端末を持ち歩くだけでは解決できなかった問題に、Surface 3ならば対応できますよ」ということだ。
そうした心構え……すなわち、「すべてのアプリケーションは動き、応答性がよく、オフィスワークやネットへのアクセスは快適にできますよ。でも処理容量のスループットが高いわけではないですよ」ということを分かって使うぶんには、とても快適な製品だ。
通信契約が必要なLTEモデルより、個人でもWi-Fiモデルが欲しいという声も聞こえるが、実際に使い始めると、LTEを内蔵していないSurface 3など考えられないほど自然に、当たり前になってくる。常にネットにつながっている状態が当たり前で、意識をしなくなるのだ。
もちろん、そうした使い方で「毎月7Gバイトの容量が十分なのか?」という議論はあるだろう。動画サイトなどを見続けなければ問題ないという考えもあるだろうが、Surface 3はWebサービス側から見るとPCであるため、モバイル向けではなく、PC向けのコンテンツや映像ストリームを送る。YouTubeだけを取り上げてみても、ビットレートが高く、通信容量の消費が大きいことを覚悟せねばならない。
しかし一方で、だからこそPCとしても使えるSurface 3のほうが快適なのだという言い方もできる。どのキャリアと契約するのか、MVNOなどの格安SIMサービスを利用するのかといった議論はさておき、LTEモデルを入手しておいて損はないというのが正直な感想だ。
ところで、まだ使い始めてから完全にバッテリーを空にしたことがないため、あくまで推測でしかないが(Surface 3のバッテリー情報は予想バッテリー駆動時間を示さない、残り容量だけを報告するタイプだ)、おおむね10時間、バックライト輝度を少し明るくしても8時間ぐらいはLTE通信をオンにしたままで使えそうだ。
また、インデックス作成がバックグラウンドで動いている中、出先でバッテリー運用もしてみたが、1時間に20%のバッテリーが減り続けた。つまりTurboモードが効くような状況でも、上記の数字を半分にしたところまでぐらいしかバッテリーを使わない。バッテリー性能に関しては信頼してよいと思う。
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