Cintiq使いの漫画家が「VAIO Z Canvas」を真剣にレビューする液晶ペンタブに新時代が到来!(5/6 ページ)

» 2015年06月07日 07時00分 公開

絵描きなら画面の「美しさ」にもこだわりたい

 液晶ディスプレイの美しさや色の正確さも、クリエイターにとっては見逃せないポイントだ。解像度2560×1704ピクセル、画素密度約250ppi(pixels per inch:1インチあたりのピクセル数)という高精細な12.3型ワイド液晶ディスプレイは、Adobe RGBカバー率95%という広色域も実現し、タブレットPCでは最高級の画質と言える。その良好な発色傾向は、鈴木氏のレビュー記事の後半で指摘されている通りだ。

 さらに、色温度を「D65(6500K)」と「D50(5000K)」に設定できたり、エックスライトの測色器「Color Munki Photo」を使ったカラーキャリブレーションもサポートしているので、微妙な色を正確に把握しながら作業できる。

 液晶ディスプレイのアスペクト比が3:2である点もポイントだ。紙のノートに近いアスペクト比であり、ワイドすぎないため縦画面での作業もしやすい。このアスペクト比のおかげで、12.3型という画面サイズからイメージするより、作業スペースは広く使える。

液晶ディスプレイは、アスペクト比が3:2であることもポイントだ。これは紙のノートに近いアスペクト比であり、ワイドすぎないため、縦画面での作業もしやすい
12.3型ワイド液晶ディスプレイは、解像度2560×1704ピクセル、画素密度約250ppiと高精細で、肉眼で画素を判別できないレベルだ。細い線がジャギーでギザギザに見えるようなこともない
デジタルフォトや印刷、デザイン業界でよく使われるAdobe RGBの色域を95%カバーしているのも異例だ。もちろん、Windowsやネットコンテンツで標準的なsRGBの色域は余裕でカバーしている
「VAIOの設定」ユーティリティではカラーマネジメントモードを設定できる。これも通常のタブレットやノートPCにはなく、プロのクリエイターを強く意識した仕様だ

 また、前述の通り「液晶保護シート」の貼り付けサービスがあり、これを利用すると画面がハーフグレアっぽい低反射仕様になるだけでなく、ペンの摩擦が高まって描き心地が変わる。筆者はツルツルとした描き心地が苦手なのだが、このシートを使うことでかなり描きやすくなった。

携帯できるペンタブレットPCとしては圧倒的なレスポンス

 マシンの処理性能もさすがの一言で、ひとたび電源ボタンを押せばOSの起動はメチャクチャに速く、グラフィックスソフトの起動もサクッと完了し、ファイルの作成や画像編集、変換して保存といった作業も軽快に進められる。

 なにせ、タブレットなのにCPUはTDP(熱設計電力)が47ワットで4コア/8スレッド対応のCore i7-4770HQ(2.2GHz/最大3.4GHz、6Mバイト3次キャッシュ)、メモリは最大16Gバイト(DDR3L-1600/デュアルチャンネル)、ストレージは512Gバイトもしくは1TバイトのPCI Express 3.0 x4接続SSDという爆速仕様なのだ(256GバイトSSDのモデルは速度で劣るSerial ATA 6Gbps接続となるので注意したい)。

 筆者は普段、27インチiMac(mid 2010・SSD換装済み)とCLIP STUDIO PAINT EXを使って作業をしているが、この環境と比較した限りはVAIO Z Canvasの処理性能に不満はない。このように、据え置き利用の液晶一体型デスクトップPCや大画面ハイスペックノートPCに匹敵する高性能(それどころかSSDはより高速)が、手軽に持ち出せる厚さ約13.6ミリ、重さ約1.21キロ(キーボード合体時は厚さ約18ミリ、重さ約1.55キロ)のA4ジャストサイズに収まっているというのが最大の強みだ。

 ライバルとなるワコムのCintiq Companion 2はもちろん、その他多くのタブレットデバイスを大幅に上回る処理性能の速さを誇り、現時点で世界最高性能のタブレットPCであることは間違いない。

 そして、これだけサクサクと動く一方で、ファンの音は非常に静かだ。もちろん、高負荷をかけるとファンの音に気付くが、音量は控えめで、日中はまず気に障ることはなかった。気温がかなり上がってきた季節でこのレベルというのは素晴らしい。ボディの発熱も上部の排気口付近は熱くなるが、画面に手を置きペンで描いていて困るようなことはなかった。この辺りは、VAIOのノウハウとプライドが詰まっているところなのだろう。

VAIO Z Canvasの内部構造。大きなファンを3基も内蔵し、プロセッサに装着した超薄型ヒートパイプを2本立体交差させたパワフルな冷却機構を独自開発した。大容量バッテリーを縦に配置したユニークなデザインだが、持った際の重量バランスは問題ない。コンパクトボディにTDP 47ワットの4コアCPUを内蔵できた背景には、VAIOが培ってきた「高密度実装技術」と「放熱設計技術」を組み合わせた「Z ENGINE」がある
上面には大きな排気口のほか、左右の端に前述したボタンが配置されている
下面には2つの細いスリットがあり、ステレオスピーカーを内蔵する
左側面には、ACアダプタ接続用のDC入力、開閉式の有線LANコネクタ、HDMI出力、Mini DisplayPort出力、SDXC対応SDメモリーカードスロット(UHS-II)、2基のUSB 3.0、ヘッドフォン出力端子が並ぶ。Mini DisplayPort出力により、4Kディスプレイにリフレッシュレート60Hzで表示して作業できる。外部ディスプレイと接続した際、ショートカットキーメニューから「ペンマッピング」の設定も簡単に行える
右側面には電源ボタン、音量調整ボタン、ペンホルダー装着用の穴が設けられている

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月26日 更新
  1. ワコムが有機ELペンタブレットをついに投入! 「Wacom Movink 13」は約420gの軽量モデルだ (2024年04月24日)
  2. わずか237gとスマホ並みに軽いモバイルディスプレイ! ユニークの10.5型「UQ-PM10FHDNT-GL」を試す (2024年04月25日)
  3. 「社長室と役員室はなくしました」 価値共創領域に挑戦する日本IBM 山口社長のこだわり (2024年04月24日)
  4. 「Surface Go」が“タフブック”みたいになる耐衝撃ケース サンワサプライから登場 (2024年04月24日)
  5. QualcommがPC向けSoC「Snapdragon X Plus」を発表 CPUコアを削減しつつも圧倒的なAI処理性能は維持 搭載PCは2024年中盤に登場予定 (2024年04月25日)
  6. 16.3型の折りたたみノートPC「Thinkpad X1 Fold」は“大画面タブレット”として大きな価値あり (2024年04月24日)
  7. アドバンテック、第14世代Coreプロセッサを採用した産業向けシングルボードPC (2024年04月24日)
  8. あなたのPCのWindows 10/11の「ライセンス」はどうなっている? 調べる方法をチェック! (2023年10月20日)
  9. AI PC時代の製品選び 展示会「第33回 Japan IT Week 春」で目にしたもの AI活用やDX化を推進したい企業は要注目! (2024年04月25日)
  10. ロジクール、“プロ仕様”をうたった60%レイアウト採用ワイヤレスゲーミングキーボード (2024年04月24日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー