液晶ディスプレイの美しさや色の正確さも、クリエイターにとっては見逃せないポイントだ。解像度2560×1704ピクセル、画素密度約250ppi(pixels per inch:1インチあたりのピクセル数)という高精細な12.3型ワイド液晶ディスプレイは、Adobe RGBカバー率95%という広色域も実現し、タブレットPCでは最高級の画質と言える。その良好な発色傾向は、鈴木氏のレビュー記事の後半で指摘されている通りだ。
さらに、色温度を「D65(6500K)」と「D50(5000K)」に設定できたり、エックスライトの測色器「Color Munki Photo」を使ったカラーキャリブレーションもサポートしているので、微妙な色を正確に把握しながら作業できる。
液晶ディスプレイのアスペクト比が3:2である点もポイントだ。紙のノートに近いアスペクト比であり、ワイドすぎないため縦画面での作業もしやすい。このアスペクト比のおかげで、12.3型という画面サイズからイメージするより、作業スペースは広く使える。
また、前述の通り「液晶保護シート」の貼り付けサービスがあり、これを利用すると画面がハーフグレアっぽい低反射仕様になるだけでなく、ペンの摩擦が高まって描き心地が変わる。筆者はツルツルとした描き心地が苦手なのだが、このシートを使うことでかなり描きやすくなった。
マシンの処理性能もさすがの一言で、ひとたび電源ボタンを押せばOSの起動はメチャクチャに速く、グラフィックスソフトの起動もサクッと完了し、ファイルの作成や画像編集、変換して保存といった作業も軽快に進められる。
なにせ、タブレットなのにCPUはTDP(熱設計電力)が47ワットで4コア/8スレッド対応のCore i7-4770HQ(2.2GHz/最大3.4GHz、6Mバイト3次キャッシュ)、メモリは最大16Gバイト(DDR3L-1600/デュアルチャンネル)、ストレージは512Gバイトもしくは1TバイトのPCI Express 3.0 x4接続SSDという爆速仕様なのだ(256GバイトSSDのモデルは速度で劣るSerial ATA 6Gbps接続となるので注意したい)。
筆者は普段、27インチiMac(mid 2010・SSD換装済み)とCLIP STUDIO PAINT EXを使って作業をしているが、この環境と比較した限りはVAIO Z Canvasの処理性能に不満はない。このように、据え置き利用の液晶一体型デスクトップPCや大画面ハイスペックノートPCに匹敵する高性能(それどころかSSDはより高速)が、手軽に持ち出せる厚さ約13.6ミリ、重さ約1.21キロ(キーボード合体時は厚さ約18ミリ、重さ約1.55キロ)のA4ジャストサイズに収まっているというのが最大の強みだ。
ライバルとなるワコムのCintiq Companion 2はもちろん、その他多くのタブレットデバイスを大幅に上回る処理性能の速さを誇り、現時点で世界最高性能のタブレットPCであることは間違いない。
そして、これだけサクサクと動く一方で、ファンの音は非常に静かだ。もちろん、高負荷をかけるとファンの音に気付くが、音量は控えめで、日中はまず気に障ることはなかった。気温がかなり上がってきた季節でこのレベルというのは素晴らしい。ボディの発熱も上部の排気口付近は熱くなるが、画面に手を置きペンで描いていて困るようなことはなかった。この辺りは、VAIOのノウハウとプライドが詰まっているところなのだろう。
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