←・SOHO/中小企業に効く「モバイルプリンタ」の選び方(第1回):意外に知らない「モバイルプリンタ」という選択肢
前回は「モバイルプリンタ」の利用シーンの違いと、製品選びのポイントについてお届けした。同じモバイルプリンタであっても、電源がある場所で使うか否か、どんなデバイスと組み合わせて利用するかといった条件によって、求められる機能はまったく違ってくるので、事前に自分の使い方について把握しておいたほうがよい、というのが前回の要約だ。今回はこれを受けて、具体的な製品例を紹介していこう。
そのモバイルプリンタだが、据え置き型のプリンタに比べ、製品の数はそれほど多くない。各プリンタメーカーから1〜2種類ずつが発売されているといった程度で、据え置き型のページプリンタやインクジェットプリンタのように、必要な機能をもとに豊富なラインアップの中から選び出すといった状況には程遠い。現在入手可能なすべての製品をリストアップし、そこから絞り込んでいくという方法も現実的だ。価格帯は1〜3万円といったところで、それほど極端な価格差もない。
製品の進化のスピードも緩やかで、発売から数年も前の製品がいまだにラインアップの中核を担っている場合もある。新しい製品が登場しても従来製品がなくなるわけではなく、併売されることで複数製品のラインアップが維持されているといった状況だ。Wi-Fi対応のように、新しい世代の製品ならではの機能もあるが、機能差をきちんと把握していれば、発売時期が古い製品を切り捨てて考える必要はない。
本体のサイズおよび重量も、複合機タイプの製品を除けば、そう極端な違いはない。モバイルプリンタということで最低限持ち運べるサイズが必須であり、結果的に本体サイズや重量、およびそこに詰め込める機能までもが似通ってしまうのは、ある意味で当然だろう。
どちらかというと、本体と同時に携行するACアダプタやバッテリー、あるいはワイヤレスユニットといったオプションこそ、チェックすべきポイントだ。持ち歩く際の“かさ”を考えるうえでは、インクカートリッジのスペアの体積も考慮したい。
では売れ筋の製品からチェックしていこう。ともに2014年秋に発売され、市場でつばぜり合いを演じているのが、エプソンの「PX-S05」シリーズとキヤノンの「PIXUS iP110」だ。
モバイルプリンタを探す場合、まずはこの2機種を比較検討するところから始めるのが無難だろう。本体サイズはほぼ同等で、2万円台前半という実売価格(税別、以下同)もほぼ互角、ともにWi-Fiに対応し、ケーブルレスでの印刷が行える点も変わらない。
もっともこの両製品、細部を見ていくとコンセプトが大きく異なることが分かる。まず電源についてだが、PX-S05はACアダプタとバッテリーの両方が標準で利用可能、PIXUS iP110はACアダプタ駆動でバッテリーがオプション扱いだ。PX-S05はモバイル利用が前提、PIXUS iP110はコンセントが近くにある場所での利用が前提になっている。
ちなみに、PX-S05は市販のモバイルバッテリーからの電源供給に対応、さらにPCからUSB経由での充電も行えるなど、外出先でバッテリーが切れた場合に備えて、さまざまな給電方法が用意されている。
これだけ見るとPX-S05のほうがオールマイティで便利に思えるが、PIXUS iP110はオプションのポータブルキットを利用することでカラー約240枚の大量印刷に対応する。標準でバッテリーを搭載するPX-S05はカラー約50枚が上限なので、オプションまで含めれば立場はむしろ逆転する。バッテリーを追加すると本体サイズと重量が増し、かつ予算もプラスアルファが必要になるので、それも踏まえた判断が必要だ。
給紙枚数については、PIXUS iP110が50枚であるのに対して、PX-S05は20枚とやや少ないので、大量印刷を行う際はPIXUS iP110のほうが有利だろう。
これ以外に大きな違いとして挙げられるのはインクだ。PX-S05は顔料インク4色構成、PIXUS iP110は染料インク4色と顔料ブラックインクの計5色構成ということで、インクの特性だけで考えると写真などを美しく印刷するにはPIXUS iP110、文書をくっきりと印刷するにはPX-S05が有利ということになる。とはいえPIXUS iP110も黒文字印刷用に顔料ブラックインクが追加されており、黒文字はシャープな印字だ。
オールラウンダーという点ではPIXUS iP110に一日の長があるが、蛍光ペンでマーキングをした場合ににじみやすいという染料カラーインクの特徴は、ビジネスユースでは注意すべきだろう。
これ以外で注目すべき機能としては、PX-S05が搭載する簡易ドライバ機能だろう。これは出先で初めて接続するPCであっても、本体内蔵のドライバをインストールして印刷を実行できる機能だ。常に同じPCと組み合わせて使うのではなく、さまざまなPCと接続して使う機会が多い場合、この機能を決め手に製品を選んでもおかしくない便利さだ。
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