Radeon R9 Fury Xの水冷ユニットは、ポンプの電源もラジエータファンの電源も、ともにグラフィックスカードから取得する。そのため配線はシンプルで容易に組み込める。また、ラジエータファンの回転数制御もグラフィックスカードでできる。ファンの回転音は静かだ。ただし、ポンプの放つ高周波音ははっきり認識できる。とはいえ、PCケースに組み込んでしまえばあまり気にならないだろう。
熱に関しては、「温かい」を超えた「暑い」熱風が吹いていた。そのため、ラジエータを設置する場合、吸気側ではなく排気側に置く必要がある。コンパクトなケースで、どうしても前面にラジエータを置かなければならないような場合は、背面から吸気し、ラジエータのある前面で排気するといったようにケースの吸排気系を逆転させてもいいだろう。効率が落ちるかもしれないが、ラジエータの熱風をケース内に循環させるよりはいい。
GPU温度に関しては、アイドル時で30度前後、高負荷時は、3DMark実行中の場合で41度、それよりも長時間負荷の続くGrand Theft Auto Vベンチマーク中で54度となった。なお、54度というのは一瞬だけで、それ以外は53度で推移していた。水冷の特性か、温度上昇はゆるやかで、50度以上では変動が少ない。それでいて動作音も変化が少ないので、冷却と静音を両立したいユーザーには向いているだろう。
HBMによって、GeForce GTX 980 Tiを上回るかなと期待していたが、Thiefのように超えたといってよいデータもあったものの、多くのテストでは、まだまだ追いついていない。現在のゲームタイトルを快適に動かすだけの処理能力はあるので困るということにはならない。最高のフレームレートに価値を見出すならGeForce GTX 980 Tiがまだ優位だ。Radeon R9 Fury Xは、コンパクトさや安定したGPU温度と静音性能、そしてHBMという新たな技術に価値を見出すユーザーが選ぶ製品といえるだろう。ドライバの完成度によってはスコアが向上し、動作も安定するだろう。
実売価格は日本国内で10万円前後になっている。GeForce GTX 980 Tiも10万円クラス。10万円出せば、ほとんどのゲームタイトルを4K解像度の高画質で動かすことができる。4K解像度になればRadeon R9 Fury XもGeForce GTX 980 Tiも実力はほぼ同じだ。ほぼ同じ、だけに、Radeon R9 Fury Xは処理能力以外に価値があると思うユーザーが“あえて”選ぶことになるだろう。
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