最後にマウスコンピューターの生産拠点である飯山工場を簡単に紹介しておこう。この飯山事業所は、実は40年以上の長い歴史を持つ。「イーヤマ」の名前からディスプレイを思い浮かべる人なら分かるように、もともとこの飯山事業所はディスプレイの工場として存在していた。
その歴史をひもとくと、1972年に設立された飯山電機が三菱製テレビを製造する工場としてスタートし、やがてイーヤマの自社ブランドでディスプレイを生産。当時はまだ高価だった17型CRTディスプレイを安価に販売して一世を風靡(ふうび)した。「イーヤマ=ディスプレイ」を連想する人はちょうどこの時代のイメージが強く残っているのかもしれない。
その後、イーヤマは2006年にMCJグループの傘下へ入り、2008年に同グループのマウスコンピューターに吸収合併された。マウスコンピューターのPCは当時、国内3カ所で製造されていたが、同年から飯山工場でも試験的に委託生産を開始。その後間もなくして生産拠点をこの飯山工場に一極集中している。かなり急な生産体制の変更だが、長い歴史を持つ飯山工場のモノ作りのノウハウが果たした役割は大きかったといえそうだ。
もっとも、当時は「慣れないPCの生産ということで苦労も多かった」と飯山工場の工場長を務める松本一成氏は振り返る。「まず、図面がなかった。ディスプレイは画一の図面通りに組み立てればいいのですが、BTOを採用するマウスコンピューターのPCは、ユーザーによって1台1台仕様が異なるため、異なるパーツに合わせた細かい図面をすぐに参照するのが難しかったのです」。
「そこで、発注書に割り当てられたシリアルをバーコードで読み込めば、カスタマイズされた生産マニュアルが参照できるように、地道にシステムを構築していきました」と松本氏。現在はどんな構成であっても組立台の目の前に設置されたディスプレイに正確な製造工程が表示され、作業スタッフはそれを見て確かめながら組み立てられるようになっている。
また、右肩上がりの生産計画に対応するため、生産速度を上げる効率化と品質向上の両立を目指す取り組みも多い。最近では組み立てに必要な部材をピッキングする作業に、システムと連動したデジタルピッキングを導入し、発注書のバーコードを読み込むことで必要な棚のランプが点灯し、視覚的にも分かりやすく効率的に部材を集められるようになった。
一方、効率化を押し進める半面、組立作業は熟練したスタッフによるセル生産を貫いている。「BTOが多く構成が毎回異なるので、複数人で分担するよりは、一人が責任を持って組み立てる方式のほうが結果的に品質が高くなると考えています。もちろん、組み立て後もすぐに動作検証に回すのではなく、指示書との食い違いがないかだけでなく、ケーブルやネジにゆるみまで全品をほかの人間がチェックし、小さなミスも見逃さないようにしています」と松本氏は話す。
納期の短縮もめざましい。2013年には5営業日だった基本納期を4日に短縮。さらに2014年は、モデルによって1日営業日対応を開始している。Webで注文したらすぐに使いたいとは誰もが思うこと。マウスコンピューターが実現した短納期は、国外生産の海外メーカー製PCにはない利点だ。
現在、飯山工場には152名が在籍し、このうち114名が生産スタッフとして従事している。各現場ではスタッフ主体の勉強会が月に1回のペースで開かれ、品質を改善するための活発な意見交換がなされているという。かなり遠慮のない意見も飛び交うとのことで「私にとっては胃が痛くなるような場です」と松本氏は笑う。
マウスコンピューターロゴの入ったPCがこうした熱意のあるスタッフによって1台1台飯山工場で組み立てられてきたと想像すると「国産PC」の心強さを感じないだろうか。
→PC USER特設ページ「mouse computer station」
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