短いくせに強力だ! 「Radeon R9 Nano」の15センチな高性能を試す小さいけど可能性はでかい(1/3 ページ)

» 2015年09月11日 19時00分 公開
[石川ひさよしITmedia]
ココが「○」
Mini-ITXに収まるサイズ
Fury Xに相当する処理能力
ココが「×」
実売価格高い
製品供給十分か?

FuryとFury Xとほぼ同じスペックでTDPを100ワット削減

 Radeon R9 Nanoは、AMDの最新GPUアークテクチャ“Fiji”をベースとしている。FijiではHBMを採用することで基板のコンパクト化が実現したが、Fijiを搭載するグラフィックスカードレファレンスデザイン「Radeon R9 FuryX」では水冷で使うラジエータを搭載する必要が生じ、同じくFuji搭載グラフィックスカード「Radeon R9 Fury」では空冷のために基板サイズを大きく上回るクーラーユニットを搭載していた。

 これに対し、R9 Nanoはシングルファンの空冷ユニットを搭載し、カードの長さを7.5インチから6インチへとさらに短くした。AMDでは、Radeon R9 Nanoを「コンパクトゲーミング」というジャンルにおいて最高の性能を狙うGPUと位置づけている。

Radeon R9 Nanoのリファレンスデザイン

製品名 Radeon R9 Nano Radeon R9 Fury Radeon R9 Fury X Radeon R9 290X
コードネーム Fiji Fiji Fiji Hawaii
ストリームプロセッサ数 4096 3584 4096 2816
テクスチャユニット 256 224 256 176
ROPユニット 64 56 64 64
Z-Stencil 256 256 256 256
最大GPUクロック(MHz) 1000 1000 1050 1000
テクスチャフィルレート(GTexels/sec) 256 224 268.8 176
ピクセルフィルレート 64 64 67.2 64
浮動小数点演算性能(Tflops) 8.19 7.2 8.6 5.6
メモリタイプ HBM HBM HBM GDDR5
メモリデータレート(Gbps) 1 1 1 5
メモリクロック(GHz) 500 500 500 1250
メモリ接続バス幅(ビット) 4096 4096 4096 512
メモリ帯域幅(Gバイト/秒) 512 512 512 320
メモリ容量(Mバイト) 4096 4096 4096 4096
最大消費電力(TDP:ワット) 175 275 275 290
補助電源レイアウト 8 8+8 8+8 8+6
DirectXサポート 12 12 12 11.2
OpenGLサポート Vulkan Vulkan Vulkan 4.3
そのほかAPI Mantle Mantle Mantle Mantle
プロセス(ナノメートル) 28 28 28 28

 R9 Nanoの仕様は、Stream Processorが4096基、GPUクロックが最大1000MHz、メモリが4Gバイト HBMなど。Stream Processorの数は上位のR9 Fury Xと同じであり、一方で、GPUクロックはR9 Furyと同じ。メモリクロックはR9 FuryとFuryXと同じ500MHzだ。グラフィックスメモリはHBMを採用する。

 こうしたスペックながら、TDPは100ワット低い175ワット、補助電源コネクタは8ピン1基(150ワット)に抑えている。スペックがほとんど同じなのにTDPを100ワットも下げたということはにわかに信じられないが、低電圧駆動できるチップの選別や、クロックのきめ細かな制御、といったところに秘密があるようだ。

 今回はRadeon R9 Nanoのリファレンスデザイン(Radeon R9 Nanoもグラフィックスカードという形態でエンドユーザーに提供するが、グラフィックスカードベンダーによるオリジナルデザインのモデルも認めている)を用いて検証する。

 先に紹介したとおり、カード長は6インチ(15.24センチ)と短い。Mini-ITXフォームファクタの一辺17センチよりもさらに短い。空冷ユニットの厚みが2スロット分あるため、Mini-ITXフォームファクタ準拠のPCケースでも、大きめのモデルを選ぶことになるが、その条件さえクリアできればコンパクトなゲーミングPCが実現できる。

Mini-ITXファクタの1辺の長さ17センチより短い6インチサイズを実現。2スロットの拡張カードに対応したPCケースであれば、コンパクトなモデルでも組み込み可能なサイズだ

 また、175ワットというTDPも、コンパクトゲーミングPCを組む場合には都合がいい。最近では、SFX電源でも600ワットモデルが登場している。グラフィックスカードに175ワット、そのほかのシステムに150ワットを見積もっても、600ワット程度あれば十分に共有できる。あるいは、ストレージをSSDだけに抑えるなどの工夫をすれば、500ワット程度でも問題ないだろう。

外部補助電源コネクタはやや変則的な8ピン×1基を備える。とはいえ、コンパクトなハイエンドグラフィックスカードでは、こうしたレイアウトの製品もまれにある

映像出力インタフェースは3基のDisplayPortとHDMIの構成だ

 映像出力インタフェースは、Furyと同じ3基のDisplayPortとHDMIという構成だ。もう1列のブラケット部分はスリットを設けており、これもFuryと共通する。水冷のFury Xではロゴを彫っていたが、NanoやFuryは空冷であるため、ここから排気する仕組みだ。

 外部補助電源コネクタは8ピン×1基で、カードの後部に搭載しているため、ケース側には、カード長+2〜3センチ程度のコネクタ部分を収るスペースが必要になる。ただし、2〜3センチを加えてもMini-ITXフォームファクタのサイズを大きくはみ出すものではないから、Mini-ITXフォームファクタ対応PCケースであっても、長さが足りなくなるという状況は生じにくいだろう。

カード長とほぼ同じサイズのヒートシンクを収容している。これまでのRadeonシリーズと同様にBIOS切り替えスイッチも用意する

裏面に放熱板はない。多くのハイエンドグラフィックスカードでよくある「裏面に実装したグラフィックスメモリ」用の配線パターンがないのは「HBM採用するグラフィックスカード」特有の特徴だ

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