これだけ進化したカメラを備えていながら、アップルはそれだけで手を止めず、「Live Photos」という新しい機能を追加してきた。写真をのぞき込もうとすると、それが数秒分だけ動く。まるでハリー・ポッターの世界にある魔法の写真のようだ。
同様の数秒動画は、Apple Watchの文字盤でも採用されていた。筆者もお気に入りの「花」の文字盤は、腕を上げて顔に近づけると、腕の中でパッといろいろな花が開く。ほんの数秒間の動きだが、なんとも繊細な心地よさがあり、いまだに飽きずに何度かは必要もないのに花を咲かせてしまう。
Live Photosもそれと同じで、うまく撮れると心にグッと来る何かを持っている。
iPhoneのカメラは撮影時、実はずっとホワイトバランスを変えたり、フォーカスの位置を決めたりするために、すべてのセンサーを動かしてレンズを通して入ってくる映像を記録している。ならば、それをそのまま機能に生かしてもいいじゃないか、という発想で生まれてきた機能だそうだ。
シャッターを切ったときの空気感が伝わって来るが、撮られる相手が「今、動画を撮られている」と構えることもない絶妙な長さ、絶妙な実装になっている。
撮り方は簡単で、カメラアプリの上にある「Live Photos」というモードをオンにしておき、後は普通に写真を撮るだけ。その状態でシャッターを切ると、切る前の1.5秒と切った後の1.5秒の映像が音とともに写真の中に封じ込められるのだ。
合計約3秒ということは、1秒間30フレームくらいと考えて、記録した写真の容量は、通常の写真の90倍くらいか、と技術的な人は思ってしまうだろう。しかし、アップルはうまくファイルサイズを圧縮して、なんと3秒の空気感を1200万画素写真2枚ぶんくらいのサイズに封じ込めている。これなら常時オンにして使っていても、それほど気にならないだろう。
Live Photosで撮影した写真は、アルバムをめくって見返すときにちょっとだけ動いてピタッと止まる(これがまたイイ!)ので、すぐにLive Photosだと分かる。ここで写真に対して「強押し」操作をすると、3秒まるまるの映像が再生され、撮った瞬間を思い出させてくれる。
特に子供の写真を撮るときなどには、構えさせないし、最高にいい味を出してくれる機能だ。
アップルはこのLive Photosを、あくまでも動画ではなく、写真の拡張と考えている。これまでの写真と同様に普通に「iCloudフォト」にもバックアップされるし、iOS 9にアップグレードした他のiOS機器でも再生できるようになる模様だ(再生時の操作方法は不明)。
また、Facebookなど他の会社にも対応を呼びかけているようだ。実際にFacebookが、この機能に対応したら、一気に活用が広まりそうな印象を受けた。
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