Adobeが掲げた新Creative Cloudの3つのキーエリアの中でも異色なのがストック素材サービス「Adobe Stock」だ。
ポスターやチラシ、社内資料を作成する際、各コンテンツにぴったりの写真を使いたいという人は多い。しかし、イメージ検索サービスなどで見つけた画像を使うことについては、日本では(それが例え内部資料であっても)著作権上の理由から厳しい風潮が出来上がりつつある。
そんな時、Adobe Creative Cloudの購読者であれば、決まった額の追加料金でAdobeが用意する4000万点以上の写真素材やイラスト、ベクター画像やビデオが利用可能になる。
これまでにも他社のストックフォトサービスを使っていた人は多いかもしれない。そうした数多あるサービスとAdobe Stockが異なるのは、ストック写真の利用がCreative Cloudの「ワークフロー」の中に完全に組み込まれている点だ。
例えば、Adobe Creative CloudのメニューでAdobe Stockという項目を選び「ヨガ」というキーワードを入力する。すると「ヨガ」を連想させる膨大な数の素材がWebブラウザで表示される。
気に入った写真を見つけたら、「プレビューを保存」という項目をクリックすれば、素材がダウンロードされるので、これをCreative Cloudのアプリに取り込んで作品を作る。
ここで1つ問題なのは、ダウンロードされたのはあくまでも「プレビュー素材」で、真ん中に大きく「Adobe Stock」という透かし文字が入っており、このままでは作品として使えないこと。ただし、出来上がった成果物から作品の最終仕上がりを予想することはできるので、この状態で上司や取引先に作品を確認してもらう。ここでOKがもらえたら、素材のライセンスを取得(購入)して透かしが入っていない素材に差し替えられる。
画像1点の価格は1180円/枚だが、毎月10点の画像を利用できるプランがCreative Cloud年間契約ユーザーは月額3480円、非ユーザーは月額5980円、毎月750点まで利用できるサービスを年間契約した場合は月額2万4980円(しない場合は月額2万9980円)で用意されている(毎月10枚のプランは、利用枚数が10枚に満たない場合は最大120点まで繰り越され、10枚で足りない場合は598円/枚で追加購入できる)。なお、動画素材はまだ提供が始まっていない。
Adobe Stockは、元々、Fotoliaというサービスを買収して実現したサービスだ。世界最強のクリエイター向けアプリ群に、ワークフローに組み込まれたオフィシャルのストック素材サービスが組み込まれたことで、ストックフォト業界の勢力図が一気に塗り替えられかねない大事件といえる。
そして、その先の展開も面白い。世界最大のクリエイターネットワークを持ち、既にCreative CloudにBehanceという作品発表の場も提供しているAdobeは、今後、フォトグラファーやクリエイターが自分で撮影・制作した画像を販売する仕組みも用意するようで、そのためにクリエイターのプロフィール表示の改善も計画している。
制作プラットフォームであるはずのCreative Cloudが、今後はますますクリエイターたちが自らの作品を販売するためのプラットフォームとして進化していくというわけだ。
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