指先から生まれる、陳腐化しない未来――漫画家・山田胡瓜×コンピュータ将棋開発者・山本一成(前編)「描く×作る」対談(2/3 ページ)

» 2015年10月25日 11時00分 公開
[杉本吏ITmedia]

新連載の舞台は

――胡瓜さんは来月から週刊誌での連載が始まるとか。

山本 えっ! どこでですか。

胡瓜 週刊少年チャンピオンです。「AI(アイ)の遺電子」というタイトルで、11月5日発売号から掲載されます。

山本 チャンピオンってすごいじゃないですか! どんなお話なんですか?

胡瓜 少し先の未来で、ヒューマノイドが一般化しているような社会が舞台です。

山本 主人公はヒューマノイドなんですか?

胡瓜 いえ、第一話で分かる範囲としては、主人公は医者なんですよ。つまり、ヒューマノイドを治す医者なんです。この世界では、医者にかかるようなヒューマノイドというのは、人間と同じような権利を持っているんですよ。一方で、現代と同じく道具のように使われている人工知能もいる。

山本 へー。実はそれ(ヒューマノイドの人権について)、私もそうなると思っているんです。だって、人間の形をしたものを人間として扱わないのって、たぶん人間には難しいじゃないですか。

胡瓜 そうですよね。見た目や中身のかなりの部分までが一緒だと、そういうヒューマノイドを排除するというか、道具として使うのであれば、「何を基準に人を人として見ているのか」という、けっこう哲学的な問題が出てきちゃうんですよね。

山本 ……ちなみに確認なんですけど、その世界観の作品がバキと一緒に載るんですよね?(笑)

胡瓜 バキとか弱虫ペダルと一緒に載るはずです!(笑)

ハードとソフトの補完性

――山本さんはAI開発者として、そういったヒューマノイドなどの存在が一般化するのはいつ頃だと思われますか?

山本 えー、正直全然分かりませんが、みんな2045年(※3)って言ってるんで、私はその10年後の2055年くらいということにしておきます(笑)。

※3)2045年:未来科学者のレイ・カーツワイル博士によって提示された、「シンギュラリティ」(技術的特異点)に至る年のこと。シンギュラリティでは「強いAI」(※1)などの登場により、科学技術が爆発的に進展するとされている。

胡瓜 僕も詳しくはありませんけど、その2045年というのも、結局ムーアの法則を根拠にしているんですよね? コンピュータの処理性能が指数関数的に上がっていって、人の脳とは比べものにならなくなるという。それって結局ハードの話で、そこにどんなソフトが載るかっていうのが大事なんじゃないですか?

山本 そうですね。でも一方で、ハードとソフトってすごく補完し合ってるというか、「ハードがすごいから、ソフトが無茶なアルゴリズム(でも動かせる)」っていう部分もあったりするんですよね。今はディープラーニングが盛り上がっているけど、あれも言ってしまえば昔からあったものをちょっと改良しただけというか、「昔だったらできなかったことができるようになった」ものだと思っていて。昔は方法論が分かっていても(ハード面で足りずに)動かなかった。だからすごいハードができたら、けっこうソフトもできちゃうかも。コンピュータ将棋もそうで、かなり無茶しているというか。だから今のPonanzaは10年前では作れない。

胡瓜 あ、なるほど。同じプログラムがあったとしても、10年前のハードでは全然ダメだと。

山本 機械学習がまったく話にならないですね。だから(未来においては)ソフトはボトルネックになるかもしれないけど、(ハードの力で)強引に乗り切っちゃうかも。だってハードが100倍あったら、じゃあこうしようか、みたいなのっていっぱい思い付くから、人間は。

胡瓜 ハードの伸びに合わせて、ソフト側に求められるものも変わってきてるんですね。

山本 CPUで言えば、今だと1個1個のコアの性能は上がってないけどたくさんコアがつながってるとか、そういうものを生かすための技術が求められてます。将棋にはなかなか生かしづらいんですけど。あとはGPU。昔は描画用に使ってたんですけど、並列計算がすごく速いんで。GPGPUとかも出てきてるから、そういうのがうまくはまるとすごく強くなる。はまらない展開もありますけど、ディープラーニングはすごくはまるから。あっすいません、専門的すぎる話に……。

胡瓜 一応元IT記者だったので、なんとか(笑)。

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