指先から生まれる、陳腐化しない未来――漫画家・山田胡瓜×コンピュータ将棋開発者・山本一成(前編)「描く×作る」対談(3/3 ページ)

» 2015年10月25日 11時00分 公開
[杉本吏ITmedia]
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一番描きたかったシーン

――胡瓜さんの漫画には、「バイナリ畑〜」でも、新連載の「AIの遺電子」でも、一貫してテクノロジーが背景にあると思うのですが、こうしたアイデアというのはどんな順番で出てくるのでしょう? 技術からストーリーを発想するのか、ストーリー上の要請で技術を用意するのか。

胡瓜 それは両方ですね。ストーリーを思いついてから、技術的なバックグラウンドを考えることもあるし、技術的な背景を考えている中で「こういう技術があると、こんなドラマがあり得るのでは?」となることもあります。漫画全体に関わる重要な設定は、一応いろいろと考えていますが、細かい仕様まで漫画の中で説明するかは……分かりません(笑)。

山本 あんまり具体的に描くと、陳腐化しちゃいますからね。

胡瓜 そうなんです。今の技術の感覚で描いちゃうと、将来、ずっと古いものになっちゃうので。「人類は投了しました」も、結局あれ、男の子はメガネ(HMD:ヘッドマウントディスプレイ)を付けて将棋をやってるじゃないですか。汎用AIが実現しているような未来で、あれが陳腐化してないかどうかというのは分かりませんね(笑)。

山本 もっと小さくなってたり。

胡瓜 あれ見ると、現在の技術を見まわしてる自分の感覚でそのまま描いてるな、って思います。

――とても良いと思ったのが、彼はHMDを付けていながら、手には扇子を握って戦っているんですよね。

胡瓜 そうそうそう。あれが描きたくて。何にもないところにこう(扇子を持って)やってるのを描きたくて。





山本 扇子ね、そっちはなかなか廃れなそうですね(笑)。

胡瓜 だいじょぶそうですよね(笑)。古いものはけっこう残るんで、むしろ作中にも描きやすいんですよね。

続きは後編

 後編では、胡瓜さんが「ペン画だけはアナログ」を選ぶ理由、山本さんが将棋AIの次に取り組みたいこと、お二人のモチベーションの源泉などについて伺います。お楽しみに。

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