マカルビー氏は「Microsoft自身が(ウォレットを使った)決済サービスに参入するかについてはコメントできない」と前置きしたうえで、Windows 10 Mobileで実装されている決済関連の機能について説明を行った。
実装方式は次の3種類があるという。
まずサードパーティーが独自にWindows 10 Mobile上に決済機能の実装を行い、そのためのアプリやサービスを提供する場合、Microsoftでは特に制限を設けるつもりはないという。この辺りはアプリにおける決済機能の実装に制限のある、競合プラットフォームと異なる特徴と言える。
次がHCEで、これはGoogleがKitKat(4.4)以降のAndroidに標準採用した機能だ。メーカーや携帯キャリアの縛りがなく、「端末がNFCにさえ対応していれば利用可能」な点が特徴となる。
HCEでは、セキュリティ情報を格納するための専用ハードウェア(SIMカードや端末内蔵型のセキュアエレメント)を必要とせず、カード番号などの決済情報の実体はクラウド上に存在し、実際にNFCによる非接触通信を使って店頭でスマートフォンによる支払いを行う場合、必要な決済情報を有効期限や回数制限をつけた「トークン」という形で一時的に端末のソフトウェア的に用意された保護領域に格納し、これで決済を行う。
トークンを有効化するため、定期的にインターネットに接続してオンライン状態を維持する必要があるが、後述のUICC方式に比べて端末の種類や携帯キャリアの制限なしに利用できるメリットがある。Android Payが同方式を採用しているほか、Samsung Payも「KNOX」というセキュリティ機構を使ってほぼ同じ仕組みでサービスを実装している。
3つ目のSIMカード方式は、決済や本人認証に関わる情報をSIMカード内のセキュアな領域に格納する仕組みだ。SIMカードを管理しているのは携帯キャリアなので、携帯キャリアが決済サービスを提供する場合には選択されることが多い。
メリットとしては、端末を乗り換えてもSIMに情報がひも付いているため、端末内蔵方式(eSE方式)にあるような移行の手間が比較的少ないこと、そしてSWP(Single Wire Protocol)によりNFCのアンテナとSIMカードが直結されているため、端末のOSの動作いかんに関わらず(画面ロック中やOS自体がダウンしていても)サービスを利用できることが挙げられる。
ただ、SIMカード方式とeSE方式については、長らく携帯キャリアとプラットフォーマーであるGoogleなどのベンダーの間で「どちらが決済情報を管理するのか」という部分でもめ、なかなかサービスが立ち上がらずにNFC自体の将来性に疑問符が付くといった事態に陥ってしまった経緯もある。
そのため、Googleはベンダー中立性の高いHCE方式へと傾くことになり、大手カードブランドのMasterCardやVisaもすぐに賛同を表明し、前述のようにApple Pay以外の著名ウォレットサービスがHCE技術をベースに実装を進めるなど、現在市場をリードする中核技術となりつつある。
MicrosoftもWindows 10 MobileでHCEを標準技術に選定しており、恐らく同社がモバイル決済サービスに参入するにあたっては「HCE技術を使ったサービス」となる可能性が非常に高い。
余談だが、HCEではFeliCa技術をエミュレーションする「HCE-F」という規格の策定が進んでおり、近い将来、日本でFeliCaをベースとする一部電子マネーサービスは、HCE技術上で実装される可能性が高いとみている。
従って、Windows 10 Mobileを含むFeliCaチップを内蔵しないスマートフォンの多くで、国内のおサイフケータイのインフラの一部が利用できるようになると考えられる。
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