VRの未来を見据えて――担当者が語る「LITTLEGEAR」に込めた情熱開発にかけた時間はほぼ2倍(1/2 ページ)

2015年で編集部が最も注目したゲーミングPCの「ベストチョイス」に輝いたG-Tuneの「LITTLEGEAR」は、コンパクトなボディに超ハイエンドグラフィックスカードも搭載できる小型デスクトップPCだ。製品担当者に開発秘話を聞いた。

» 2015年12月07日 10時00分 公開
[ITmedia]

「LITTLEGEAR」は、マウスコンピューターのゲーミングPCブランド「G-Tune」から9月にリリースされた“持ち運べる小型デスクトップPC”だ。同製品はそのデザイン性や製品コンセプト、コンパクトながら高い性能が評価され、ITmedia PCUSER編集部で2015年に最も注目された製品のゲーミングPC部門で、「ベストチョイス」に選ばれた逸品でもある。

2015年「ベストチョイス」ゲーミングPC部門を受賞したG-Tune「LITTLEGEAR」

 178(幅)×395(奥行き)×330(高さ)ミリという小型ボディながら、「GeForce GTX TITAN X」や「Radeon R9 Fury X」といった最上級のグラフィックスカードも搭載可能。それでいて税別5万9800円からという間口の広さも兼ね備えているという、かなりユニークな製品だ。

 そんなLITTLEGEARがなぜ生まれてきたのかは、バーチャルリアリティ用ヘッドマウントディスプレイ(VRHMD)の「Oculus Rift」(オキュラスリフト)が深く関わっている。プロダクトマネージャーとしてG-Tuneを育ててきた杉澤竜也氏、ハードウェアに造詣が深く、LITTLEGEARの開発を担当した小林俊一氏に話を聞いた。なお、製品自体についての詳細は別記事をチェックしてほしい(聞き手:広田稔)。

いったん完成していたのに作り直した

―― LITTLEGEARのベストチョイス受賞、おめでとうございます。そもそも「G-Tune」というブランド名は何が由来なんでしょうか?

“G-Tuneの顔”こと杉澤竜也氏が語る「LITTLEGEAR」誕生秘話

杉澤 G-Tuneの歴史をさかのぼると、10年以上前にもともと「Tune」というハイエンド向けPCブランドがあったのです。当時、PCがどんな用途に使われているのかを分析した際、メインとなる用途の1つにゲームがありました。

 それならゲームに完全特化したブランドに育てていこうということで、Tuneにゲームを表す「G」をつけてG-Tuneになったという経緯があります。そこからゲームの推奨スペックを満たすPCを出したりしてきましたが、「ゲームの用途ってそれだけなの?」と調べていたときに出会ったのがVR(バーチャルリアリティ)だったのです。

―― 何年ぐらいの話ですか?

杉澤 Oculus RiftのDK1(初代開発キット)がリリースされた2013年です。ニュースサイトで話題になっているのを見かけて、面白そうだなと思っていたときに、たまたまTwitterでOculus開発者の桜花一門さんが、「マウスさんうちの近所だから体験してくれないかなー」とつぶやいているのをTwitter担当者が見つけたんです。桜花さんは、Oculusの開発者集団である「OcuFes」の代表で、国内でも影響力のある方でした。

 当時、事業所があった所から本当に近くて徒歩3分ぐらいだったので、すぐに来ていただき、Oculusをかぶらせてもらって本当に驚きました。そしてこうした未来を感じる製品は、ハードメーカーとしてはなんとしても世の中に届けていかなければならないと直感したんです。

 すぐに体験会を開いていただき、これは新しいゲーミングPCの使い方としてG-Tuneで提案していきましょうと、トントン拍子に話が進みました。

―― 始まりは偶然だったのですね。そこからLITTLEGEARの開発をスタートさせたという形でしょうか?

杉澤 いえ、まずは多くの人にOculusを知ってもらうための取り組みから始めました。OcuFesさんは年に何度も展示会をやっていますが、常設ではないためイベントに足を運ぶ形でないと体験ができませんでした。ただ、この感動は言葉で伝わらないので、HMDをかぶってもらうにはどうすればいいのか考えたんです。

 G-Tuneとして何ができるかと考えて、弊社には直営店の「G-Tune:Garage」があるじゃないかと。一度、イベントで体験コーナーを出展したところ、行列ができるほど大人気だったため、秋葉原の店舗へと導入に踏み切りました。Oculus向けのPCを作る流れが本格化したのは、Oculus開発者の方々が困るシチュエーションが出てきたからです。

2013年にアキバで開催された「ゲームパソコン&PC-DIY EXPO」にOculus体験コーナーを出展。長蛇の列ができた

「G-Tune:Garage」で展示されていた常設体験コーナー。ちなみに写真の男性は杉澤氏だ

―― 「Optimus」問題ですか? ノートPCで独立したGPUがあるにも関わらず、性能の低いCPU側の内蔵グラフィックスを通して出力されてしまうという……

杉澤 そうです。Oculus開発者のみなさんは、展示会に持ち運んで展示しやすいようにノートPCを使っている方も多いです。Oculus RiftがDK1だった時代はまだグラフィックス性能がミドルレンジのノートPCでも動作していたのですが、それがDK2(第2世代開発キット)になってからOptimus搭載のノートでは、フレームレートがきちんと75fps出なくなってしまった。

―― フレームレートが落ちると、画面がカクついて酔いやすくなってしまったりしてVR体験の質が落ちてしまいますよね。

杉澤 そうなんです。Oculus開発者の方々が困っていたので、NVIDIAの方にも協力を仰いで解決策を模索していたのですが、なかなか難しかった。「それならば」ということで考えたのが、持ち運びできて、すべてのグラフィックスカードに対応できる小型デスクトップPCの開発でした。それがLITTLEGEARのコンセプトになります。

小林 PCケースを新規開発するのは非常に時間がかかって、普通にやっても半年かかるのですが、LITTLEGEARには1年費やしています。

―― 1年!?

杉澤 特にグラフィックスカードは、GeForce GTX TITAN XやRadeon R9 Fury Xでも搭載できるようにこだわりました。

小林 実はそのために大幅に修正しているんです。裏話を明かすと、LITTLEGEARは2015年の6月にいったん完成していました。その際、ちょうどFury Xが発表されて、かつ秋葉原にあるG-Tune:Garageが大通りに移転するタイミングだったので、LITTLEGEARに組み合わせてデモしたのですが、Fury Xの水冷ラジエーターのチューブが内部で電源ケーブルと干渉して収まらないということが判明しました。

「G-Tune:Garage」がアキバの中央通りに移転した際にFury X搭載PCの国内初披露となった「LITTLEGEAR」試作機。当初の投入計画では2015年8〜9月予定とされていた

―― せっかく完成していたのに。

杉澤 ただ、せっかく買っていただいたのに、現時点でのすべてのグラフィックスカードを搭載できないというのはやっぱりありえないので……。

小林 はい、作り直しました。ラジエーターの取り付け向きを考えたうえ、電源ケーブルを固定する部分の金型も微修正しています。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2015年12月20日