先ほどWindows 10には2つの大きなミッションがあると説明したが、そのうちの最も大きなものが「旧ユーザーの新しいOSへの移行」だ。
過去の連載記事でも何度か触れているが、Windows 10における最大のライバルは過去のWindows OSとなる。サポート終了となったWindows XPは紆余(うよ)曲折ありながらもシェアは漸減しており、一時期のOSシェア全体の4分の1超という事態からは脱した。
Net Market Shareの調査データには、Windows XPのシェアが世界で10.59%とある。日本マイクロソフトによると、日本国内でWindows XPのシェアは数%程度とのことで、恐らく先進国ほど低いとみられる。
代わって、次のハードルとなるがWindows 7だ。延長サポートの終了する2020年に大きな問題として、MicrosoftやWindowsユーザーに降りかかってくるだろう。特にWindows 7のシェアの多くは企業ユーザーで成り立っており、一般ユーザーと比較してネックとなる。特にInternet Explorerとレガシーアプリケーションが障害となり、このメンテナンスや移行対策を説明するセミナーは毎回参加者で満員状態だという。
Windows 10でも引き続きInternet Explorerは搭載されており、旧バージョン向けに構築されたサイトとの互換性を高める「エンタープライズモード」も利用が可能だ。一時的には対策が可能だが、将来的には新技術への移行が必要となるのが企業内イントラネットでの対応だろう。
企業ユーザーは移行のために比較的長期的なロードマップを描く必要があるが、一方でコンシューマーのユーザーは早期にWindows 10に移行してほしいというのがMicrosoftの本音に違いない。
Windows 10は提供がスタートした2015年7月29日から1年間、Windows 7/8/8.1の正規ユーザーを対象に無償アップグレードサービスを提供している。1年間限定ということで、「可能な限り早いタイミングで移行しましょうね」ということだ。
ただ、これだけの大キャンペーンを張っているにもかかわらず、提供開始から5カ月時点でのWindows 10のシェアは先ほどのグラフにもあるよう10%に達していない。提供開始から1カ月が過ぎた辺りから「(シェアの)伸びが失速している」と各方面から指摘されており、Microsoftは何らかのテコ入れが必要と判断した。
その結果出てきたものの1つが、「2016年からの(事実上の)Windows 10アップグレード自動化」だ。今後はアップグレード対象のOSを利用するユーザーがWindows Updateを行うと、自動的にWindows 10のインストールメニューが表示されるようになる(インストールをキャンセルすることは可能)。
かなり強引な巻き取り策としてさまざまな意見が交わされたが、MicrosoftがWindows 10へのインストール誘導を行う「KB3112343」または「KB3112336」を必須アップデートとして引き続き提供している状況を見る限り、少なくとも一般ユーザーの多くを早くWindows 10に移行させてシェアを上げたいのだと思う。
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