2015年に編集部が最も注目したタブレット2015年PC USER「ベストチョイス」(2/2 ページ)

» 2015年12月29日 15時00分 公開
[PC USER編集部ITmedia]
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大画面+Apple Pencil+Smart Keyboardで可能性を広げた「iPad Pro」

 2つ目の製品は、Appleの「iPad Pro」だ。

iPad Pro Appleの「iPad Pro」

 タブレット市場を切り開いて今なおリードし続ける存在であるiPad。世界的にタブレット市場の成長鈍化が指摘される中、Appleが次なるチャレンジとして投入したのは12.9型の大画面タブレット「iPad Pro」だった。

 画面サイズが9.7型から12.9型に広がったことで、電子書籍や写真、動画のコンテンツビュワーとしてより魅力的になった(音声出力も4スピーカーに強化した)のはもちろん、iOS 9の新機能としてマルチタスクの「Slide Over」「Split View」、子画面表示の「ピクチャ・イン・ピクチャ」が利用可能になり、大画面を生かすOS環境も整えている。

 今後、この大画面を生かすアプリが増えれば、さまざまな用途で価値が高まるに違いない。その点、iOSはモバイルOSで最も成功したアプリストアを有しており、iPad Pro向けアプリでもその優位性が少なからず発揮されると思われる。

Split View 2つのアプリを同時に立ち上げ、画面を2分割して操作するSplit View機能。iPad Proの大画面ならば、マルチタスクの作業もしやすい

 しかし、ご存じのようにiPad Proは単なる大画面iPadではなく、「Apple Pencil」と「Smart Keyboard」を用意していることこそ最大の注目点だ。これまでAppleが純正アクセサリとしてかたくなに提供を拒んできたペンとキーボードをまとめて投入し、iPadのカバー領域を本格的なクリエイティブ用途まで広げてきたのは、iPad登場以来最も大きな変更と言える。

 特にApple Pencilには驚かされた。鉛筆のように細長く軽いボディ、そして傾きと圧力の両方を検知する仕組みにより、実際の鉛筆のようにペンを寝かせて太い線で濃淡を付けるといった表現ができ、その直感的な描き心地はタッチの操作性にこだわり続けてきたAppleの面目躍如といった出来栄えだ。

Apple Pencil ホワイトで細長いボディが目を引くApple Pencil。傾き検知を生かし、鉛筆のように寝かせて書くことで、太い線で濃淡を付けるような表現が可能だ

 一方、保護カバーとキーボードを兼ねるSmart Keyboardは、簡易的なキーボードにとどまっている。iOSがマウスポインタでの操作を想定していないことからポインティングデバイスは装備しておらず、フルキーボードとトラックパッドによる快適な入力環境を備えたMacBookファミリーの使い勝手には程遠い。これでMacBook並に長文を打てると考えると、肩透かしを食らうだろう。Smart Keyboardは既存のiPad用コンパクトキーボードの域を出ない無難なものだ(それでもソフトウェアキーボードとは打ちやすさが段違いだが)。

Smart Keyboard Smart Keyboardは、MacBookより1列少ない5列アイソレーションキーボードを採用。トラックパッドは搭載しないので、画面のタッチとキーボード入力を併用しつつ作業することになる

 大画面タブレットに筆圧ペンとキーボードを組み合わせたiPad Proは、先に紹介したSurface Pro 4と同じカテゴリーの製品に見えるかもしれないが、本田雅一氏のコラムでも指摘されているように、その出発点は真逆とも言えるものだ。

 Surface Pro 4がノートPCをベースにタブレットへ歩み寄った製品なのに対して、iPad ProはタブレットをベースにノートPCに歩み寄った製品となる。つまり、2in1の体験を実現するツールとして、PCであることが重要なのか、タブレットであることが重要なのかで、どちらを選ぶべきかは自然と決まるだろう。

 Surface Pro 4とiPad Pro――この2つの象徴的なタブレットの登場を受け、2016年は特に10型クラス以上でピュアタブレットが減り、キーボードやペンと組み合わせて使うことを想定した製品がさらに増えてくるのではないだろうか。1年後にこれらを超えるような製品が他社から出てくることにも期待したい。

Androidタブレットはやや停滞した1年だったか

 なお、今回はAndroidタブレットからベストチョイスを選出しなかった。

 コストパフォーマンスに優れた小型モデルから、クラス最薄最軽量を誇る「Xperia Z4 Tablet」(ソニーモバイルコミュニケーションズ)のような高級モデルまで、さまざまな製品があり、iOSに次ぐアプリストアの充実ぶりも魅力と、全体ではiPadをしのぐシェアがあるAndroidタブレット。Androidスマートフォンのユーザーを中心として、いまだ有力な選択肢であることは間違いない。

 ただ、Androidタブレットの進化に目を向けると、これまでの延長線上にある想定内のアップデートにとどまっており、Windows 10を得て勢いづくWindowsタブレット/2in1や、AppleのiPad Proに見る新たな可能性と比べて、やや停滞感のある1年だったと言える。

2015年PC USER 「ベストチョイス」タブレット部門ノミネート製品
製品名 メーカー 選考理由
iPad Pro アップルジャパン 12.9型の大画面、iOS9、筆圧ペン、キーボードによる新たな価値提案
iPad mini 4 アップルジャパン 7.9型のコンパクトタブレットの定番が6.1ミリに薄型化、性能アップ
TransBook T90Chi ASUS JAPAN 8.9型のコンパクト2in1、キーボード付きで3万円前後からの低価格
ZenPad S8.0 ASUS JAPAN 4:3高解像度液晶、ハイスペック、高コストパフォーマンスの7.9型Androidブレット
Xperia Z4 Tablet ソニーモバイルコミュニケーションズ 10型クラスで最薄最軽量の防水Androidタブレット
DynaPad N72 東芝 12型Windowsタブレットで最薄最軽量ボディ
Surface Pro 4 日本マイクロソフト 好評のSurface Pro 3をさらに改善、Windows 10に最適化
Surface 3 日本マイクロソフト Pro 3の設計を採用したSurface史上で最薄最軽量ボディ、4G LTE搭載
VAIO Z Canvas VAIO クリエイター向けの圧倒的な性能、最適化した筆圧ペン
MediaPad M2 8.0 ファーウェイ・ジャパン 高音質、SIMフリー対応の8型Androidタブレット
YOGA Tab 3 Pro 10 レノボ・ジャパン スタンド付きでプロジェクター内蔵のユニークな10.1型Androidタブレット
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