USB PD 2.0対応製品の増加にも期待したい。USB PD 2.0は、USB本来の仕様(USB 3.1で4.5ワット)を超え、最大100ワットものバスパワー給電ができる拡張仕様だ。従来は携帯機器の充電を意識したUSB BC 1.2(7.5ワット)という仕様が存在したが、USB PD 2.0ならばノートPCの充電も可能になる。
給電できる電源仕様は「プロファイル」で管理されており、認証を行った後に適切なプロファイルで給電する仕組みになっているため、非対応のデバイスを接続すると、いきなり高電圧や大電流が供給されてしまうようなことはない。
ACアダプターの接続と周辺機器の接続をUSB Type-Cのみに一本化した「新しいMacBook」のUSB-Cコネクタ(AppleはUSB-Cと呼称)もこの仕様を利用しているようだ。
これだけを見ると、シンプルさと引き替えに使い勝手を悪くしているだけと思うかもしれない。しかし、きちんと規格に準拠したノートPC/タブレットとACアダプター、モバイルバッテリーなどが出そろえば、ACアダプターの共通化が進んだり、モバイルバッテリーで安全かつ確実に充電できるなど、これまでになかった便利な運用が可能になる。
もっとも、ノートPCを充電しようと思えばモバイルバッテリーといっても相当な容量が必要になる。現実的にはAtom系プロセッサを搭載した8〜10型クラスのタブレットや2in1から普及を期待したいところだ。
また、USB PDには「Dual Role」という機能があり、Windows 10ではOSレベルでこれをサポートしている。これは、USB PDのDual Roleに対応したPCとタブレットを接続すると、PCからタブレットへ充電できるだけでなく、その逆方向の充電もできるというものだ。データ通信の方向は変えずに充電側と給電側の関係だけを入れ替えられるので、ノートPCとタブレット、スマートフォンなどを併用する場合、より便利に運用できる。
モバイルデバイスの完全なワイヤレス化を目指す動きにも注目したい。特に「WiGig」(IEEE802.11ad)は本格的な普及が期待される。WiGigは60GHzという高い周波数帯域を利用する通信方式で、短距離ながら最大7Gbpsの高速かつ低レイテンシでの通信が行える。
これの具体的な用途で利便性が大きく向上しそうなのは、ドッキングステーションのワイヤレス化だ。ドッキングステーションがケーブルから開放されると、使い勝手が格段に向上する。
WiGigは既に実用化されており、HPやDellのビジネスPC用ドッキングステーションに採用例がある。例えば、2015年12月に発表された「HP Elite x2 1012 G1」などのオプションとして用意されている「HPアドバンスド無線ドッキングステーション」の内容は、2基のDisplayPort、アナログRGB出力(D-Sub15ピン)、USB 3.0×4、有線LAN、ヘッドフォン出力、マイク入力などを備えている。
ちなみに、このHP Elite x2 1012 G1は、キックスタンドとキーボードを備えており、Microsoftの「Surface Pro 4」と非常に似たスタイルを採用している。「Surface Proクローン」といっては失礼かもしれないが、Surfaceシリーズの成功を受けてこのようなスタイルを採用する製品は他社からも登場してくるだろう。こちらの動向も楽しみだ。
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