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なぜ「確定申告」×「クラウド」が便利なのかを知るSOHO/中小企業に効く「クラウド確定申告サービス」の選び方(2/3 ページ)

» 2016年01月27日 06時00分 公開
[山口真弘ITmedia]

自動仕訳機能

 取引明細の取込が終わったら、次に「仕訳(しわけ)」を行う必要がある。仕訳というのは、品物を売ったり買ったりといった一つ一つの取引をパターンごとに分類して帳簿に記帳していく作業だが、簿記関連の知識がない人にとっては未知の概念であり、正しく分類するためにはその「分類=勘定科目」をある程度知っておく必要がある。勘定科目を知っていても売り買いを逆に登録してしまうなどして、トータルの金額が合わなくなることもしばしばだ。

 この「仕訳」を自動あるいは半自動で行ってくれるのが、クラウドサービスの大きな利点だ。取引は同じパターンが繰り返し発生することが多いため、過去の取引を参考にしながら新しい取引に自動的に勘定科目を付与し、確認ボタンを押すだけで仕訳の作業が完了するようにしてくれるのが、クラウドサービスの強みだ。

「MFクラウド確定申告」で自動仕訳 「MFクラウド確定申告」で自動仕訳を行っているところ。ほとんどの項目は過去の仕訳をもとに自動的に勘定科目が入力されるので、チェックして問題がなければ「登録」を押せばよい

 ソフトを使った場合や手入力ではこれらが全て人力で行わなくてはいけないが、仮に毎月100件の取引があったとして、クラウドサービスを使うことでたとえ半分でも自動仕訳ができるようになれば、労力を格段に減らすことができる。

 もっとも、ある程度学習させるまでは、判定ミスはそこそこ発生する。例えばドコモやソフトバンクなど通信会社の名前が明細に入っていると、たとえそれが携帯ショップでのアクセサリ購入(=消耗品費)であっても、問答無用で通信費に仕訳されてしまうのが典型的な例だ。とはいえ使い込めば使い込むほど精度は上がっていくので、最初はいまいち誤判定が多くても、我慢して覚え込ませていくほかはない。上記の通信会社名のように「この単語をキーに判定しているらしい」といった傾向もしばらくすると見えてくるので、それによって明細の記載方法を変えることもできるようになる。

「freee」の画面 こちらは「freee」の画面。自動仕訳(カンタン取引登録)で登録できなかったものは手動で仕訳を行うことになるが、勘定科目を知らなくてもこのように選択肢から選べる

クラウドは利用環境を選ばない

 クラウド確定申告サービスは、IDとパスワードを使ってサービスにログインし、ブラウザを使って入力作業を行う。これは1台のマシンに確定申告ソフトをインストールして利用するのに比べて柔軟な対応が可能になる。その理由を順に見ていこう。

 まずは、PCのOSを問わず利用できることだ。今から数年前、クラウドサービスが登場する前の確定申告の入門書には、Macユーザーがソフトを使って確定申告を行う方法として「まずはWindows PCを買いましょう」とアドバイスしているものが少なくなかった。Macに対応した確定申告ソフトがほぼ皆無だったが故の現実的なアドバイスというわけだが、ブラウザさえ使えれば利用できるクラウド確定申告サービスが登場した現在では、OSを意識する必要は全くなくなった。操作は限定されるがPC以外にスマホからの利用に対応する。

 もう1つは、利用する場所を問わないことだ。ふだんは事務所で入力作業を行っているが、出社しない日に自宅から領収書の入力作業を行ったり、あるいはスマートフォンアプリを使って移動中に仕訳を行うこともできてしまう。もちろんセキュリティについては考慮する必要があるが、1台のPCにインストールして使うソフトウェアの場合は、こうした使い方は不可能だ。これからの時期、天候不順やインフルエンザによる体調不良などで出社できないケースが出てきた場合でも、「ソフトをインストールした端末は会社にある1台だけなので、どうしても出社しなければいけない」といった事態も起こり得ない。

 複数メンバーで共用できるのも、クラウド確定申告サービスの利点だ。例えば、ふだんは経理担当者が伝票入力を行っているが、量が多いために別の担当者と分担して作業を行ったり、あるいは担当者が入力した内容を責任者が別の端末からチェックするといった使い方もできる。この際、元データを加工させたくなければ、権限を閲覧のみに限定することもできる。また申告書の作成が完了した段階でそれ以降の作業を税理士に依頼するといった場合でも、データをわざわざエクスポートして送ることなく、税理士に直接ログインしてもらえばよい。

MFクラウド会計の画面 クラウドサービスであればメンバーを追加することで複数メンバーでの作業が可能だ。特定の操作のみ権限を与えることもできる。これはMFクラウド会計の画面

 このほか、PCが起動しない、クラッシュした場合に別のPCから作業の続きを行えるというのも利点だろう。クラウドサービスも、障害やメンテナンスなどの理由で一時的に利用できなくなる可能性はあるが、それはあくまで短期的である上、データそのものが失われてしまう危険性は低い。前回作業を中断したタイミングから再開できるというのは、大きな利点と言っていいだろう。

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