さて、Surface BookのdGPUはどのようなメリットがあるのか。3D描画性能を計測するベンチマークテストの3DMarkについては、北米モデルのレポートで計測済みだが、ゲーム以外の用途でのパフォーマンス貢献に関して、少し考察してみたい。
実際に手にしたSurface Bookを見て感じるのは、そのディスプレイの美しさだ。13.5型で3000×2000ピクセル(約267ppi)という精細さも、もちろんそれを推し量る要素ではあるが、色再現が的確で暗部から明部にかけてのホワイトバランスも安定しているなど、“きちんと正しく”表示されている点を評価しておきたい。
これはSurface Pro 3以降の同社製品に一貫してみられる傾向だが、色温度もガンマカーブもsRGBに準拠する形で落とし込まれている。AppleのiPadなどと同様、何らかの補正をかけたうえで提供しているようだ。高い評価を得ていたSurface 3を越え、Surface Pro 4と同等レベルを実現している。
このような特徴を生かし、さらにdGPUの活用も考えると、身近なところでは写真現像やレタッチ向けのパワフルなノートPC兼タブレットとして使うなどのアイデアが浮かぶだろう。
キーボード部にあるSDメモリーカードスロットからRAWファイルを読み込み、まずは合体したノートPCスタイルのパワフルラップトップモードで作業。次にペン入力向きのキャンバスモードでSurfaceペンを使った細かなレタッチ作業を行う。そして修整後の写真を分離したタブレットスタイルのクリップボードモードで閲覧しながらチェック、あるいは別の誰かに見せる(職業フォトグラファーならばクライアントに確認する)といった使い方だ。
ぜいたくを言うならば、色再現域がAdobe RGBまでカバーせず、sRGBという点がやや残念ではあるが「これ1台で……」というMicrosoftの訴求にはピッタリくる使い方だろう。筆者は動画編集はあまりしないが、動画を多く扱う人ならば、同じように動画編集の作業時にdGPUを使い、レンダリング後の動画をクリップボードモードで見せるといった使い方ができるはずだ。
クリップボードモードではバッテリー駆動時間が3時間を切る程度だと思うが、このような使い方であれば不足することはないだろう(合体時の公称バッテリー駆動時間は、最大約12時間のビデオ再生に対応)。
ということで、dGPUに対応している写真編集・RAW現像アプリケーション「Adobe Lightroom CC」において、作業効率にどの程度の違いが出るのか、パワフルラップトップモードとクリップボードモードで比較してみた。
Lightroom CCの場合、RAW現像においてはdGPUを用いていない。このため一括現像でその違いを認識することはない。しかし現像作業でパラメータを変更したり、周辺光量補正や粒状性フィルタなどを適用したりといった場面で、dGPUの効果は体感できた。
Lightroom CCはRAWファイルを読み込むと、バックグラウンドで自動的に現像処理が行われる。今回は180枚のRAWファイル(オリンパス「OM-D E-M5 Mark II」)の一括読み込みを行ったが、SDメモリーカードからの読み込みと並行して現像が進められることもあり、読み込み終了後、クイック現像が完了するまでの時間が多少違うものの(これはクリップボードモード時にバッテリー駆動となるため、メインプロセッサのパフォーマンスが変化するのだろう)、操作性に大きな違いはない。
また、ちょっとしたパラメータ変更による再現像処理もdGPUの有無による差は認められなかった。これが動画ならば話は違ったかもしれない。
では意味がないかというと、そういうわけではない。前述した通り、操作時のフィーリング(応答性など)は明らかに異なる。単純な現像パラメータの設定だけでなく、同時にフィルタ効果などを重ねていくとその違いが生きてくる。
なお、ペンを用いて細かな修整を加えていくときの応答性にも違いがあったことは付け加えておきたい。インタラクティブな作業での応答性の差が、dGPUの差ということになるだろうか。
Surface Bookは高価な製品だ。高価なだけに永く使いたいと考えるなら、将来こうしたGPUパフォーマンスを生かせることが、高い満足度を維持するうえで需要になってくると予想できる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.