多数のファイルを管理、活用するという点でこちらも注目なのが「Cloud Station Suite」だ。これはクラウドを利用し、ファイルの同期やバックアップを行うアプリで、従来まではバラバラに存在していた複数のアプリを統合しつつ、さらに新しい機能も追加されている。
まず1つは「Cloud Station」。これはPCやスマホ、さらにはほかのSynology NASなどさまざまなデバイス間でファイルの同期を行うためのアプリで、NASアプリの中ではかなり利用頻度が高い。DSM 6.0ではこのアプリの同期速度が従来に比べて大幅に向上した。メーカー発表によると、なんと870%もの速度向上を果たしているというから驚きだ。
また、ファイルの整合性チェックについても強化されている。デバイス間のファイル同期はオンラインストレージを使うことでも実現は可能だが、デバイスの構成が複雑になると同期に失敗してファイルが先祖返りしたり、あるいは衝突が起こったファイルが別名で保存されて世代が枝分かれしてしまうといった事態を招きやすい。本アプリではそうした事態が起こりにくいよう、改良が施されているというわけだ。NASに搭載されるアプリの中では利用頻度が高いだけに、ユーザからすると歓迎すべき改良点といえる。
また、今回新たに加わった「Cloud Station Backup」というアプリを使えば、ファイル形式やサイズなどさまざまな条件に合致したPC上のファイルだけをNASにバックアップできる。バージョンも最大32個まで保存できるので、PC上のファイルをうっかり上書きしても容易に復元が行えるようになる。
このアプリは、その名の通りクラウド経由でのバックアップに対応している。ファイルに変更が加わるたびに自動的にバックアップされ、さかのぼって復元するのも用意になるだけに、頻繁に内容を書き換えるドキュメントが入ったフォルダは、ぜひ本アプリのバックアップ対象に含めておきたい。
このほか、DropboxやOneDrive、Amazon S3などのパブリッククラウドサービスとデータの同期を行う「Cloud Sync」も強化されている。
一見すると、これまでサポートしていなかったIBM SoftlayerやHiDriveなど複数のパブリッククラウドサービスに対応しただけのように見えるが、目玉となるのはOnedrive for BusinessおよびOffice 365に対応した点。これまではOnedriveに対応していてもOnedrive for Businessに対応しておらず、ビジネスユースでの利用をあきらめざるを得ないケースも多かっただけに、これだけでもDSM 6.0を導入する価値があると考える人も多いはずだ。
もう1つ、同一領域を複数のサービスで同期できるようになったことも、地味ながら画期的な進化だ。これまでは、あるサービスで同期対象に指定したフォルダはロックされてしまい、別のフォルダで同期することはできなかったが、今回はこうした制限がなくなった。
これにより、フォルダ全体をあるパブリッククラウドサービスにバックアップしつつ、特定のフォルダだけはモバイルとの親和性が高い別サービスと同期するなどの設定が可能になった。同期を単一方向と双方向で切り替えられる柔軟性ももちろん健在で、使いみちがますます広がるだろう。
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