それではWraith Coolerのパフォーマンスを、旧CPU付属クーラーおよび、別途用意した14cm径ファン搭載トップフロー型CPUクーラーと3製品で比較してみた。
まずはCPU温度。アイドル時をOS起動から10分経過までの最小温度とし、高負荷時はCINEBENCH R15のCPUテスト、3DMarkのFire Strikeテスト実行中の最大値としてHWMonitor v1.28で計測した。また、マザーボード側のCPUファンの回転数設定は、PWM有効の「パフォーマンス」としている。
3製品で比較すると、Wraith Coolerは旧CPU付属クーラーと比べ、アイドル時ではほぼ同じだが、高負荷時ではCINEBENCH R15時で8度、3DMark時で10度ほど低かった。冷却性能に関しては大幅に向上しており、そのパフォーマンスは14cm径ファン搭載トップフロー型クーラーと互角だったのが印象的だ。
動作音に関しては、先と同様の計測条件で、騒音計(SL-1370)をCPUのファン面から20cmの位置に設定し計測した。
Wraith Coolerのアイドル時の動作音は34dBAと優秀で、ケース内に収めてしまえばノイズに悩まされることはないだろう。高負荷時では40.6dBAと、40dBAをわずかに上回った。深夜帯や閑静な住宅地では動作音を感じられるが、生活音・環境音のある場所であれば、それほど気になるほどではない。
一方で旧CPU付属クーラーは、多くのユーザーがうるさいと感じていたようにアイドル時ですら高負荷時のWraith Cooler以上の値を出しているし、実際この段階で十分にノイズが出る。高負荷時ともなると、ケースに収めたところでこれを抑えこむことはできないだろう。
14cm径ファン搭載トップフロー型クーラーの多くは、確かにこれよりも静かだが、旧モデルを指標として見た場合、新型のWraith Coolerはアイドル時ならそこまで大きな差は感じられないものの、高負荷時ではさすがに動作音の違いをはっきりと感じる、といったところ。ただ、高負荷時でも旧CPU付属クーラーと14cm径ファン搭載トップフロー型クーラーの中間だろう。
Wraith Coolerは、社外品と比較をすればまだ性能に余地が残るものの、CPU付属のCPUクーラーとしては優秀と言える。これからWraith Cooler付属のAPUを購入されるという方は、しばらくこれを試してから使用を続けるか判断してみるのがよいだろう。旧CPU付属クーラーのように、「保証なんてどうでもいいからこのうるさいのをなんとかしたい!!」と思うほどではない。
A10-7890Kは、200MHzのクロック引き上げによって、若干だがA10-7870Kよりもパフォーマンスが向上している。これからAPUに挑戦したい、それならできるだけパフォーマンスの高いAPUを選びたい、という方にはA10-7890Kがオススメだ。価格的にも2万円前後であり、これは従来、A10-7870Kが販売されていた価格帯である。
一方、既にAMDは次世代APU「Zen」(コードネーム)を2016年中に投入すると明らかにしている。現在A10-7870Kを使用中の方であれば、こちらが本命になるだろう。ただ、Zenの世代ではプラットフォームの更新があるため、おそらく移行コストがかかる。現行のプラットフォームのままコストを抑えつつ、今後数年を乗り切ろうという方なら、おそらく最後にして最高クロックのGodavari世代APUとなるA10-7890Kを選択したい。
なお、Wraith Coolerに関しては、レビュー中で指摘した相性問題を十分に検討しておこう。この点さえ解決できれば、CPU付属クーラーとしての素性はよい。より冷え、より静かになった。APU自作で人気のAV用PCなどでも、エンコード時では多少動作音が大きくなるものの、再生・視聴に関してはかなり静かなPCになるはずだ。Fluid MotionやVCE、Steady Videoなどの活用を視野に入れるならば、検討の価値があるAPUだ。
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