Microsoftが「会話Bot」に力を注ぐ理由Build 2016(2/3 ページ)

» 2016年04月07日 13時30分 公開
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自動応答システムとBot Framework

 Build 2016の基調講演では、Bot Frameworkを使った「Domino's Pizza Bot」が披露された。これは対話型インタフェースで宅配ピザのオーダーを受けることが可能なBotで、ユーザーは普通に電話で注文をするかのごとくチャットでBotに話しかけることで、ピザを注文できる。

 この基本となるのは自然言語解析だ。ユーザーからの問い合わせがある度にチャットから関係する要素を分解してコンピュータが理解し、オーダー完了までに必要な情報をユーザーから引き出そうと対話を続ける。

 「チャットBot」と聞くと、多くは日本でおなじみの「りんな」などユーザーの話し相手になるものが思い浮かぶかもしれない。ただ、ビジネス的側面でのBotの真価は「処理の自動化」にあると筆者は考える。例えば前述のDomino's Pizza Botが典型だが、Botによりオーダー業務の機械化が可能になるわけだ。

 もちろん、現状のBotでは理解できない複雑な問い合わせやクレーム処理などのリクエストもあるだろうが、オーダー業務の大半は将来的にBotのような「自動応答システム」で対応可能になるかもしれない。

Domino's Pizza Bot(1) Microsoft Bot Frameworkを利用した「Domino's Pizza Bot」のデモ
Domino's Pizza Bot(2) Domino's Pizza Botは対話型インタフェースで客の注文をBotが受けて、オーダーの処理を行う
処理の自動化 自然言語処理で顧客の問い合わせ文を解析し、オーダーに必要な情報を適時抽出して処理の自動化を行っていく

 自然言語解析を使った仕組みで、Microsoftと似たような方向性を持つサービスとしては、米IBMの「Watson」がある。筆者は最近Watson関連の事例取材を続けており、ちょうどBuildの開催前日に米カリフォルニア州サンタモニカを拠点とする米GoMomentという企業に話を聞いていた。

 GoMomentは、ホテルや公共施設にコンシェルジュサービスの仕組みを提供する企業だ。同社のサービスを導入した施設を利用する顧客らは、SMSなどのテキストインタフェースを通じて、ホテルの施設案内、周辺のレストラン情報、ルームサービスの依頼をいつでも問い合わせることができ、2秒以内に返答を受けられるという。

 GoMoment創業者兼CEOのラジ・シン氏は「こうした問い合わせ業務の9割は自動化が可能だ」と説明する。残りの1割は「クレーム処理」や「スタッフによるルームサービス提供」といった人手を必要とするサービスだ。自動化により素早い対応で顧客満足度が向上し、これまで問い合わせの対応に割かれていた人員を再配置することで、さらにサービスレベルを向上できるというメリットがある。これは一例だが、非常に面白い試みだ。

 Botの性質により受け答えに必要な要素は異なるが、その処理をより自然で正確にし、さらに人の手を極力必要としない自動化を実現するのであれば、「Corpus(コーパス)」と呼ばれる自然言語解析における膨大な辞書が重要となってくる。Botとしての精度を高めるためには、まずこのコーパスをある程度鍛えることが欠かせない。

 この辺りはBotを構築するアプリケーション開発者に委ねられており、差別化ポイントにもなるだろう。今後も対話型インタフェースを使ったサービスは多数登場してくると考えられるが、Microsoftの試みが成功するかどうかは、このフレームワーク上で構築されるアプリケーションの充実度次第なのかもしれない。

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