これからの人類はAIとどう向き合っていくべきか――「AIの遺電子」山田胡瓜と「イヴの時間」吉浦康裕、水市恵が語る現在と未来アニメ監督×漫画家×小説家(5/10 ページ)

» 2016年04月14日 10時30分 公開
[瓜生聖ITmedia]
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古典的なAI

吉浦 「イヴの時間」は発表当時、一部で古くさい題材と言われたんですよ。いまさらアンドロイドかよ、と。僕は古典的なAIが出てくる作品はすごく好きなんですが、山田先生はどうですか? “モッガディート”が出てくる辺りで、「あ……」と思ったんですが。

※モッガディート:ジェイムズ・ティプトリー・JrのSF短編「愛はさだめ、さだめは死」に出てくる主人公の名前。「AIの遺電子」の主人公である須堂の別名。ちなみに須堂のネーミングはUNIXのコマンドから来ているとか。

山田 僕はそんなにSFに詳しいわけじゃないんです。でも、好きな作品がいくつかあって。

吉浦 自分はアシモフが好きだったんで、あれ(イヴの時間)作ったんです。

※アシモフ:アイザック・アシモフ。作家。特にSFの分野で著名な作品を数多く残している。

山田 アシモフ読んでないんですよね。知ってはいるんですけど。

一同 (どよめきと笑い)

編集G ロボットものって古典じゃないですか。それをものすごく身近な未来として当てはめた作品って実はあまりない気がします。逆に近い未来を描くなら人間がロボット化していくほうが作品にしやすいみたいな。

瓜生 攻殻機動隊とか。

※攻殻機動隊:士郎正宗による漫画およびそれを原作とするアニメ作品。電脳化技術、サイボーグ化技術が発達し、人間が直接ネットワークに接続できる世界を描いている。

編集G 例えば、人間が超センサーを身につけて、その結果、ヒトの意識がどう変わっていくのか、みたいな作品ですね。

山田 そういうところだと僕は子どものころ見たロボコップですね。

※ロボコップ:1987年に公開されたSFアクション映画。主人公は殉職した警官マーフィの遺体を利用して作られたサイボーグ警官。

吉浦 ああ。

山田 ロボコップって人間を半分ロボット化したもので、それって逆に自我が芽生えたロボットに近いんじゃないか、と思うんです。所属する企業の人は撃てない、とプログラムされているんだけれど、中身は人間だからそこで葛藤する。

吉浦 しかも隠しルールがあって、最後「お前はクビだ」って言われて雇用関係がなくなったとたんに「ありがとうございます」 バン!って。

一同 (笑)

吉浦 そういうのはアシモフの三原則ミステリーに近いものがあります。

瓜生 「イヴの時間」ではサミィとLUHのステータス画面に三原則への対応状況がグラフ表示されていますね。

※三原則:アシモフが短編集「われはロボット(I, Robot)」で示されたロボット工学三原則のこと。ロボット三原則とも。「イヴの時間」でも重要な意味を持っている。・第一条 人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない/・第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない/・第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己を守らなければならない。

サミィのステータス画面。右上に「status of 3 laws of robotics」と書かれたグラフが見える。他にも内蔵メモリ24ペタバイト、AI:code:eve、抑制回路が機能していないなど興味深い内容が

こちらはLUHのステータス画面。簡素だが、リニアなインジケータが3つ表示されている

LUHは「イヴの時間」に登場する旧式のアンドロイド

吉浦 ロボット三原則って0か1か、ではなく、けっこう重み付けが細かいんですよ。だから、明らかに嘘だと判断できる命令が第三条に負けたりもする。

水市 アシモフの作品ではポテンシャルが上回ってしまう、と書かれていますね。「イヴの時間 another act」でもそういう表現をしています。

「イヴの時間 another act」より。ロボット三原則に従うアンドロイドは嘘をつくことができるのか

吉浦 分かる人は分かる、でいいんですが、あんまり伝わらないですね……

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