吉浦 「イヴの時間」は発表当時、一部で古くさい題材と言われたんですよ。いまさらアンドロイドかよ、と。僕は古典的なAIが出てくる作品はすごく好きなんですが、山田先生はどうですか? “モッガディート”が出てくる辺りで、「あ……」と思ったんですが。
山田 僕はそんなにSFに詳しいわけじゃないんです。でも、好きな作品がいくつかあって。
吉浦 自分はアシモフが好きだったんで、あれ(イヴの時間)作ったんです。
山田 アシモフ読んでないんですよね。知ってはいるんですけど。
一同 (どよめきと笑い)
編集G ロボットものって古典じゃないですか。それをものすごく身近な未来として当てはめた作品って実はあまりない気がします。逆に近い未来を描くなら人間がロボット化していくほうが作品にしやすいみたいな。
瓜生 攻殻機動隊とか。
編集G 例えば、人間が超センサーを身につけて、その結果、ヒトの意識がどう変わっていくのか、みたいな作品ですね。
山田 そういうところだと僕は子どものころ見たロボコップですね。
吉浦 ああ。
山田 ロボコップって人間を半分ロボット化したもので、それって逆に自我が芽生えたロボットに近いんじゃないか、と思うんです。所属する企業の人は撃てない、とプログラムされているんだけれど、中身は人間だからそこで葛藤する。
吉浦 しかも隠しルールがあって、最後「お前はクビだ」って言われて雇用関係がなくなったとたんに「ありがとうございます」 バン!って。
一同 (笑)
吉浦 そういうのはアシモフの三原則ミステリーに近いものがあります。
瓜生 「イヴの時間」ではサミィとLUHのステータス画面に三原則への対応状況がグラフ表示されていますね。
吉浦 ロボット三原則って0か1か、ではなく、けっこう重み付けが細かいんですよ。だから、明らかに嘘だと判断できる命令が第三条に負けたりもする。
水市 アシモフの作品ではポテンシャルが上回ってしまう、と書かれていますね。「イヴの時間 another act」でもそういう表現をしています。
吉浦 分かる人は分かる、でいいんですが、あんまり伝わらないですね……
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