インタビュー
» 2016年04月14日 10時30分 UPDATE

アニメ監督×漫画家×小説家:これからの人類はAIとどう向き合っていくべきか――「AIの遺電子」山田胡瓜と「イヴの時間」吉浦康裕、水市恵が語る現在と未来 (9/10)

[瓜生聖,ITmedia]

日常の隣にあるSF

吉浦 「イヴの時間」でやってることは「AIの遺電子」よりも割と王道、ベタなんです。どちらかというと見せ方をちょっと変えて、コメディタッチな芝居っぽいことに重点を置いていて、真面目にAIものを論じているようでそうではない作品なんですよ、実は。

山田 「イヴの時間」(作中に出てくる喫茶店)に行ったときだけはみんな人間として扱いましょうよ、という隠れ家的なところが個人的にすごく好みで。SFというとみんな想像するのが攻殻機動隊とか、すごくサイバーなものなんですよね。

編集G 巨悪がいて、みたいな。

山田 非日常、本当に見たことのない訳の分からない世界を見たいという欲を満たしてくれて、そこが楽しいんです。もちろん、自分たちの世界とリンクするようなメッセージもあるんですけど、やっぱり我々は公安9課ではないので、このようなアクションをするわけではない。

※公安9課:「攻殻機動隊」で主人公たちが所属する攻性の防諜機関。

山田 でも、実際にSFのような世界っていうのはすぐそこまで来ているんですよね。我々の今生きている世界って、ちょっと前の人にとってはSFの世界だから、もう入っちゃてるんだぞ、と。だから、SFはもっと日常的な描写を広げてもいいんじゃないかというのがあるんです。例えば「電脳コイル」なんかもかなり日常的ですよね。

※電脳コイル:2007年にNHKで放送されたアニメーション作品。AR技術が一般化した世界の小学生たちを描いている。

山田 そういう中で「イヴの時間」も普通の主人公で、アンドロイドがいて、アンドロイドにはまる人がちょっと白い目で見られる――割と今に近い日常というか。

編集G 日常に沿ってAIを描く作品はこれから増えそうですね。

山田 AIモノと言えば、僕、エクスマキナ見たいんですよ。

※エクスマキナ:原題「Ex Machina」。日本では2016年6月に公開予定。

吉浦 ああ、チューリングテストとか出てくるやつですよね。

※チューリングテスト:アラン・チューリングによって考案された、人工知能かどうかを判断するテスト。判定者が機械と人間を区別できなければ合格となる。

山田 Facebookの社長みたいな人が自分でAIを作ってそれをテストするから、と。そこに出てくるのが絶世の美女ロボットで。

吉浦 さすが西洋だなって思うところが美女ロボットの描き方なんですが、ボディの一部が空洞になっているんです。でもその空洞部分の曲線がね、すごく官能的で。ロボットと人間をビジュアル的に区別した上で官能性を入れ込む、あの辺がいいなって。

編集G 映画「her」のように、今後AIに恋をする人間が出てくるでしょうか。

※「her/世界でひとつの彼女』:スマートフォンの人工知能音声アシスタントに恋をする青年のラブストーリー

山田 AIじゃなくったってすでにいるじゃないですか。二次元で。それはずっと昔からそうで、その強化版みたいな状況になるだけかも。

瓜生 VRもそうですね。

吉浦 PlayStation VRのサマーレッスンはガチ体験すると見るでは大違いらしくて、実際に試した人によると、ゲーム内の女の子が隣に座ったときに脳が本物の女性と判断して照れちゃうらしいんですよ。

※サマーレッスン:PlayStation 4用ヘッドマウントディスプレイ、PSVRに対応したVRコンテンツ。プレイヤーは家庭教師として女子高生や金髪少女と夏のひとときを過ごす。

山田 こういうところの境界もあいまいに、ごちゃごちゃしてくると思うんですよね。二次元側にいくこともできるし、二次元側をこっちに呼ぶこともできるようになってくる。

吉浦 みんな、そういう知識を前提として持っている状態から話を書けることが増えてきているわけですから、作家的にはより突っ込んで描きやすくなってきてますね。

編集G 十年前だったら訳わかんない、と言われていたものが、それを説明なしにぱっと出しても、みんな理解してくれる。

吉浦 そうそう、僕の好きな映画にパトレイバー劇場版があるのですが、レイバーに搭載された共通OSにウイルスが仕掛けられて暴走するという話、1989年当時に観た人ってすんなり理解できたのかなあって思う。今観るとみんな分かるから先見の明がすごいというか。

※パトレイバー劇場版:1989年に公開された「機動警察パトレイバー the Movie」のこと。

山田 素晴らしいですね。

吉浦 素晴らしいです。

編集G ……lainですかね、私が当時見て分からなかったのは。

吉浦 lainは今観てもちょっと分からないとこある(笑)

一同 (笑)

※lain:1998年に放映されたTVアニメ「serial experiments lain」のこと。NeXTSTEP、BeOS、IPv6などマニアックなネタも多く、海外でも攻殻機動隊と並んで人気が高い。

吉浦 逆にこの「AIの遺電子」がブラック・ジャックのころに連載されていたらどうなんでしょう。

山田 いろいろと前提条件の説明が必要になるでしょうね。

吉浦 人間の姿をした人間以外のもの、それじゃ感情移入できないよ、とか言われちゃうんですかね。

瓜生 アンドロイド、ロボット、AIというグラデーション、それがまず理解されないでしょうね。

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