前述のようにβ版であり、利用にあたって一部制限はあるものの、現時点で既にUbuntu上のBashとして利用可能だ。汎用(はんよう)的なコマンドやツールはほぼそのまま使えるので、これだけで十分遊べるだろう。シェルスクリプトも記述可能なので、パイプラインを駆使してさまざまな自動化ツールが記述可能だ。多少でもUNIXやLinuxの知識がある人ならば、ぜひトライしていただきたい。
Bash on Windowsの真価は、「apt-get」などのコマンドを使ってパッケージのリポジトリへとアクセスし、パッケージのダウンロードからインストール、そしてアップデートが自在に行える点にある。
UbuntuのELFバイナリがそのまま実行できるため、Ubuntuの最新パッケージを導入して開発・実行環境をすぐにそろえることが可能だ。予想ではあるが、この仕組みに興味を抱いてWindows 10を利用するオープンソース系開発者が多少なりとも増加するのではないかと考えている。
筆者は2005〜2008年くらいにかけて米国のオープンソースソフトウェア(OSS)系会議を集中的に取材していたことがある。興味深いのは、この時期に参加するOSS開発者らが持ち込むノートPCのMacBook比率が毎年増え続け、LinuxやBSDを導入したWindows PCからあっという間にOS Xのシステムが席巻してしまった。
最初のx86プロセッサ搭載Macである「MacBook Pro」がリリースされたのは2006年1月のことだが、タイミング的にこの製品の登場がOSS開発者のMac利用を加速させたように見える。実際、開発者の何人かに「なぜMacBookを利用するのか」を聞いたところ、その製品デザインだけでなく、「OSSのツールや仕組みをOS Xの(先進的で便利な)GUIで利用できる」ことを一同に理由に挙げていた。
当時のLinuxやBSDはあまりノートPCでの利用を想定した仕組みにはなっておらず、Wi-Fi通信やUSB接続の面でOS Xを利用したほうが効率的だったと言える。
あれから10年を経て、Windowsにオープンソース系のツールを利用する仕組みがそのまま導入され、かつてのOS Xがそうだったように、OSS開発者を受け入れる下地ができつつあるように思える。
現状で、Appleが(開発環境を直接利用できない)iPad Proを「PCの置き換えが可能な製品」とアピールする一方で、OSSに歩み寄ったMicrosoftのWindows 10ではさまざまな製品の選択肢が存在し、開発者が自由に環境を構築できる。現在、開発者がMac+OS Xを選択する最大の理由は「iOSアプリの開発」と思われるが、かつてOS Xが担っていたOSS開発者の取り込みはWindows 10が担うようになるのではないだろうか。
試しにapt-getを使って懐かしの「Rogue」をインストールして遊んでみながら、そんなことを考えてみた。
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