Flash排除に向かうEdgeブラウザの今後鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/3 ページ)

» 2016年04月16日 06時00分 公開
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緩やかにWebから消えつつあるFlashコンテンツ

 Flashとは、Adobe Systems(旧Macromedia)が開発している動画やゲームなどのコンテンツを扱うための規格および同規格で作られたコンテンツを指す。

 Flashは、各種アニメーションやリッチなインタフェース作りのために活用が進み、やがて動画再生やブラウザゲームの実行プラットフォームとして確かな地位を築くに至った。現状、日本では「ニコニコ動画」などの動画サイト、「艦隊これくしょん」などのブラウザゲームでFlashが重用されているのは周知の通りだ。

 一方、W3Techの調査結果によれば、過去4年ほどWeb全体に占めるFlashコンテンツの割合が年率2割のペースで減少を続けており、2016年4月中旬の時点で8.8%まで低下している。このデータがどこまで現状を正確に反映しているかは不明な部分があるが、少なくとも緩やかなペースでFlashコンテンツがWeb上から消えつつあるのは理解できる。

 このペースで減少を続ければ、恐らく3〜4年後には多くのユーザーの目からFlashコンテンツは見えなくなる程度までシェアが減っていることだろう。かつてAppleの故スティーブ・ジョブズ氏がiOSでのFlashサポートを巡り、Adobeと論戦を繰り広げたのも過去の出来事となり、歴史の1ページに幕が下りることになるのかもしれない。

W3Techの調査データ Webサイトにおけるコンテンツ記述技術のシェア推移(出典:W3Tech)

 実際、Flashをはじめとするプラグインの利用は、昨今のWeb事情ではメーカーやユーザーにとって大きなリスクとなることが多い。例えば、タブレットや薄型ノートPCなどの普及により、ユーザーが外出先でリソース食いのFlashコンテンツを掲載したWebページを表示するのはパフォーマンス低下の原因となるほか、バッテリー駆動時間を低下させるデメリットがある。

 また、プラグインを介してマルウェアが自動実行されるリスクも大きい。現在、多くのWebブラウザではバージョンの古いプラグインを自動検出して実行をブロックする仕組みが導入されているが、これもセキュリティ対策の一環だ。近年では特にFlashをターゲットとした「ゼロデイ」の脆弱(ぜいじゃく)性が増加傾向にあり、大きな課題となっている。

 そのため、業界各社では積極的にFlash排除の動きを見せている。この中核となっているのがGoogleだ。同社はFlash Playerを利用する代表的なサービスだったYouTubeにおける動画再生技術を2015年1月時点で「HTML5」をデフォルトに切り替え、基本的にFlashの仕組みを排除している。

 HTML5における動画再生は対応コーデックやDRM、ストリーミング放送などの部分で技術的課題を抱えており、その問題を吸収するためにFlashの活用が進んできた背景があるが、現在では実装側の工夫でコーデックの問題を回避する方法が確立されつつあり、HTML5への全面移行が可能になってきている。

 同社はさらに広告におけるFlash排除にも乗り出しており、AdWordsにおけるディスプレイ広告を全面的にHTML5へと移行させる方針を表明している。Googleは2015年2月以降、広告パートナー向けにFlash広告のHTML5への自動変換サービスを提供している。また、2016年7月以降は同社の広告ネットワークにFlashベースの広告をアップロード不可能になり、さらに2017年1月には既存広告についても配信がストップすると予告している。

 広告でのFlash排除は広告業界関係者から異論が出ているが、Web広告最大手のGoogleが自ら音頭を取ることでFlash排除に乗り出したことは、プラグイン排除という業界全体の流れに少なくない影響を与えることだろう。

GoogleのFlash排除 GoogleはFlashを使った広告配信を2017年1月以降停止すると発表

 何より、Flashコンテンツ制作ツール「Flash Professional」からFlashの名称を外し、「Animate CC」として再始動させたAdobe自身がそのトレンドを自覚しているのかもしれない。現在、Animate CCはHTML5を活用したWebクリエイター向けのツール、あるいはクロスプラットフォーム開発環境としての役割を担っており、既にFlashから軸足を外していると言える。

Animate CC Adobe Systemsは2016年2月、Webアニメーション製作ツールの製品名を「Flash Professional」から「Animate CC」に変更している

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