日本からの声でWindows 10はどう改善された? Meetupイベントで明らかに鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/3 ページ)

» 2016年04月21日 15時00分 公開
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ユーザーの声はWindows 10にどのように反映されるのか

 Windows Insider Program最大の目的は、ユーザーからのフィードバックを得て、それを製品開発や改良に生かすことだが、実際にどのようなプロセスでデータが収集され、Windows 10の改良に役立てられているのだろうか。

 Microsoftでは、テレメトリーデータなど世界のWindows 10の稼働状況を収集して開発者視点から状況を把握する「客観的データ」と、一般ユーザーからのフィードバックやイベントでの直接対話を通して収集されるユーザー視点の「主観的データ」を組み合わせ、2つの視点から開発や改善を進めているという。

 テレメトリーデータは、世界中で稼働中のWindowsから自動収集されるもので、一部には「スパイウェア」的な認識がなされているが、フィードバックを形にするうえで欠かせない要素の1つだ。自動収集されるデータにより、機能ごとの使用頻度を把握したり、あるいはパフォーマンスの低下など、潜在的な問題を発見することが可能になる。

 また、フィードバックを経てユーザーから報告された問題を解決するうえで、問題を発見するための参考データとなったり、あるいは緊急度を判定して問題解決の優先順位を決定するためにも使われるなど、2種類のデータを適時使い分けることが重要だと入谷氏は説明する。

 ユーザーから得られたフィードバックは開発チームによって個別にレビューが行われるが、テレメトリーによって自動収集されたデータはMicrosoft Azure上で集計が行われ、問題の発見が容易になるようツールからリアルタイムで状況を監視できる。

テレメントリーデータ スパイウェア的な扱いを受けることもあるMicrosoftによるデータ収集だが、機能の利用率や問題対処への判断材料など、客観的分析を行ううえでの貴重な資料となる
カスタマーフィードバック Microsoftの一方的なデータだけではなく、Windows Insider Program経由でのフィードバックは問題解決における発見や優先順位決定につながる
カスタマーエンゲージメント さらに、オフラインイベントを通じての対話やフィードバックも製品改善に生かされる

 今回特別に公開されたのが、「Mission Control」と呼ばれる開発チーム内での専用ツール(OS Xの機能ではない)だ。テレメトリーデータをベースにWindows 10の稼働状況を把握し、もし問題が発生した場合には警告が表示され、実際に対策が行われる。Misson Control以外にも、最近ではPower BIなどのツールを使った可視化も進み、日々収集されるデータを有効活用しているようだ。

ユーザーデータの処理・分析 Microsoft社内におけるユーザーフィードバックの解決フロー
Mission Control Mission Control(OS Xの機能ではない)は、テレメトリーデータをベースにWindows 10の稼働状況を把握するための内部ツールだ
Power BI 最近ではさらにPower BIによる可視化なども行われているようだ
リアルタイムレポート表示 こうしたレポートはリアルタイムで開発チームのオフィス内に通知されている。これは実際に品川の日本マイクロソフト社内ビルでの風景を撮影したもの

日本からの要望はWindows 10にこう反映されていた

 日本のユーザーにありがちな思い込みとして、日本語でのフィードバックは反映されにくいと考えてしまうかもしれない。だが入谷氏によれば、日本語によるフィードバックは日本語が理解できるチームメンバーによってレビューが行われるため、言語による差異は気にしないでいいという。

 イベントでは実際に、日本語関連で行われた過去の改良例の幾つかが紹介された。例えば、手書き入力のフィールドをより有効活用したいという声に応えて文字枠を排除したり、文字の予測変換候補を人気のワードに配慮して調整したり、あるいは音声合成チックで不評だったCortana日本語版の声をより自然なものにしたりと、これらは日本のユーザーのフィードバックを経て行われた改良の数々だ。

 面白いところでは、Cortana日本語版での改善要望で最も多かったのが「どんぐりころころ」の歌詞間違いの指摘だったという。こうしたOSの性能や機能といった本筋にはあまり関係ない部分での修正もきちんと進んでいるようだ。

日本語の行モード改善 日本から行われたフィードバックを基に最新ビルドでの解決が行われた例。手書き入力のフィールドをより有効活用したいという声に応えて文字枠を排除した
日本語IME予測変換の改善 文字の予測変換候補を人気のワードに配慮して調整した
Cortana日本語版の音声をより自然に あるいは音声合成チックで不評だったCortana日本語版の声をより自然なものにした
Cortana日本語版の応答改善 「どんぐりころころ」の歌詞間違いの指摘など、Cortana日本語版の応答も改善した
フォント描画の改善 フォントのレンダリング処理については、鋭意改善中という

 ただ入谷氏は要望として、フィードバックを返す場合には「使い物にならない」といった単純なクレームではなく、「どのような問題が発生したかの現象の説明や、実際にどの部分が問題で気に入らないのかの説明など、改良に結び付く形での情報提供をお願いしたい」と述べている。

 もう1つ重要なのが「フィードバックの重複を避ける」という点だ。同じ内容のフィードバックが複数存在していた場合、フィードバックへの賛同を示す賛成票が分散し、結局反映が後回しになってしまう可能性があるという。

フィードバックのお願い 開発チームからフィードバックを返す際のお願い。日本語で構わないので、単純なクレームではなく、必要な情報を網羅してほしいという。あと賛成票が分散しないように、なるべく重複ポストは避けて既存のフィードバックに賛成を投じてほしいとのこと

 この辺りに留意して、ぜひ積極的に自分の要望をMicrosoftに伝えてみていただきたい。

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