「Google Cardboard」や「ハコスコ」のような、スマートフォンを利用して簡易VRを実現する安価なソリューションがあるが、それらで得られるVR体験はあくまで簡易的なものであり、画質的にも機能的にも専用のVR HMDと比べるとかなり見劣りしてしまう(もちろん、気軽にVRを楽しめるという意義は否定しない)。
一方で、Gear VRにおいてはサムスンのスマートフォン専用に設計されており、Gear VR自体に搭載されたジャイロセンサーと加速度センサーによってスマートフォン本体に搭載されたセンサーを補助するため、頭の向きを計測するヘッドトラッキングが高精度、かつ画質的にも10万円前後のVR HMDと比べて遜色ないのが特徴だ。
側面にはタッチパッドを備えており、専用のアプリストアも用意されているため、得られるVR体験のクオリティがCardboardなどとは全く異なる。ただし、Oculus RiftやHTC Viveのように部屋の中で自分がどの位置にいるかを計測するポジショナルトラッキングや、手の動きを入力する機能は、現状単体ではサポートしていない。
本連載では、Gear VR対応スマートフォンとして「Galaxy S6 edge」を用意した。ディスプレイ解像度は2560×1440ピクセルであり、VR空間での実質的な解像度も十分に高い。
装着した頭を上下左右に振ってみたが、追従も素早く、いわゆるVR酔いもかなり軽減されていると感じた。また、Galaxy S6 edge込みの重量は実測で449gであり、頭とのフィット感も高いためそれほど重いとは感じない。Gear VRはメガネをかけたまま利用すると少し窮屈に感じることもあるが、フォーカスの調整可能な範囲は広く、裸眼視力が0.1未満の筆者も上面のフォーカス調整ダイヤルを調整することで、きちんと見ることができた。
レンズの間には近接センサーが用意されており、顔に装着すると自動的にスマートフォンの電源オン、顔から外すと自動的に電源オフになるのも便利だ。Gear VRの利用中は、スマートフォンのバッテリー消費がかなり激しいが、底面に給電用のMicro USBポートが用意されているので、連続利用したい場合はそちらから電源を供給してやればよい。3D表示の立体感も十分で、左右の視野角は96度となる。Oculus Riftの110度に比べると狭いが、あまり気にはならず予想以上のVR体験を得られた。
Gear VR用アプリも発売当初はそれほど多くはなかったが、今ではかなり数が増えており、「マインクラフト」といった著名タイトルも登場してきた。Gear VRは手っ取り早くVRを体験したいという人には、ぴったりの製品であろう。
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