映像業界3つのトレンドと、25年目の「Premiere」が目指す次の1歩林信行が見る(2/3 ページ)

» 2016年05月26日 19時37分 公開
[林信行ITmedia]
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ユーチューバーがスペクタクルテレビ番組を制作

 Adobe CCの活用により、ハリウッドでの映画作りでより細かな演出や作り込みが可能になったのも驚きだが、NAB Showのアドビブースでは、もう1つ驚きの講演があった。

 「The Wonderful Wizards of Aus」と聞いてもほとんどの人は知らないかもしれない。「オズの魔法使い(The Wonderful Wizard of Oz)」の「Oz」をオーストラリア人を指す「Aus」に変えたタイトルから予想がつくかもしれないが、これはオーストラリアで人気のテレビ番組のタイトルだ。

 製作陣は元々は人気のYouTuber(ユーチューバー)。Adobe Creative Cloudの映像ツールを駆使して、YouTube上で驚くような特殊効果などを使ったコメディを公開したところこれが話題になり、オーストラリアの地上波SBS放送の人気番組となった。

オーストラリアの人気番組「The Wonderful Wizards of Aus」

 テレビ版ではお城の中で何千人という兵士が戦う大規模な戦闘シーンの空撮もあり、相当な予算がついたのかと思いきや、実は「エキストラを雇う金などほとんどないのでわずか5人のエキストラが演じたもの」だとのこと。グリーンバックで戦う様子を数十パターン撮影し、それをAfter Effects CCなどを使ってひたすら合成し、さらには爆発の炎や飛び交う弓矢、噴煙なども合成していったという。仕上がりの映像はまるでハリウッドのスペクタル巨編映画のようだ。

大規模な戦闘シーン

実は5人のエキストラで制作されていた

増え続ける映像、3つのトレンド

 予算のある映画はさらにすごく、予算のない映画も驚きの映像に仕立てるAdobe Creative Cloudの映像編集ソリューションだが、その中心的存在であり、映像のまとめ役とも言えるAdobe Premiere Pro CCは、2016年末に25周年を迎える。

映像業界の三つのトレンド

 今から25年ほど前に、パソコン上で音付きの映像を総合的に扱うための技術、QuickTimeをAppleが発表し、そこからパソコン上で動画映像を表示、編集するトレンドが一気に広がった(コンピューター映像を作りアニメーション表示するソフトはあったが、標準ファイルフォーマットのようなものがまだなかった)。

 その直後にAdobeからいきなり出てきたのがAdobe Premiere 1.0だ。当時はまだソーシャルメディアのプロフィール写真にも満たない160×100ピクセル程度の映像を動かすのがやっとだったQuickTimeで、動画のハードウェア圧縮/伸長ボードを組み合わせることで320×200ピクセル程度の映像の編集や再生などにもすぐに対応し、デジタル映像編集の定番ツールとしての座を確かにしていく(筆者も当時はHyperLibというCD-ROM付属本の制作に関わっていた関係で、よくPremiereで映像編集を行った)。

 その後、一般的なパソコンで、テレビ品質を上回る映像が扱えるようになり始めたのに合わせてAdobeは2003年に同ソフトを業務用の本格的な映像編集ツール、Premiere Proへと進化させ今に至っている。

 そんなPremiere Proの2016年の進化はいかなるものか。

 Adobeのビデオ製品エバンジェリストであるカール・ソール氏は、映像広告や電子雑誌の中の映像など、我々が目にする映像は日々増え続けていると語る。また、CISCOの調べによれば2019年までにインターネットトラフィックの75%までが映像になり、2020年までにモバイル通信のトラフィックの80%が映像になるという調査結果もあれば、Facebookでは現在、すでに毎日80億本の映像が再生され、1億時間が費やされているという報告にも触れた。

Adobeエバンジェリストのカール・ソール氏

 ソール氏は「常に大量の映像にさらされている現代人だが、そうした現代人にとってもまだ新しい、今まさに広がりつつある映像体験が3つある」と指摘する。

 一つ目は超高画質な4K映像だ。二つ目は、少し前まで写真の世界で人気だった、暗い部分と明るい部分の両方がはっきりと見えるハイダイナミックレンジ、いわゆるHDRの映像版。そして三つ目がVirtual Reality、いわゆるVR映像だ。

 映像編集の最先端を走り続けてきたPremiere Proとしては、こうした新しいトレンドをいち早く取り入れ製作者の意図を実現していく必要がある。

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