PC関連の発表もあるものの、どちらかといえば現在のIntelの注力分野はその先にある。例えば、PCの世界では数億台だったものが、同社がAtomで目指していたスマートフォンやタブレットといったスマートデバイスの世界では数十億台と桁が変化する。そして「IoT(Internet of Things)」と呼ばれる、すべてのものがインターネットを介して接続される世界では対応デバイスが少なくとも500億台以上は見込まれるなど、潜在需要が大きく異なる。
仮に部品単価が安くても、台数規模でいえば従来のPCの100倍近く。これら機器のアクセスやデータ処理にはデータセンター側に膨大なプロセッサパワーが必要になる。IntelとしてはIoTでの組み込み用途もカバーしつつ、ネットワーク向けのソリューションやデータセンター向けのハイエンドプロセッサの供給を行っていくのが今後のビジネスの中心だといえるだろう。
今回のCOMPUTEXではこうした取り組みの1つとして、ホームゲートウェイ向けの「Intel AnyWAN GRX 750 SoC」とIEEE 802.11ac対応のMU-MIMO Wi-Fiチップセット「Intel XWAY WAV500 Wi-Fi」の2つが発表されている。IoTの世界ではインターネット接続可能な家電や電気設備、スマートデバイスが多数家庭内に存在することになり、こうした機器のインターネットへのゲートウェイをカバーしていくことが重要だ。
また組み込み機器の世界では、中華電信と勝捷光電(SanJet Technology)との協業事例が紹介されている。Atom x3プロセッサ(SoFIA)を搭載した車載テレマティクス用のモジュールを用意し、運転状況のモニタリングや車内でのインターネット接続が可能になる仕組みを提供していく。モジュールはドライブレコーダーの役割も果たしており、現在のドライバーからの視界をリアルタイムで遠隔地から把握したり、あるいは運転記録を基にした保険サービスの提供なども行われており、いわゆる「コネクテッド・ビークル」の先駆けとも呼べる仕組みとなっている。
現在、2020年を目標に通信各社が準備を進めている「5G」の無線通信の仕組みでは、「IoT」が非常に重要な役割を果たすことが見込まれている。インターネットに対応した何百億台という組み込み機器が携帯電話のネットワークに接続することになるため、膨大なアクセスがネットワーク上のゲートウェイやデータセンター上のサーバに殺到することが見込まれる。
そのため、各社はバックボーンの強化に務めつつ、小型組み込み機器用の低消費電力でネットワーク機器に負荷をかけないような仕組みの開発を続けている。Intelでは、主にバックボーン支援の視点からネットワーク機器ベンダー各社や携帯キャリアとの連携を模索しており、今後の事業の柱の1つとしてビジネスを進めている。
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